第36話 投げられた剣
盗賊団のリーダーとその手下コロンブが、下衆な笑みを浮かべながら剣の矛先をジュールに向けた。
「へへ。痛い思いをしたくなければ大人しくしていてくださいよ、お姫様」
「くっ……」
勝ち誇ったような盗賊団のリーダーの態度に、ジュールは唇を噛み締めた。
剣を突きつけられたら、滅多なことは出来ない。
(こんな時に剣があれば、こんな奴らすぐに蹴散らせるのに……)
「ふふふ。さすがに剣の前では大きな口は叩けませんね。それでは、この建物から別の場所に移動しますので我々に大人しくついて来てください」
バルブが、ジュールを縛っていた縄を解こうと縄に手をかけた時だった。
突然建物の外が騒がしくなり、廊下をバタバタと走る足音と共に大勢の騎士たちが現れた。
ジュールは、騎士たちを見てすぐにそれがミア王国の王国騎士団だとわかった。
(なぜ、ミア王国の王国騎士団がこんなところに!)
「な、なぜここがわかったのですか。こんなに早く……」
「くそっ、こうなったら戦うしかない。コロンブ、他の手下たちを呼べ!!!」
騎士団に狼狽えるバルブの横で、盗賊団のリーダーがコロンブに叫んだ。
ピー!!!
コロンブが指笛を吹くと、どこからともなく他の手下たちがわらわらと集まってくる。
盗賊団と騎士団の睨み合いの中、先陣を切ったのは騎士団だった。
「かかれー!!!」
フランクの掛け声と共に、騎士団の団員たちが次々に盗賊団の手下たちと剣で交戦を始めた。
「ジュール! 俺たちがこいつらの相手をしている間にロザリー姫を助けろ!」
フランクがそう叫んだので、私はジュールがいつも使っている剣を持って急いでジュールの元に走った。
そして、ジュールの耳に口を近づけ小声でささやいた。
「ジュール王子、遅くなってごめんなさい。大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。しかし、なぜ君たちがここに?」
「詳しいことは後から話します。まず縄を解きますね」
私が剣を下に置き、ジュールの縄を解いている途中、再びフランクが私に向かって叫んだ。
「ジュール、後ろだ!!!」
はっとして後ろを振り向いた私を見下ろすようにして、コロンブが剣を構えている。
私は、慌てて置いてある剣に手を伸ばしたが、コロンブがその剣を蹴り上げた。
「あっ!」
「騎士団どもめ、くたばりやがれ!」
コロンブが私とジュールに斬りかかろうと剣を振り上げたその時、自力で縄を解いたジュールがフランクを呼んだ。
「フランク! 剣を投げろ!!!」
「へ!? ロザリー姫? い、いや、危ないだろ」
「そんなことを言っている場合か! 早くしろ!!!」
「わ、わかった!」
剣を投げろと言われ、一度は躊躇したフランクだったが、意を決して持っていたもう一本の剣を投げるとジュールは素早くそれを受け取り、斬りかかってきたコロンブの剣を受け止めた。
「な、何!? この姫、こんなに強かったのか!?」
コロンブが驚いて剣を持つ手を緩めた瞬間を、ジュールは見逃さなかった。
「はあ!!!!」
「うわあ!」
ジュールの剣がコロンブの剣を弾き飛ばし、コロンブの身体に剣が振り下ろされた。
(きゃあああ)
ジュールに守られるようにして後ろに立っていた私は、コロンブが斬られる瞬間を見ていられなかった。
咄嗟に目を閉じると、すぐにジュールのささやく声が聞こえた。
「大丈夫だ。斬ってはいない。気絶させただけだ」
「良かった……」
その場に座り込みそうになっている私を、ジュールは優しく支えてくれる。
そんな中、騎士団は圧倒的な力の差で盗賊団を制圧していた。




