1章 4話 最弱と最強
目が眩む程の眩しさだった。
そしてその光は昊の体から発していたのだ。
「こっこれはなにっ?
僕の手?違う…体中から虹色?の光が、何これ!?」
昊は軽いパニック状態になっている。
「なっ…何だ?大丈夫なのか昊?」
自分は傷だらけで今にも倒れそうなのに昊の心配を護はしていたのだ
「えっ?う…うん、痛くは無いよ…
むしろ凄く気分が良い様な気が…って護君も!」
気づいたら護の体からも光を発していた、
だが…その光は昊とは全くと言っていいくらい…
いや、光ると言う表現では無かった。
(黒)
黒いもやの様な物だったのだ。
「何だこの黒いの…」
2人とも呆気に取られ呆然としていると…
いきなり2人は体が燃えるような熱さを感じる。
「うぐっ!」「あつぅ…」
そして突如襲いかかる圧倒的な高揚感、
その瞬間…2人の頭の中には文字が浮かんでいた。
(天海 昊)(19歳) (男)
権能(退魔)固有権能 第四階悌
固有能力
退魔絶界(S) 1/1 クールタイム3日
(悪の心を持つ者は結界の中には入れない)
(発動時に結界の範囲に悪の心を持つ者が入っていた場合は常時悪に特効のダメージを与え続ける)
能力
身体強化.退魔B-魔力消費50
(1時間身体能力13倍まで上昇)
退魔札D+魔力消費20(魔の者に特効の札を放つ)
退魔刀C+魔力消費50(退魔を宿す刀を召喚する)
退魔光陣B+魔力消費100
(陣の中にいる者を強力な光の柱で滅する)
魔断A+魔力消費200
(退魔の力を限界まで溜めて断絶する刃を放つ)
身体強度 195/15 魔力値 950/1000
総合戦闘力評価-(S-)
「総合戦闘力?Sマイナス?
何だろうこのランクは…でも権能って言うの…?
なのかな…その使い方はなぜかわかる気が…する!
僕…何でか分からないけど凄く強くなってる!」
昊は虹色の光に包まれながら呟く。
そして一方の護は頭の中に浮かんだ文字を見て嫌な感じがした…
何が嫌と理解している訳では無い、
ただ何かとてつもなく嫌な感じがしたのだ…
(進道 護)(19歳) (男)
権能(自己犠牲)固有権能 第ニ階悌
固有能力
命刻(G)19/19 命の残量を可視化出来る
(残量が0になると即死)
(残量は時間経過で回復する事は出来ない)
(残量の消費量に応じて自身もダメージを受ける)
能力
身体強化.自己犠牲G魔力消費5
(1時間身体能力2倍まで上昇)
自爆G-魔力消費0
(命刻を1つ消費する事で発動可能
対象の体力または精神力を最大値の約1/6程削る)
(自爆の能力を連続使用する事は出来ない)
(自身よりも高ランクには使用不可)
献身G+魔力消費5
(命刻を2つ消費する事で発動可能)
(対象の体力を最大値の1/2程回復出来る)
身体強度 32/16
魔力値 5/10
総合戦闘力評価-(G)
「なんだ…この能力…自己犠牲?」
護の嫌な予感は当たってしまう…
権能に目覚めた瞬間全てが、解ってしまった。
「自爆って…特殊すぎる…あと…弱すぎるだろ…」
自分の能力を文字化されて嫌でも解ってしまった。
化物相手には話にならない程弱く使えない能力だと…
一般人の2倍程度の身体能力と対象より高ランクではないと使えない自爆の能力。
唯一使えそうな能力が献身の能力。
ただし自身の命を生け贄の様にし他者の傷を癒す。
そんなバカな話があるだろうか…
「いくら何でも…これじゃ…戦えないだろ…」
護はその力の圧倒的な弱さに愕然とする中、
顔を上げ、そして目の前の昊を見てしまった…
(あぁ…あの文字の内容を聞かなくても分かる、俺の何倍も何十倍も、いや…何百倍も強いな………)
護は理解してしまった、圧倒的な力の差を、
幼なじみの親友との圧倒的なまでの理不尽差を。
「こんな…こんな事…ゴハッ!」
突然護は大量の血を吐き出したのだ。
色々な事が一気に起こり、一種の興奮状態になっていた護に限界が来てしまった…
護の身体能力は強制的に2倍になっている。
傷の回復速度も倍になってはいるが2倍程度では傷が瞬時に治る訳は無く噛まれた腕、腹や足を爪で刺されてた箇所からは絶えず血が流れ出す。
そして…化物の牙には毒があったのだ。
「護君!だ、大丈夫!?今すぐ病院に連れて…」
「グゥオオオオオ!」
突如今まで痛みで転がっていた狼の化物はよろよろと立ち上がり護に向けて吠えたのだ。
狼の化物は片目を潰された爆発的な怒り、強烈な殺意を護に向けていた。
「や…やべえな…めっちゃ怒ってんな…」
「グルルゥ…ガァァアアア!!」
瞬間、狼は護に向け駆け出し、今度は確実に仕留める為にその首元に牙を突き立て噛み砕こうとする。
その時…昊が狼と護の間に入り、狼を睨み付ける。
「護君を…僕の大切な親友を傷付けたお前を…
絶対に許すもんかぁああああっ!」
昊の虹色の光が一際強くなり、手に光が収縮する。
昊は襲いかかる狼に手を向け叫んだ
「お前なんか…消え去れっ!……退魔光陣っ!!」
その瞬間…
化物を中心にし光輝く魔法陣の様な物が出現し、
その光陣から天を穿つ光の束が現れ化物を一瞬で消し去ったのだ。
昊が使用した退魔の権能
第三階悌能力、(退魔光陣)
その輝く光の束は雲すらも貫くとてつもなく強力で魔の者に特効の威力を持つ退魔の力を宿す技だ。
「はぁ…はぁ…はぁ…
やった…僕があの化物を倒したんだ…
凄い、これが僕の権能…退魔の力なんだ…」
昊は自分の圧倒的な力を今の一撃で理解した。
そこには化物を倒した喜びと人を辞めてしまった様な不安など様々な感情が入り混じっている。
「嘘だ…ろ…絶対強いとは思ったけど…
ここまで強いのかよ…昊…」
護は圧倒されてしまった…
自分が殺されかけた狼の化物を一瞬で消滅させ、
空にある雲までも消し去った。
(どれだけの威力があるんだよ今の技…
それに比べて俺の力は…自爆って…こんなの…
どうやって戦えばいいんだよ………でも…)
「俺も…今の…昊みたいに…
あんな風に戦える様になるのかな……」
護は護で理解してしまった
自分と昊との天と地ほどの格の差、力の差を…
でも諦めたく無かった、いつか…長い時間が掛かるかもしれないが共に戦えるのを夢見て…
そして化物が消えて安心したのか、緊張の糸が解けて護はそのまま倒れた…
「まっ!護君!だっ、誰か!」
昊の声が遠くで聞こえた気がするが…
護の意識は暗い闇に落ちていった…
* * *
白い世界
その世界でその者は観ていた
人と魔物の戦いの光景を
権能と言う力に目覚め戦う人の姿を
ただ人の命を奪うだけの魔物の姿を
その者は観ていた、そして思考する
(黒き神…あの者は何が狙いなのだ?
力を全て使い眠りについた様だが…何が狙いだ…
この世界をどうするつもりなのだ?
血迷ったのかやつは…だが…そうはさせぬ…
お前の狙い通りにはさせぬ…必ず…)
白い世界でその者は決心し願う
世界の平和を、世界の秩序を
* * *
世界はこのたった1日の間に全てが変わった。
そして5年後…
世界は権能の力が支配し、力を中心に回る。
今よりも更に酷い格差社会になってしまった…
1章はこれで終わりです。
次は主人公の護が意識を失った後の話、
昊が中心の話です。
気が向いたら読んでください。




