1章 3話 決意
30分は経っただろうか…
護と昊は門の話をしながら休んでいた。
「よしっ!
痛くなくなってきたからそろそろ帰ろ~」
昊は元気を取り戻し話す。
「おけ」
護は軽く返事をして立ち上がり2人は渋谷駅に向けて歩き出した所で…
グオオォォォォ
遠くから咆哮なのか?
獣の鳴き声の様な聞いた事が無い大声がしたのだ。
「なっ!何っ!?」
昊はビクッ!っと驚いていた。
「何だ今の…化物みたいな鳴き声したな…」
護も昊程では無いが少し慌てていた。
その後すぐ、10秒経ったくらいだろうか?
「「「キャーーーーー!!」」」
突如渋谷駅の方角から多くの人の悲鳴が聞こえた後に爆発音の様な銃声が何十回と聞こえたのだ。
「なっ!今の銃声か!?
おかしいだろ、ここ日本だぞ!」
銃声が聞こえた後すぐに駅の方角から多くの人々が我先にと靴が脱げようが気にせず、
凄い勢いで血眼で逃げてくる。
それはあまりに異常な光景だった…
「えっ?何!?何が起きたの?」
昊は慌てて護に話かけた。
「駅の方で何かあったみたいだな…さっきの銃声…もしかしてテロか?いや…だとしたらあの門で何か?」
護はすぐにあの奇妙な門を思い浮かべる。
嫌な予感はやはり当たった、テロなのか、または未知の何かか…だが今はそれどころではない。
守は首を振り雑念を払う。
「あの人の逃げ方…間違いなく良い事じゃねえ…
俺らも早く駅の方から逃げるぞ昊!」
「う…うん、わかった」
そして2人で駅の方角から逃げようとした瞬間…
「グルルルルルルルッ!」
突如2人の目の前に血だらけの黒い大きな狼が現れた
「「えっ!?」」
2人は呆気に取られる。こんな動物見た事無い…
いや地球上にはいないだろう。
大きさは2mはあり、額には緑色の宝石だろうか?
そして血走った赤い瞳に獰猛な牙。
確実に地球上には存在しない、未知の生物だ。
「何だこいつ…まずい…確実に逃げ遅れた…」
「な、何この化物!?血だ…口元も血だらけだよ…」
2人が慌てている時。
「グゥオオオオオ!」
狼の化物は2人を喰らおうと駆け出す。
「くそがっ!」
ドンッ!と護は昊を突き飛ばした。
「うわぁー!」
昊は勢い良く護に突き飛ばされ横に転がった。
「いたたっ…護君ひどいよ、いき……な…」
昊が護に向き直した時、護は腕を獰猛な牙で噛まれ
鋭い爪が腹や足に刺さっていた…
「ま…ま……護君!!!」
護はとっさに昊を庇う為に狼に噛まれたのだ。
「くそっ!ぐぅぅううっ!
このくそ狼がぁああああっ!」
護は左腕を噛まれながら咄嗟に右手でその化物の目玉を突き潰す。
「グゥアアアアアアオオオッ!」
狼は片目を潰されたのが相当痛かったのだろう、
噛みつくのをやめてゴロゴロと痛さで悶える。
「くそっ…くそ痛えぇ…」
一方、護の腕は狼に噛まれ動かないくらい血まみれ
爪が刺さった腹や足も傷だらけ。
すぐに治療が必要なくらいギリギリの状態だった。
「まっ!護君!血が…ぼ…僕のせいだ…
僕がのんびりしてたからっ…くぅ…うぅ…」
昊は大粒の涙を流し様々な感情に支配された。
昊は自分のせいで護が狼に襲われた、いや、自分の為に庇ってくれたその不甲斐なさ、心配、悲しみ、
そして護を傷つけた狼に対する怒り。
だが一番は自分の無力に対する怒りだった。
「また僕は…いつも僕は護君に助けて貰ってる
あの時みたいに…また護君を傷つけて…」
昊が地面に倒れながら下を向き涙を流している時。
「そら…おいっ!昊!!
今のうちにお前だけでも逃げろ!
こいつが転げ回ってる、お前だけなら逃げられる…
早く遠くに逃げろ昊!」
護は昊に声を張り上げる。
意識は朦朧としていたが強い口調で声をあげた。
いつも俺を冷やかしちょっとバカにしてるが何だかんだこの親友だけは生きていて欲しかった。
「頼む…お前だけは…生きてくれよ…昊」
そう小さく声をあげ意識を失いそうになった瞬間。
護はまるで世界が止まった気がした。
そしてどこからか声が聞こえた気がする。
それは女性の様な男性の様な中性的な声だった。
(あははははっ♪
やっぱり君は面白いね♪観ていて飽きない
絶望を乗り越え、また絶望する人生…
君の人生は観ていて面白い♪
これから君はどこまで抗うのかな、どこまで他人の為に自分を犠牲にするのかな?
頑張ってね進道 護君!
僕は疲れたから少し眠るよ、お休み…まもるくん♪)
そして世界が動き出した。
(なっ!何だ今のは…誰の声だ?)
護はかなり動揺した、昊にはまるで聞こえてない、
それは自分にしか聞こえてないとなぜか思った。
そこで昊が大きな声を張り上げた事で意識が戻る。
「い…嫌だ!護君…いや……護も一緒に逃げるよ!」
昊は護にいつも庇われていた。
助けて貰っていた、昔から…だけどいつかは対等の存在になりたかった。
護を助けたい、その感情が爆発した。
「今度は僕が…僕が(護)を助けるんだっ!」
大きな声を昊が発したのだ…
まるで弱い自分と決別する様に。
「そ…昊…お前…」
護は驚愕した
いつものおどおどした昊はそこにはいなかったのだ
誰かの為に戦う事を決意した強い瞳の男だった。
その時、昊の体が眩しいくらいに虹色に光り出し、
その光はまるで昊を祝福する様な神々しい光だった…