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第5話 入れ替わってる!?

 バタバタと部屋を出ていくメイドの様子に、とんでもないことが起こってしまったかもしれないと私の感が告げていた。

私は、ベッドから降りてドキドキしながら近くにある鏡台で自分の姿を写してみた。


「なっ!!!! 何これー!」


 鏡に写っている自分の姿……。

見慣れている自分ではなく、全くの別人がそこに立っていた。

なんと、そこに写っているのはあの鉄仮面……もとい、ジュールであった。


「なっ、な、な、……」


 私は言葉を失い、その場によろよろと座り込んだ。

そういえば、起き抜けで全く気づかなかったが着ているパジャマも男性用だし、手足も私より何倍も長い。

そう、つまり私は今、ジュールになってしまっているのだ。

理解が追いついていかないが、一つだけ心当たりがあるとすればあの大階段での転倒事故だ。


「てことは、あの時、私とジュール王子は入れ替わってしまったってこと? そんなことある? いや、あったからこうなってるんだけど……」


 考えれば考えるほど、疑問ばかりが頭をよぎる。

私は、頭を抱えながらしばらくそこにうずくまっていた。


「ニャ〜」


 猫の鳴き声が聞こえ、ふと横を見ると先程私を威嚇した黒猫が私の身体に尻尾をくっつけながら座っていた。

きっとこの黒猫は、ジュールが飼っているのだろう。

私を少し慰めているように見える黒猫の仕草に癒され、私は黒猫に話しかけた。


「ねえ、お前は私がお前のご主人様じゃないってわかってるんだね。だから威嚇したんでしょう? ふふ、賢い子ね」


 私の言葉に、黒猫は「ニャ〜」と大きい声で鳴くと、私の膝の上にのろのろと乗りくつろぎ始めた。


 (可愛いな……)


 ふいに愛犬のクッキーを思い出して泣きそうになる。

クッキーも、見た目は私でも中身はジュールだってことに気づいて悲しんでいないだろうか……。

そんな私の思いとは裏腹に、すっかり私に慣れ、膝の上で丸くなって寝始めた黒猫を撫でると、黒猫は気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らした。



「ジュール様、失礼いたします」


 部屋がノックされ、慌ただしく出ていったメイドが戻ってきた。

メイドがドアを開けると、国王と王妃、それに医者だと思われる白衣の年配の男性が揃って部屋に入ってくる。

国王は、黒猫を抱いている私を見て嬉しそうに声をかけてきた。


「なんだ。いつものジュールじゃないか。カシスと仲良くしているようだし。ジュール。頭を強く打ったようだがまだ痛むか? 気分はどうだ?」


 (カシス? ああ、この黒猫の名前ね。でもどうしよう……下手なことは言えないわよね。こうなったら、記憶喪失のフリをするしかないわ!)


「あなたは、誰、ですか?」


 私は、記憶を全て無くしたようなフリをして国王を見つめた。

すると、国王の顔がたちまち青ざめていく。


「誰、だと? 私はお前の父であり、ミア王国の国王だ。本当に覚えていないのか!」


「はい……申し訳ありません……」


「そんな……」


 愕然とその場に立ち尽くした国王と、私と国王のやりとりを見て泣き出した王妃。

そして、その二人を見ておろおろしているメイドの後ろから、年配の医者がゆっくりと私の前に立った。


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