1章 外伝2話 雷電
昊は勢いよくスクランブル交差点の方に駆けだしたのだが、そこはまさに戦場、多くの化物と多くの人達が命を賭けて戦っていたのだ。
「ここはまるで地獄みたいだね…でも…僕だって戦えるんだ!はぁぁぁああっ!」
昊は叫び、刀を脇に構え横薙ぎ一閃。
その一撃は空気をも切り裂く様な高音を放ち3体の化物を一刀で切り伏せた。
「凄い切れ味だね…これなら…やれる!」
昊は戦場を賭け次々と化物達を切り捨てていく、
その姿はまさに無双。
明らかに他の戦っている人達の何倍も早い速度で化物達を倒しているが、もうそこには少し前までの臆病な昊の姿はまるで無かった。
そしてその無双の戦いぶりを人々は見ていた。
「何だあいついきなり現れて…はぁ?強すぎだろ」
「えっ!狼を一撃かよ…やばっ」
「あいつの武器大太刀?狩りゲーやん」
「雷のねーちゃんと同じくらい強いな」
「あの人ガチのイケメン!Zにあげよ♪」
「強くてカッコいいな~、どこのモデル?」
「あいつの髪…虹色みたくなってきてねえか?」
良くも悪くも昊はこの戦場を一瞬で支配し、そして昊はほぼ無心になりながら次々と化物を倒していると不意に横から話しかけられた。
「君…なかなか強いね~さっき力に目覚めたばかりなのに魔物を殺すのに躊躇が一切無いわね。
それにその髪の色…何その色…虹色?
稲妻の様な色の長髪をなびかせラフな格好をした先程の女性がいきなり横に現れ昊に話しかける。
「うわっ!びっくりした!あっあなたは、あっすみません、僕はあなたがさっき助けた星乃さんから頼まれて…あなたを援護をしに来たんです」
「星乃さん…あぁさっきのかわいい子ね、あの子…
なるほどね、逃げずにあの子も戦う事を選んだのね…
あっちなみに私に助けはいらないわよ。
私のこの雷電の権能、魔物達を殺すにはなかなか
向いているからね♪私この渋谷で今一番強いのよ」
そう言い拳を握り締めると手の中で雷が暴れ狂っている。そして自信満々にお姉さんは答えたのだ。
「魔物…確かに人を襲う、魔物だ…」
昊は少し考え込んでしまう。
「ちょっと聞いてるの?
まったく…あっ私は(鳴神 雷羅)なるかみ らいら、
雷羅ちゃんって呼んで良いわよ、君は?」
雷羅は少女の様に可愛く自己紹介をした…
「あっ僕は天海 昊
って言います、よろしくお願いします鳴神さん」
「あなた…雷羅ちゃんで良いって言ったのに…
まぁ良いわ、とりあえず私に助けはいらないから…
昊君は出来る限り魔物達を倒しなさい」
「分かりました。でも友達が今ケガは治ったんですけど目が覚めなくて…早く行ってあげないと…」
昊は先程とは違い落ち着き無く話す。
「貴方は…やっぱり子供ね~力を持った意味と責任をまるで分かって無いわ…」
雷羅は昊に呆れながら話に少し怒気が混ざる。
「それはどう言う事ですか…」
昊は小馬鹿にされたと思い少し拗ねながら聞き返す
「貴方は今ここで、まぁ私には敵わないけど、
かなりの力を持っているのよ。
自分自身でも分かっているんでしょ?」
確かに昊も薄々と感じてはいたのだ。
周りで戦っていた人達を見ていると、3.4人で1体の魔物を相手にしていたり、昊が一撃で倒した狼の魔物に苦戦していたり…
昊は分かってしまった、自分が異常なのだと。
「そんな貴方が今ここ、あの門からまだまだ魔物が出てくる今、居なくなったら他の人達は死ぬわ。
分かったかしら?力無い人達を守るのも強くなった者の宿命なのよ…」
雷羅の話を聞いて昊は思った…
(この人は護君みたいな人だ…人を助ける為にすぐ行動出来る人、僕は何も変わってないや…ただ力を手に入れただけ…僕も…僕も変わりたい!
護君や鳴神さんみたいになりたい!)
「分かりました鳴神さん…
僕もここにいる人達を助ける為に戦います!」
昊の迷いが消える。
そこには1人の戦士の顔をした青年がいた。
「そう…強さをやっと理解したのね…
大丈夫よ、あなたがここで魔物を逃がさない様に戦えれば友達を安全な場所まで逃がす助けになるわ」
先程とは違い雷羅は優しく昊に話かける。
「はいっ鳴神さん…いや雷羅さんにも僕は…
僕は誰にも負けない…
大切な人を守れる様に誰よりも強くなります!」
昊は雷羅に、そして自分自身に誓う。
「へ~そんな生意気な事も言えるのねあなた、
じゃあおしゃべりもこの変にして…
どっちが多く倒せるか勝負……ねっ!」
雷羅は雷の剣を2本召喚し両手に握りしめ稲妻の様に戦場に駆けだす。
雷羅は笑みを浮かべながら魔物達の群れを双剣で切り裂きながら一瞬でいなくなった…
「もういなくなった…
やっぱり雷羅さんって戦闘狂だよね…」
昊は1人呆れる様に呟き、そして自身も大太刀を構えて戦闘態勢をとる。
「僕もやるぞ!誰にも…絶対に負けない!」
昊も魔物の群れに勢いよく駆け出した。