1章 1話 親友
この世界はどこまでも理不尽だ。
どんなに一生懸命生きていたとしても、信号無視などの車に轢かれ死ぬ事もある。
誰かを助けようとしたばかりに逆上され殺される。
理不尽だ…あまりにも…だけど…それでも…
人を恨まず、
前を向いて生きていく事を選ぶ人達もいる。
たぶん俺もその1人だと思う。
「母さん、父さん、おはよ」
仏壇の前で座り両親に挨拶をする。
(進道 護) しんどうまもる 19歳
護が中学2年生の時に父親は、信号無視の車に轢かれてしまい亡くなってしまった。
そして加害者は今も刑務所で服役中だ。
その事実を後悔し5年経った今も護に後悔と懺悔を綴る手紙を送ってきている。
だが護は一切その手紙を読んではいなかった。
さらに、高校1年の時に母親は女の子が暴漢に襲われているのを助けようとし、
逆上した者に刺され亡くなった。
その犯人の手がかりは少なく今も逃走していて、
残った女の子はそのあまりのショックで当時の記憶が混乱してしまい手がかりがあまり無かったのだ。
立て続けに両親が亡くなってしまう。
どちらの親も他人の身勝手な行動によって奪われた命だったのだ。
護は憎くて悔しかったが父親が亡くなった時…
母親が言ったのだ。
(誰かを恨むだけじゃ前に進めないの、
あなたは進道護、進む道を迷わず誰かを護れる立派な人になりなさい)
今でも…
母親が泣きながら言った言葉を胸に刻んでいた。
だから母親が亡くなった時も必死に…1人で耐えた。
今も捕まっていない犯人を恨んでいない訳では無いが母親の言葉を守り前を向いて生きていた。
そして護は両親が残してくれたこの家、
東京都板橋区の一軒家に1人で住んでいる。
「そうだ父さん、今日は車の免許取りに試験場に行くんだよ。
教習所の卒業試験も完璧だったからね。
このまま試験場も1発だよ…たぶん…
あっあの幼なじみの昊と取りに行くんだ~
でもあいつ結構本番に弱いから落ちるかもね」
護は不敵な笑みを浮かべる。
「さてと、そろそろ時間だし…
出かけるかな、じゃあ行ってきま~す」
両親に挨拶をし颯爽と出かける。
すると玄関の前に、
1人の女の子?いや(男)が居た。
「あっ!おっ…おはよう護君…」
なぜかぎこちない笑顔で挨拶してくる。
(天海 昊)あまみ そら 19歳
家の近くにある天海神社の13代目の長男
俺の腐れ縁の幼なじみだ。
天海神社は古くからある大きな神社で、それは昔魔の者を狩る、退魔の仕事をしてたとか…
まあ…嘘っぽいが世間ではかなり有名らしい。
そして幼なじみの天海昊
身長は173cm、俺は180cm
俺の方が7センチもデカイ(ふふんっいいだろ~)
性格も温厚で優しい(そこはまあいいだろう)
そして…許せないのが…
10000人の女性が…
10000人惚れるくらいのとんでもないイケメン
髪は少し長いが汚ならしさは一切無く、
美人の女の子かと思うくらいの中性的な美顔。
スポーツも一通り出来、頭も良い。
体型は少し細いが筋肉はある、モデルの様だ。
全男子の敵と言う事だ…許せん!
まあ…めっちゃ優しい良いやつだから…
今日は俺の大きな心で許してあげるとしよう…
神社の息子なんだから坊主にしろ!許せん!
結果、今日も許せん!
「おはよ~そら~って朝から緊張し過ぎだろ~
そんなんじゃ頭回らなくて…落ちるぞ」
「なっ!何でそう言う事言うかな~んーーーー!
護君だけ落ちたら絶対笑ってやるからね!」
「はははっ
俺は教習所の卒業試験満点の男だぞ~
標識問題から何から何まで頭に入ってるんだぜ~
楽勝~楽勝」
駅に向かって2人で歩きながら話しだす。
護は自信満々に笑う。
「ん~ほんとに楽勝っぽい…
僕は標識問題がまだ苦手なんだよね…
一方通行の標識と左折可の標識の問題間違えたし
ややこしいの多すぎだよ…」
「いやそれは間違えたらダメだろ~
まあ行きの電車でまた色々教えるから」
「ホント!?護君ありがと~
昔から勉強はあんまり出来ないけど…
車の試験勉強は凄い出来るんだよね護君」
「うるさい」
ビシッ!
「あいたっ!」
護が昊の頭に軽くチョップする
「だけど良かったのか昊?
俺の教習所代貯まるまで待ってくれて
昊は18になってすぐ取れたんじゃないか?
なんなら誕生日の1ヶ月前から教習所通える所もあったのに、まあ仮免許も取れるの18歳になってからだけど」
護は高校1年生の時に母親が亡くなってから学校を辞め昔から付き合いがあった両親の友達
鈴鹿工務店の社長、(鈴鹿 仁 すずか ひとし)
に頭を下げ16歳で就職した。
お金が無い訳では無かった。
両親が亡くなった時の遺産がある。
ただ何かに集中しないと自分が壊れてしまうから、
違う…憤りの無い怒りに支配されてしまうから。
町の工務店、主に住宅のサッシやガラスを取り付ける仕事だ。
最初は覚える事が多すぎて大変だったがこの頃はやりがいが出来てきて楽しくなってきた。
そして自分で貯めたお金で車の免許を取る。
それが今の護の目標だった。
「それは良いんだよ…
それに護君が一生懸命仕事してお金貯めてるの…
僕はずっと見てたし…だから僕も高校卒業して家の仕事頑張ってお金貯めたんだ。
お金出して貰ったら護君に勝てないからね、
護君は昔から…昔から僕の目標だからね!」
「なっ!何言ってんだお前!
そう言うクサイ台詞は女子にでも言え……
この天然悩殺魔、歩く災害、男の敵!」
「え~ホントの事言っただけなのに、ひどいな~」
そんなくだらない会話をしながら共に歩く
会話は途切れる事は無い
心を許した友達、親友とのくだらない会話
「そう言えば護君、この前ルミナスで子供と鬼ごっこして護君転んだんだね~
僕この前子供達に教えて貰ったんだ♪」
「はぁ!?マジかよ…言いやがったな…
あのガキンチョども…許さん!」
昊は先ほどまでの緊張した顔はしておらず上機嫌に護の話をしていた。
そして秘密をばらされた護は言葉では怒っているが楽しげに笑顔で答えている。
(児童養護施設ルミナス園)
護と昊の家の近くにある少し大きな建物で、
保護者のいない児童や虐待されている児童など、
家庭での養育が困難な子どもたちが生活している。生活指導や学習指導、家庭環境の調整などを行い、子ども達の健やかな成長と自立を支援し退所後の相談や自立支援も行っている。
護は父親が亡くなった時からルミナス園で心のケアをして貰っていた。そして母親の時も…
そしてその恩を返す為に今も護は園の子供達の遊び相手になり仕事で稼いだお金を園に少しばかり寄付しているのだ。
「でも護君は凄いよ、今もずっとボランティア活動やってるしずっとルミナスに寄付してるんだよね?
僕には…そんな事出来ないよ…
自分の事でいっぱいいっぱいなのに…」
昊は自分の非力さを痛感しうつむき呟く
「いや…昊もたまに来てガキンチョと遊んでくれてるじゃねえか、まぁ女の子が昊に会いたくて飛んできてるだけだけどな…
まぁそれでもあいつら喜んでるからありがてえよ」
「そうなのかな…うん、僕も護君みたいに誰かの助けになるような人になる様に神社のお仕事頑張る!」
昊は護に褒められたのが嬉しかったのか、照れながら護を目標にし誓った。
「んな事より…ほら早く駅行くぞ昊!
朝飯まだ食べてないんだ俺は。
早く駅前のパン屋行って塩パン買うぞ、
んで試験場行って運転免許証ゲットだ~!」
「え~僕は朝ご飯食べたよ~って待ってよ護君!」
護は駅に向け駆け出しそれを追いかける幼なじみの昊、2人は運転免許を取る目標
平和な光景がそこにはあった
少し修正しました。




