012 灰より蘇る ①
「時間」
「暖かい暗闇に浮かぶただの意識であるとき、なんて奇妙で無意味な概念だろう」
「一時間が過ぎたのか?一日?一週間?」
「知る由もない。そこにあったのは、吸収プロセスの単調で痛々しいリズムだけだった」
「一滴…一滴…暖かいエネルギーの一滴が、俺の本質に染み込んでいく」
「まるでピペットで巨大なダムを再び満たそうとしているかのようだった」
「俺は自分の爆発の残り火、かつて俺の体だった灰に閉じ込められた熱を糧にしていた」
「信じられないほど遅く、極限までイライラするプロセスだった」
「このペースだと、この宇宙の星々が冷え切る頃に、俺は雛鳥の姿に戻るんだろうな?」
「つまり、俺の体は粉々になったのだから、経験値やレベル、スキルなど、レベルアップさせたものが蒸発してしまうのは理にかなっている」
「それは、人生をもう一度、ゼロからやり直すということか?」
「この虚空で少し前に俺の頭をよぎったのは、そういうことだった」
「だが、そのすべては、あの出来事が起こったときに蒸発した…」
「計り知れないほどの時間がこの遅いルーティンの中で過ぎた後、何か新しいことが起こった」
俺が吸収していた細いエネルギーの糸が…太くなり始めた。
もはやただの滴ではなかった。小さな小川になった。そして川に。
そして俺はそれを感じた。それは単なる残り火ではなかった。もっと純粋で、もっと強力な、異なるエネルギーだった。
「これは何だ?」
《現地の炎エネルギー源を完全に消費しました。》
《周辺環境に高濃度の未精製エーテルを検出。》
《【灰の種子】の特性が未精製エーテルと反応。》
《集中吸収プロセスを開始…》
「ああ。分かった」
「俺の灰。不死鳥の自爆による灰は、ただの灰ではない」
「それは俺の本質で飽和し、死と再生のエネルギーで飽和している。それは空気中から直接エーテルを吸収する巨大なスポンジのようになったのだ」
「そして、その灰の中心にいる種子である俺は、すべてを吸収していた」
再構築のプロセスは、絶望的な生存の試みから、狂気のエネルギーの饗宴へと変わった。
俺は巨大な流れが自分を飲み込むのを感じた。
それは痛々しく、同時に快感だった。
自分が拡張し、形作られ、原子レベルで再構築されていくのを感じた。
それは単なる再構築ではなかった。再鍛造だった。
《進化の条件を満たしました。》
《種子段階でのエーテルの集中吸収の結果、進化は通常の種族の限界を超えます。》
《進化を開始:【灼熱太陽の不死鳥 - 若鳥】へ。》
「灼熱太陽の不死鳥?若鳥?」
「これは…重要そうだ。『雛』の段階とはおさらばだ」
「まるで体の進化、子供からティーンエイジャーへの!」
暗闇が晴れ始めた。俺が目を開けたからではなく、俺自身が光の源になったからだ。
手足が形成されるのを感じた。
羽毛が生えるのを感じた。新しい心臓が胸の中で鼓動を始めるのを感じた。弱い脈拍ではなく、力強く安定したドラムのビートで。
《身体の再構築が完了しました。》
《全ての灰を消費しました。》
《エーテルの集中エネルギー消費が完了しました。》
《レベルジャンプ》
《レベル9に到達しました。》
俺は自分の墓であった灰の山から、金と赤の炎の閃光とともに爆発的に現れた。
息を切らしてはいなかった。弱ってもいなかった。
俺はただ、そこに立っていた。
黒曜石のように輝く鉤爪を持つ、二本の力強い足で立っていた。俺はもはや綿毛に覆われた小さな雛ではなかった。もっと大きく、若い鷲ほどの大きさだった。
俺の羽毛はもはや淡いオレンジ色ではなく、深い深紅色で、翼と尾の先端には金色の羽があり、内なる熱で輝いていた。
翼を広げた。広くて力強く、酸による火傷の痕跡はどこにもなかった。
力を感じた。真の力を。ステータス画面の数字だけではない。血管を溶岩のように流れる力を。
「これが、俺の新しい姿か」俺はうっとりと言った。
「これはいい。これはすごくいい」
俺はステータス画面を開き、くちばしに邪悪な笑みが浮かぶのを感じた。
【名前】:なし
【種族】:灼熱太陽の不死鳥
【状態】:若鳥
【レベル】:9/20
【HP】:150/150
【マナ】:200/200
【経験値】:0/1000
【ステータス】:
筋力:25
生命力:30
敏捷:35
知力:25
魔力:40
【スキル】:
【鑑定 LV 4】
【灼熱の炎 LV 1】(【火の粉】から進化)
【覇王の叫び LV 1】(【不死鳥の叫び】から進化)
【隠密 LV 2】
【蘇生 LV 2】(進化!)
【分析 LV 2】
【統率 LV 1】
【マナの流れ感知 LV 2】
【滑空 LV 2】
【危険感知 LV 2】
【灼熱のオーラ LV 1】(新規種族スキル!)
【称号】:
【不屈なる者】(【不敗なる者】に進化):魔物に対するダメージが中程度増加。より強い敵と対峙する際、全てのステータスが微増。
【弱者の守り手】
【殉教者】(新規!):【蘇生】使用時、前の戦闘で得たエネルギーの一部を保持する。
【スキルポイント】:200
「なんてこった」
「完全なリセットだった。すべてにおいて、飛躍的な向上だ」
「俺のスキルは進化した。称号も進化した。新しい『オーラ』スキルまで手に入れた」
「そして【蘇生】…レベル2。どんな変更があったんだろうか?」
「だが、そんなことはすべて二の次だった。最も重要だったのは、感覚だ。俺の体に脈打つ生の力、血管を流れる真の力の感覚だ」
俺は周りを見渡した。蜘蛛の軍団と対峙したのと同じ中央の洞窟にいた。
だが、そこは違っていた。
壁は黒く焦げていた。場所を照らしていた紫色の結晶は溶け、輝くガラスの水たまりになっていた。
蜘蛛の死体はなかった。蒸発していた。
俺の爆発は、結局のところ、ただの花火ではなかった。浄化だったのだ。
俺は洞窟から出た。
岩全体が俺の爆発の傷跡を負っていた。地面は焼け焦げ、トンネルは崩壊していた。
生命の痕跡は一切なかった。蜘蛛も、虫も、何もない。
「どうやら、俺はこの呪われた岩を消毒してしまったらしい」
「だが…女王はどうなった?」
俺は奥にある巨大なトンネルの方を見た。
それはまだそこにあったが、それを覆っていた糸は燃え尽きていた。入り口は開かれ、黒く焦げていた。
奴は死んだのか?
いや。
【危険感知】がまだ囁いていた。低い唸り声だったが、そこにあった。弱まっていたが、消えてはいなかった。
奴は傷ついた。回復するために、巣の奥深くへと後退したのだ。
「予想通り、爆発では殺せなかったか」
「いい。その方がいい。冷たい復讐の方がずっといい。これで借りを返せる」
俺は岩の縁に立ち、空を見上げた。
力強い翼を広げた。
もはや気流に飛び乗る必要はない。
滑空する必要もない。
俺は力強く押し出した。
一度の力強い羽ばたき。
そして、俺は舞い上がった。
真の、力強く、安定した飛行。
【マナの流れ感知】スキルはまだアクティブだったが、混沌とした網はもはや圧倒的ではなかった。
それは今や…理解できるものに見えた。覚え始めた地図のように。
俺は岩の上を旋回し、自分が引き起こした破壊を見下ろした。
後悔は感じなかった。罪悪感も感じなかった。
ただ、冷たい決意だけを感じた。そして、蜘蛛の女王に会いたいという強い願望を。
これはほんの始まりに過ぎない。
奴らは俺の翼を奪った。俺のプライドを奪った。俺に自己破壊を強いた。
そして今、俺は戻ってきた。
より強く。より速く。そして、はるかに怒りを込めて。
「この忌々しい虫けらめ…」俺は、奴の巣の暗い入り口を見つめながら思った。
「隠れるがいい。回復するがいい。だが、俺は行く。そして今度は、逃げ場はない」
お読みいただきありがとうございます。
よろしければ、下の☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると大変励みになります!