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泣いても拒んでも、外へ
ミザールは力の限りこぐまを殴ったが、彼女を抱き抱えるこぐまは、頑なにミザールを降ろそうとしない。
「こぐま……こぐま、やめて! 私はどこにも行きたくないの! 何度も何度もそう言ってるのに!」
こぐまと、何度名前を呼ばれても、こぐまは止まらなかった。屋敷からどんどん離れていき、すっかりそこは、森の中。
「こぐま、戻って! ……戻ってよ……」
「ミザール」
ふいに、こぐまは足を止め、彼女の目を見てきた。今だ、とミザールは暴れようとする。立ち止まった今なら、逃げるのも容易いだろうと。
だが、彼女の身体は動かない。ミザールは忘れていた。自分の前に現れたこぐまが──自分が流した涙を、口にしていたことを。
こぐまは魔法で、ミザールの動きを封じていたのだ。
「屋敷の外で見る君も可愛らしいね。月光を月化粧と言ったりしないかな」
「……そんなの、知らないわ」
「ミザール。ここは外だ。──もっと、外を知りに行こう」
「嫌よ! 帰らせて!」




