2章 6話 死闘
「改変…………《自爆》体力」
そう声が聞こえ………すぐにそれは押し寄せてきた…
それは……強烈な苦痛だ。
『ぐぅっ!?グゥァァアアアアアアアアッ!!!』
黒い魔物は今までに感じた事の無い激痛を感じ、あまりの激痛に怒号のような叫び声をあげる。
その痛みは強烈で命を削られるような痛みだった…
『どう……言う……事だ……
何だ…………ぐふぅっ!……はぁ……はぁ…
何が……起きたんだ……何だこの痛み…は…』
黒い魔物は血を吐き出しながら…この謎の激痛の原因を考え探し困惑する。
『女は…もう死にかけで何も出来ない……
何が?誰だ?それに…先程の声……………まさか!?』
何かに気づき勢いよく後ろを向いた。
そこには鼻と口から大量の血を流している男、
護が右手を黒い魔物の方に向けていたのだ。
そして何より異様なのはその体から真っ黒なオーラを放っていた事だ。
『お前……何だ…それは…何だその能力は…
まさか!お前……お前が能力を使ったのか?
いや…違うな…何か違う…何だお前はなん…
「改変……《自爆》体力っ!!」
護がそう言葉を発すると赤黒い線の様な物が一瞬で護の右手から伸び、黒い魔物に触れる……瞬間…
『グゥァァァアアアアアアアアアッ!!!』
またしても命が削られる様な感覚に襲われ、身体中にとんでもない激痛が走る。
そしてそのあまりの苦痛に意識が一瞬飛び黒い魔物は地面に受け身も取らずに倒れた。
『……ガハッ!何だ……また……今の痛みは…はぁ……
はぁ……何をした貴様………自身を最弱などと………
はあ……はぁ……われを……我を騙していたのか!』
黒い魔物はあまりの苦痛と騙されていた事に激怒し倒れながらもその鋭い眼光で護を睨み付け吠える。
「はぁ…はぁ…知らねえよ…ボケが…ただ俺のゴミみたいな…はぁ…ガハッ!……はぁ…能力を使った……
…だけだ………何でか知らねえけど……今新しい…
権能に……また…目覚めたんだよ………ぐぅっ……それを使った……だけだ……」
護は口から大量の血を吐きながら答えた。
黒くなった魔物を必死に追いかけ、
そして魔物が氷雨を殺そうとした時を見た瞬間に何故か新しい権能が……
また……目覚めたのだ。
護は自身の状態を頭の中で確認する。
(進道 護)(24歳) (男)
権能(自己犠牲)固有権能 第ニ階悌
権能(改変)限定固有権能
固有能力(自己犠牲)
命刻(G)14/24 命の残量を可視化出来る
(残量が0になると即死)
(残量は時間経過で回復する事は出来ない)
(残量の消費量に応じて自身もダメージを受ける)
限定固有能力(改変)
(現在ある他の権能の能力を改変する)
(固有能力は改変する事は出来ない)
(改変後の能力は変更不可)
(自身では改変する事は不可)
能力(改変後)
身体強化.自己犠牲G魔力消費5
(1時間身体能力2倍まで上昇)
《限定改変》自爆G-魔力消費0
(命刻)を《1》2)つ消費する事で発動可能
対象の体力または精神力を最大値の
約1/《6》3程削る)
(自爆の能力を連続使用する事は出来る)
(自身よりも高ランクには使用《不》可)
献身G+魔力消費5
(命刻を2つ消費する事で発動可能)
(対象の体力を最大値の1/2程回復出来る)
身体強度 36/18
魔力値 5/10
総合戦闘力評価-(G)
能力が……色々変わっていたのだ、そして気になったのは文字に《》が付いているのがある事だ。
(これ《》はもしかしてこの文字を消して新しい文字を足してるって事なのかも知れないな…
まるで意味が変わってくるな、改変か……使えるな。
自爆の威力も1/6から1/3、倍の威力になってる…
だけど……自爆の消費が……倍になってる……
痛みも倍か……いや……献身の時と痛みは同じだ……
この際痛みなんかどうでもいい……
…前に有牙さんの怪我を治すのに3回…
命刻を6も消費して…もう14しか無い…くそっ…)
護は修二に献身を今までに3回も使用している。
その為に護はやっと戦える手段が出来たのだが残り14と言う命の制限に怯えて焦ってしまう。
そして護が自身の能力を確認し長考していると…
黒い魔物がなんとか少し回復し、片ひざを付いた状態まで体を動かし護に向け話し出す。
『くそっ…新しい権能だと?何だ……お前また我を騙そうとしているのか?
まぁ良い…ただ……お前の能力、自爆の能力だろう?
お前のその状態…次に使ったら死ぬのではないか?」倒れながら話しをする護を見て虚勢を張る。
だが実際は自身もギリギリの状態、氷雨の攻撃もかなり効いていたのだ。
そして護のあの2発の自爆…魔物の内心は焦っていた
「お前…お前…うるせえんだよ!…俺には進道護って名前がお前と違ってあるんだ!!
それに俺が…死にそう?笑わせんな…まだ…全然……
………全然余裕だけど…なっ!」
護も護でかなり不味い状況だった。
今にも意識が飛びそうだったが、膝を爪が食い込むくらい強く握り、無理矢理に意識を保ちふらふらとゆっくりと立ち上がり黒い魔物に軽口を言う。
『強がりは止めろっ!今すぐその強がりを…
止めさせて…やるっ!!』
黒い魔物は勢い良く魔物に飛びかかる。
だがかなり限界が近いのだろう…先程の速さは無く、まだ護の身体強化でもギリギリ見えるくらいだ。
「そっちがその気なら………やってやるよ!!」
「改変……《自爆》精神力!!」
『グアアアアアアアアアッ!!!』
「ぐうぅぅぅあああああっ!!!」
黒い魔物は先ほどの肉体の痛みとは全く違う頭の中を抉られる様な…自身の精神を壊す様な痛みを喰らい
叫びながら頭を抑え地面を転がる。
その苦痛の表情は先程よりも何故か上だった。
そしてその痛みは護も喰らう、負の感情が一気に沸き上がり自身の精神を壊そうと襲ってくる……そして頭が強烈に痛くなり激痛が走る。
だが…護は魔物に呟く
「どう…したよ……お前…はぁ…はぁ……さっきより……効いてるんじゃ……ねえか?
メンタル………はぁ……弱いんじゃねえかお前?
お前が…ゲートに今すぐ…帰る…なら…ゴハァ!
はぁ…はぁ…ぺッ!もう…止めてやる…よ…」
護は精神力では黒い魔物を圧倒していたのだ。
そして黒い魔物に提案する…このまま帰れと。
『ふ…ふざけ…るな…貴様を殺し…あのおん』
「何度も言ってるだろ!俺は…お前に人を殺して……はぁ…はぁ…欲しくない!水神さん…も…見殺しに…
したくない………あと…はぁ…はぁ…
それと...お前にも…死んで欲しくない!
俺が…次にお前に……体力を削る自爆をしたら……
お前は……確実に死ぬ……
俺に……お前を殺させないで……くれ……頼む……」
護は最後の気力を振り絞り叫び、その気持ちは誰にでも分かるくらい真っ直ぐで正直に感じる。
だが護は…そのまま前に倒れてしまった…自身の血の海になっている地面に…
『……何なのだこいつは…本当に……変なやつだ……
我に死んで欲しくないだと!?ふざけるなっ!!
我を殺す前に倒れたくせに何を……言っているんだ…
殺される前に……先に貴様を殺してやる!!
確実に…………………………』
黒い魔物は必死に両腕を地面に突き立て、
無理矢理体を少しだけ起こし、倒れている護に対して文句を言うだけ言って……
そして……無言になった…
今までの戦いを氷雨はぼんやりと意識を失いそうになりながらも見ていた。
(どういう…事?何で……あの人が……Gランクの人があのS-の魔物とまともに戦えているの?
何でそんな事出来るの?あの人…やっぱりおかしい…
それに…また同じ事言ってる…ふふっ…変な…人……)
氷雨はこんな緊迫する状況なのだが…何故か少し笑みを浮かべてしまう。そして……氷雨も意識を失った。
『…………………………………』
黒い魔物はふらふらとしながらもゆっくりと立ち上がり歩き、倒れ伏せている護を見下ろして呟いた。
『…特別だ…今回はお前の望みを聞いてやる…
確かに…死闘が出来たからな…特別だ…
だが次はもう手加減などしない!油断もしない…
………こんな所で死なれたらまた死闘が出来なくなるからな………今回だけの……特別だ………』
黒い魔物は1人自分を納得させる様に呟き護に手を向ける、次の瞬間護は真っ赤な炎に包まれた…
だがまるで燃えはせず…逆に護の体の状態を治している様にも見えた。
『女…お前も少しだけ楽しませて貰った礼だ』
黒い魔物は倒れている氷雨にも手を向け少しだけ燃やした、その炎は護の時の炎とはまるで別物…
本当に少しだけ燃やしたのだ。
『次は確実にお前を殺す、それまでに…私とまともに死闘が出来るくらいに強くなれ…………マモル』
そう言い残し魔物はゲートの中に戻って行った……
そしてゆっくりと門が閉まっていく……
これで2章は終わりです。
やっと護は戦う力を得た…のかな?