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空の隣と来客の報せ

 吸血鬼の涙を人間が口にすると、魔法を使えるようになるが、吸血鬼自身は魔法を使えない。

 体内に蓄積された魔力は、おそらく、致命傷すら自力で治せるほどの異常な治癒能力と、千年すらも越えるほどに有り余る寿命に割かれているのではないかと言われている。

 人間は──自らを魔法使いと名乗り上げる人間は、吸血鬼を欲し、逃げ出さないように囲い込む。


 本来は魔法など使えない自分達が、魔法使いであり続ける為に。


◆◆◆


 ミザールが目を覚ました時、こぐまは横に眠ってはいなかった。空っぽの隣を、上半身を起こしてしばらく見つめた後、静かにミザールはそこへ手を伸ばす。

 冷たい。

 こぐまはいつベッドを抜け出したのか。


「……こぐ」

「ミザール」


 ノックもなしに部屋の扉が開けられる。

 ミザールは驚きから手を引っ込め、赤い目を丸くして彼を見た。


「こぐま! ノック!」

「そんなことよりもだ、ミザール。彼女(・・)が来たよ」


 その言葉に、彼女は慌てて支度を始める。

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