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詰る
こぐまは目を逸らさなかった。その目を見開いて、じっとミザールを見つめている。そして静かな口調で答えるのだ。
「抱き着かれただけだよ」
「私のこぐまに勝手に抱き着いたというの! 何よそれ!」
ことりことりと、涙が音を立てて床に落ちていく。涙の形をした赤い結晶は、魔法使いにとっては何よりも価値がある。それこそ、命を賭けたって手に入れたいと思うほどに。
「今まで、私のものにちょっかいを掛けたことはなかったのに! 私のものに、エイプリル……何で!」
「ミザール、一応血は吸わせてないよ」
「吸わせていたら縁を切ってるわよ! 当たり前でしょう!」
「ミザール、落ち着いて」
「こぐまの馬鹿! エイプリルに簡単に触らせるなんて! そんなことで私の守護が務まるの?」
「……どうだろうね」
その返答は予想していなかったのか、ミザールは深紅の瞳を見開いた。
「君をどこにも連れていけない、閉じ込めてばっかりの僕に、君の傍にいる資格があるのかな」




