1話 外伝3話 退魔
(渋谷スクランブル交差点)
昊は人々を守る為、護が安全に退避出来るようにする為、魔物をひたすら倒していた。
自身の力を意識してからの昊はまさに敵無し。
ここにいる多くの魔物達ごときでは相手にすらならない程の、まさに無双だ。
次々と魔物達を倒しているその光景を見て他の人達も奮い立ち魔物達を次々と倒していく。
そして…門から魔物は現れなくなり…
残りは赤い1つ目の巨人のみになる。
「よし…これで後は…あの動かない巨人だけだ」
昊は一息つくように呟く。
多くの戦っていた人達も満身創痍だ。
「あれ昊君はもう疲れちゃったのかな?
この勝負は私の勝ちで終わりね♪」
また雷羅がいきなり横に現れ雷羅はにやにやと勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「もう…雷羅さん、いきなり現れないでくださいよ、
びっくりしますって…」
昊は呆れながらも少し笑みを浮かべた。
「あはは♪ごめんね~
この雷電の権能って早く動けて楽しいのよね~」
雷羅はこの戦場で唯一楽しんでいた…
「やっぱり戦闘狂だ…そんな事より、
何であの巨人は動かないんですかね?」
昊はずっと戦闘中に気になっていた疑問を吐く。
「さあね~、だけど…あいつかなり強いわよ…
仲間なのか知らないけど魔物達を全滅させても気にもしていないし…何か不気味なのよね…」
雷羅はそう呟く、
それは昊も思った事だ、確かに何故か不気味だった…
そう2人は思っていた瞬間…
『グォオオオオオオオオオッ!』
残っていた最後の魔物、
赤い1つ目の巨大な魔物が吠え大地が震える。
「くっっ!」
「あぁーもううるさいわね…」
目眩がする程の咆哮、2人は咄嗟に耳を押さえる。
遂に門の前にいた巨大な魔物が動き出したのだ…
『グオオッ!』
魔物はどのくらいの重量があるかすら見当も付かない巨大な大剣を肩に担ぎ戦闘体制を取る。
「来ますよ雷羅さん!」
「分かってるよ昊君、まぁ私には当たらないけど」
身構える昊と違い、
雷羅は相変わらず獰猛な笑みを浮かべている。
2人が構えた瞬間、西の方角から大きな声がした。
「力を使える人達!
後はこのデカブツを倒すだけだ。
友達や家族、人々を守る為に一緒に戦ってくれ!」
何かと思い2人は目をやる。
そこには赤い紅の髪の警察官が皆を鼓舞していた。
「うおおぉぉ!俺はやるぞ!」
「僕でもやれる!」
「私も戦います!」
「いつでも行けます!」
多くの人が警察官の鼓舞に興奮気味に声を張り上げ自身を奮い立てている。
「警察官の人ですね、あの髪の色…強そうですね」
「何あれ…暑苦しいわね…全く…」
昊は冷静に警察官の力の強さを確認し、
雷羅は…かなり嫌そうに…悪態をついていた。
「よし!行くぞ皆!」
警察官は声を張り上げ巨人に突撃の号令をかける。
「「「「おおおおぉぉぉっ!」」」」
力を持った人達もまた声を張り上げ自身をまるで鼓舞する様に叫んでいる。
「食らえぇぇ!紅蓮槍!」
紅蓮の様に猛る炎の槍が化物に放たれ、そして多くの能力者達も自分の使える力を放つ。
「火炎弾!」「水破矢!」
「風烈刃!」「土流塊!」
それを見てなのか魔物も巨大な大剣を振るう。
瞬間…大地が割れた…
魔物の一撃は地面に衝突するなり爆発した様な音を轟かせ衝撃を周囲に撒き散らす。
そしてその斬撃は多くの人が放った技を粉砕し大地を数100mに渡り切り裂いてその直線上にある物は全て破壊された。
渋谷駅前の木々や駅、その後ろにある高層ビル…
そして…人々さえも…
「なっ!何…あの威力っ…」
昊は一瞬の出来事に呆然としてしまった。
「あの大剣を振り下ろしただけであの威力…
今の1撃で何人の人が…くぅっ………!」
「強いと思ったけど…ここまでとはね………さっさと倒さない皆死んじゃう…ねっ!」
昊が愕然とする一方、雷羅は無謀にも巨大な魔物に向かい突撃していった。
「雷羅さんっ!」
昊は叫んだ、しかし雷羅は笑みを浮かべ駆ける。
「ここでこいつを…確実に殺す!1発喰らいなさい…雷龍の矛!!」
雷羅は雷の矛を召喚し魔物に勢いよく投擲した。
『グォォ?グギャァァァアア!』
魔物は高速で右足に突き刺さった槍に気付いた、
その瞬間…
凄まじい電流が魔物の右足から走り全身に回り魔物は苦痛の叫びをあげる。
「す…凄い…雷羅さんは…凄いや」
昊は雷羅の物怖じしないその度胸、そしてその強さに圧倒されてしまった。
だが魔物も負けじと抵抗する。
痺れながらも大剣を振り回し颯爽と駆ける雷羅を潰そうと攻撃していた。
「ほらっ!ほらっ、当たらないわよそんなの!
さっきのド派手な技やってみなさいよ!
もしかして動かなかったんじゃなくて…力を貯めといたのねあなた!」
その通りだった…
巨大な1つ目の魔物の能力は(力の解放)
動かず力を貯めた分だけ攻撃に威力を乗せられる。
その魔物の能力を雷羅はその抜群の戦闘センスで解き明かし昊に伝えた。
「昊君!この魔物の貯めた力が後どのくらい残っているのかはわからないけど、もう無いかも…いや、そんな事ないわ!早めに片付けないと不味いわよ」
雷羅は魔物の攻撃を避けながら昊に助言する。
その言葉を聞き昊は意識を深く集中する…
「そうだ…今はこいつを倒す事だけを考えろ…
大丈夫…僕ならやれる…やれる!!」
目を見開き残りの魔力全てを解放する…
その瞬間昊から虹色の光が爆発した。
「昊君…あなた…」
その光の強さに雷羅は息を呑んだ。
『グォォ!?』
巨大な魔物もその光に圧倒され1歩足を引いた、
この小さい生き物に恐怖してしまったのだ。
そして…大太刀を構え…魔物に向け斬撃を放つ。
「お前はここで終わりだ…
これが今の僕の全力だぁぁぁああ!!
消え去れえぇぇぇ魔断っ!!!」
刹那
昊の全力の斬撃の力を乗せた魔断は魔物に向け解き放たれた。魔断の斬撃が魔物を滅ぼすために迫る…
しかし魔物も最後の足掻きだろうか、貯めていた全ての力を解放し大剣に乗せ放つ。
衝撃と斬撃がぶつかり合い爆風と爆音が弾けた。
そして
斬撃が勝ち魔物を真っ二つに切り裂いた。
昊の渾身の一撃で魔物は左右に倒れそして霧になり
そこには純白の大きな宝石の様な結晶だけが残る。
その瞬間、巨大な金色の門の扉が大きな音を立てゆっくり閉まっていったのだ。
「門が閉まった…これで…終わったのかな?
良かった…僕も誰かを助けられたのかな…
やったよ…護君…僕も戦えたよ」
全力を出し、今にも倒れそうだがゆっくり呟いた
自身を称える様に。
そして昊が感傷にふけていると、急に肩をビシバシッと何度も叩かれた。
「あははははっ!
まだあんな大技隠していたの昊君!お姉さんびっくりしちゃったよ~、しょうがない…今回は私の負けとしとくかな。次は負けないけどね♪」
雷羅は満面の笑みで昊を称賛した。
「次…またこの門が開いて…
また魔物が現れるんですかね?」
昊は巨大な金色の門を見上げながら呟く。
「たぶんね、昊君のあの一撃は門にも当たったの、
でもあの門は傷すら付いていないわ。
破壊は出来ないのかもね…そうなると…また開きそうな予感がするわね」
雷羅はさっきまでとは違い真剣な顔をして話した。
「次ですか…またこんな悲劇が…こんな悲劇絶対繰り返させない!雷羅さん…僕これからも戦います
皆を…大切な人達を守る為に…」
昊は決心した、これから起きる新たな戦いに向け。
「そうね…私も負けてられないかな~
って!昊君!」
雷羅は驚き昊の肩を叩く。
「いててっ!もう、何ですか雷羅さ……」
昊は雷羅に叩かれ後ろを振り向いた…
そこには多くの者が昊と雷羅に向け喝采していた。
「すげえな兄ちゃん!」「ありがとう2人とも!」
「雷のお姉様素敵!」「強すぎだろあんた!」
「2人がいなかったら皆死んでたぞ、ありがとう」
止まらない称賛に2人はどうすればいいかわからなくなってしまった。
すると人々の中から多くの警察官達が現れそしてその中の1人が声をあげた。
「私は(不知火 旭)しらぬい あさひと申しますこの度のあなた達2人の尽力…警察を代表し感謝致します。誠に感謝申し上げます!」
旭達は2人に深々と頭を下げた。
「いやっえっと、大丈夫ですから!あっあの………
あっ頭を上げてください!」
「あっ…あの暑苦しい警察官じゃない…」
「ちょっと!雷羅さんは黙ってください!」
昊は慌てて雷羅をだまらせた…
まったく空気が読めない、いやそもそも気にもしない雷羅だった…
「承知しました。つきましてはこの事件の情報を多く集める為に、貴方方お二人には御一緒に本庁の対策課まで御同行して貰う様に命令が出ております。
御同行お願い致します。」
それを聞きすぐに………
「えっ絶対嫌!じゃあ後は任せたよ昊君♪
またどこかで勝負しましょ~またね~」
そう言った瞬間雷羅は稲妻の様にその場から消えた
「ちょっ!雷羅さん!酷い…僕だけ置いていかれた…
僕も早く護君を探しに行かないといけないのに…
はぁ…わかりました、一緒に行きます」
昊は深いため息をついた。
(護君は警察官の人が安全な場所まで連れて行ってくれたみたいだし…大丈夫だよね)
昊は気持ちを切り替えるしかなかった。
「ありがとうございます
それとお名前をお聞きしても宜しいですか?」
「天海 昊です」
「ありがとうございます天海さん。
では………行きましょうか」
昊は警察官達に囲まれ歩いて行く、
(僕の人生これからどうなっちゃうのかな?
雷羅さんも言ってたな…これからも戦い続けるって…
もっと多くの人達を守れる様に力を付けないと)
そして、
ここから昊の新しい人生が始まったのだ…
これで護が意識を失った後の話は終わりです。
他の人達の話も書こうとしたんですけど…
また今度書きます。