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痴情の縺れ?
そこにいるのが誰なのか、声を聞けば分かる。
それでも、姿を目にするまでは、その相手が自分の予想通りの相手であるのかは分からなかった。
カンテラを顔の辺りまで掲げる。自分の顔がよく見えるだろうとそうした。
「なんだ、ミザールだったのか」
険しい表情だったこぐまは、ミザールの存在に気付くと途端に表情を和らげ、こちらに向けて手を伸ばしてくる。
きっと、部屋に連れ帰るつもりなんだろうが──ミザールはその手を払い除けた。
「ミザール?」
こぐまは首を傾げている。そんな彼の姿に、静かに、ミザールは苛立ちを募らせる。
「……どうして!」
思いの外大きな声が出てしまったが、それでミザールが止まることはない。
「あなたからエイプリルのにおいがするのよ! 強いわ、強く残っているわ! 同じ空間にいただけじゃそんなに付かないものよ!」
「ミザ」
「エイプリルと何をしていたのよ!」
気付けば深紅の瞳からは、いつもより大粒の涙が溢れ落ちていった。




