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029 天からの贈り物 ②

たき


それが、俺が思いつく最高の表現だった。


体内に流れ込むマナは、もはやちょろちょろとした漏れではなく、力強く安定した奔流ほんりゅうとなっていた。細いストローで飲む状態から、消防しょうぼうホースを全開にするようなものだ。


俺はこの至福しふくの状態で丸一時間過ごした。じっと座っていたが、内側では祝祭しゅくさいが繰り広げられていた。体の細胞一つ一つが、この冷たく穏やかなマナに浸され、【フロー・ブースト】のスキルが調整役として働き、システムが溢れて内部爆発を起こさないようにしてくれていた。


【レベルが24に到達しました。】


「レベルが丸々一つ。一時間で。瞑想めいそうだけで。これは…チートだ。間違いなくチートだ。もしこれがマルチプレイヤーの世界なら、他のプレイヤーたちは今頃俺を通報しているだろう」


「『GM!このフェニックス、チートツールでレベリングしてます!』ってな」


「だが、それだけじゃない。説明には吸収速度と…放出速度について書かれていた」


「吸収はもう試した。さて、ここからがお楽しみの時間だ」


「派手に一発、ぶちかますか」


俺は洞窟から出て、生まれ変わったような気分だった。マナで満ち溢れ、爆発しそうなほどだった。


島の真上に高く舞い上がる。


「さて、哀れな木々よ」俺は声に出して言った。「これから起こるであろう、偶発的ぐうはつてきな破壊について、あらかじめ謝っておく」


まずは、簡単なテストからだ。


火球かきゅうを形成する。以前は、集中に一、二秒かかっていた。


今は?瞬時だ。


「火球」と考えただけで、目の前に安定した燃え盛る球が現れた。


「おぉ。こりゃ速い」


それを放つ。以前よりも速く飛んでいった。


だが、これはただのウォーミングアップ。ここからが本番だ。


「回転する炎のノコギリ」


「前回これを使った時は、マナのほとんどを消費し、俺を無様な状態にした。最後の切り札だった」


それがどれだけ進化したか、見てやろう。


集中する。マナが内なるタンクから、強化されたパイプを通り、目の前で形作られていくのを感じる。


苦痛を伴う集中が数秒かかったプロセスが、今は…おそらく一秒だ。


回転する炎の円盤が目の前に現れた。以前より大きく、安定しており、空気を切り裂きながら甲高い唸り声を上げて狂ったように回転している。


それを放った。


弾丸のように飛び出し、巨大な木を減速することなく真っ二つにし、そのまま遠くの小さな島に衝突し、結晶のちりの小さな爆発を引き起こした。


俺は口を半開きにして、その光景を凝視した。


【マナ:350/500】


「マナの四分の一も消費していない。これは…文字通り、凶悪きょうあくになったな」


狂った笑いが胸の奥からこみ上げてくるのを感じた。


力。これこそが真の力だ。


俺はもはや、のろまな呪文を唱えるだけの魔術師じゃない。炎の機関銃マシンガンになったんだ。


「もっとだ!」


止められなかった。アドレナリンと新しい力が、血管を駆け巡っていた。


俺は飛び始めた。ただ滑空するのではなく、炎の推進力で。


噴射。停止。急旋回。再び噴射。


以前は夢にも思わなかったほどの俊敏さで動いていた。透明な木の塔の間を踊るように飛び、後ろに金色の炎の軌跡を残していく。


木の葉に炎の針を放ち、蒸発するのを見る。


炎の鞭を形成し、岩を打ち付け、黒い傷跡を残す。


新しい強力なオモチャを手に入れた子供のように、その限界を試していた。


そして、俺は抑圧されていた全ての力、全てのフラストレーション、ここ数週間感じていた全ての怒りを解き放った。


「これは俺の島を破壊したグリフォンのためだ」


「これは俺を殺しかけた蜘蛛の女王のため」


「そしてこれは、俺を虫けらのように感じさせたワシどものためだ」


この狂乱の最中、俺はすでに注目を集めていることに気づいていなかった。


「おっと、ご近所迷惑だったかな?」


ついに止まり、疲労からではなく興奮から息を切らしていると、奴らが見えた。


クリスタル・トンボの群れ。だが、攻撃してくる様子はない。


距離を置いてホバリングし、俺を観察していた。少なくとも二十匹はいる。


その先頭には、一回り大きく、より輝いている個体がいた。その色はより深く、羽はより頑丈そうに見える。


【鑑定】!


<クリスタル・トンボ・ノーブル>

【レベル:28】

【群れのリーダー。通常のトンボの上位種。】


「群れのリーダー。レベル28。上等だ」


「以前なら、即座に逃げ出していただろう。だが、今は?」


俺は奴らを見た。そして、まだ微かに熱を帯びて輝いている自分の翼を見た。


恐怖は感じなかった。

パニックも感じなかった。

ただ…苛立ちを感じた。


「どこかへ行ってくれないか?」俺は声に出して言った。「大事なトレーニングの最中なんだ。俺のプライベートな時間を邪魔している」

奴らは動かない。リーダーは挑戦するかのように、低く羽音を立てた。


俺はため息をついた。


「どうやら、一つの言葉しか理解できない奴らもいるようだな」


もう洞窟に隠れる必要はない。騙し討ちをする必要もない。こいつら相手には。


「新しい戦闘力を試すには、絶好の機会だ」


「いいだろう」俺はくちばしに邪悪な笑みを浮かべて言った。「お前たちが望んだことだ」


翼を広げた。


俺は奴らに向かって突進した。ついに、相手にする価値のある獲物を見つけた捕食者のように。


トレーニングキャンプは終わった。

本当の試験が、始まったのだ。

お読みいただきありがとうございます。


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