004 レベル上げと、予期せぬ出会い ①
日々が過ぎていった。少なくとも、俺がそう仮定する日々が。
この天空の世界には本当の日の出も日没もなく、ただ雲の色が薄い灰色から濃い灰色へとゆっくりと移り変わるだけだった。俺の日課は単純かつ殺伐としていた。目覚め、【隠密】を発動し、狩り、食事、隠れる、そして繰り返し。
鉱岩甲虫が俺の主食だった。その味は決して良くならなかったが、安定した経験値源だった。俺はすぐに奴らを倒す最善の方法を学んだ。甲殻は完全に無視し、脚の関節に集中する。遅くて陰惨な作業だったが、効果的だった。
毎日、俺は巣から少しずつ遠くへ冒険し、自分の岩の島を探検した。
それは見た目よりも大きく、一時的な隠れ場所となる亀裂や小さな洞窟で満ちていた。俺は目につくものすべてを【鑑定】した。
<小風の結晶>:風属性のマナが凝縮して形成された結晶。直接摂取はできない。
自分へのメモ:後でこれを使う方法を探すこと。
<噛みつき岩トカゲの巣(放棄済み)>:微かな不死鳥の匂いが、元の持ち主を追い払った。
ほう?俺の匂いには効果があるのか?それは良いことなのか、悪いことなのか?
ゆっくりと、しかし着実に、俺の経験値バーは満たされていった。経験値10ポイントごとに小さな勝利であり、単調な生活の中でのささやかなアドレナリンの奔流だった。
【経験値:195/200】
あと一匹。あと一匹でレベル3になる。
俺は次の獲物を狙い、岩の突起の陰に潜んでいた。ひときわ大きな甲虫で、ご馳走になりそうだ。まさに飛びかかろうとしたその時、声が聞こえた。
泣き声だ。
か細く、絶望的な泣き声が、近くの岩の亀裂から聞こえてきた。
俺はその場で凍りついた。これは魔物の声じゃない。これは…赤ん坊の声だ。
最初の本能は無視することだった。関わるな。注意を引くな。異常なことはすべて潜在的な危険だ。
だが、好奇心、俺がどうしても捨てきれないあの厄介な人間の特性が、俺を打ち負かした。
【隠密】スキルを発動させたまま、俺は慎重に亀裂に近づいた。狭くて暗い。
泣き声はその中から聞こえてくる。
俺は深呼吸をして中に入った。
数歩進むと、亀裂は小さな洞窟へと広がっていた。そしてその中央に、小さな生き物が震えていた。
それは…白い毛玉のようだった。
大きくて青い瞳は涙でいっぱいで、小さなくちばしは黄色かった。雪のように白い小さな翼を持ち、寒さか恐怖で震えていた。
【鑑定】!
<雪鴉の雛>
【レベル:1】
【状態:空腹、恐怖、負傷(翼の骨折)】
雪鴉?聞いたことがない。だが、それは俺と同じただの雛だった。弱く、孤独で、そして傷ついている。
そいつは涙ぐんだ瞳で俺を見つめ、一瞬泣き止み、代わりに怯えたようなしゃっくりを漏らした。俺を見つけたのだ。
くそっ、【隠密】スキルは雛には効かないのか?それとも近づきすぎたか?
そいつは壁際まで後ずさり、体をできるだけ小さくしようとした。激しく震えている。
俺はそいつを見た。巣から落ちたのは明らかだった。折れた翼が奇妙な角度で垂れ下がっている。独りでは長くは生きられないだろう。飢えか、寒さか、あるいは捕食者に見つかって死ぬかだ。
俺の一部、俺を生かしてきた冷徹で論理的な部分が叫んだ。「出ていけ!お前の知ったことじゃない!そいつはただの足手まといだ。お前に注意を引き寄せるかもしれないぞ!」
だが、もう一つの部分、カイトだった部分が、動けなかった。
俺はこの震える小さな生き物に自分自身を見た。孤独。恐怖。過酷な世界で死にかけている。
俺は心の中でため息をついた。
「残された人間性め、ちくしょうが」
ゆっくりと、怖がらせないように、俺は後ずさりして洞窟から出た。
俺は追いかけていた甲虫のところへ直行した。今度はためらいはなかった。素早く効率的に倒し、その死骸を苦労して洞窟まで引きずっていった。
俺は甲虫をそいつの前に押し出した。
白い雛は虫の死骸を見て、それから俺を、困惑に満ちた瞳で見た。
俺は甲虫の方へ顎をしゃくり、それから洞窟の隅に後ずさり、できるだけ脅威に見えないように努めた。
そいつは一瞬ためらったが、空腹が勝った。甲虫の柔らかい腹を夢中で突き始め、貪るように食べた。
《鉱岩甲虫を討伐しました。》
《経験値を10獲得。》
《レベルが3に上がりました。》
見慣れたレベルアップの光が俺を包み、力が体にみなぎるのを感じた。だが、今はそんなことはどうでもよかった。俺の注意はすべて、久しぶりの食事をむさぼる白い毛玉に集中していた。
食べ終わると、そいつは再び俺を見た。瞳の中の恐怖は少し和らぎ、何か別のものに変わっていた。好奇心?感謝?
そいつは柔らかな声を出した。「キュ?」
どうすればいいのか分からなかった。俺は関わってしまった。この雛を助けてしまった。さて、どうする?ここに置いていくわけにはいかない。巣に連れて帰ることもできない。それでは俺たちが見つかる危険が増すだけだ。
俺が新たなジレンマについて考えていると、洞窟の外から音が聞こえた。
重い足音。
噛みつき岩トカゲよりずっと重い。
俺は凍りついた。雪鴉の雛もそれに気づき、再び震え始め、俺の後ろに隠れた。
俺は洞窟の入り口まで忍び寄り、慎重に外を覗いた。
そこには、見たことのない巨大な生物がいた。巨大な灰色の狼のようだったが、背中は分厚い岩の甲殻で覆われ、尻尾は鋭い突起のついた棍棒のようだった。そいつは空気を嗅ぎ、その黄色い瞳は捕食者の知性で輝いていた。
【鑑定】!
<岩鎧狼>
【レベル:9】
【縄張りを持つ捕食者。強力な嗅覚と高い防御力を持つ。血の匂いに引き寄せられる。】
レベル9。
奴は甲虫の血の匂いを、あるいは怪我をした雪鴉の雛の匂いを嗅ぎつけたのだ。
そして、俺たちの洞窟にまっすぐ向かってきていた。
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