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第33話 シヤン王国からの使者

 ミア王国、王国騎士団屯所。

団長室で書類整理をしている私の元には、宝石を盗まれたという国民の情報が毎日入ってきていた。

そのどれもが家人の留守を狙っての犯行のため、犯人の足取りを掴むことが困難だった。


「ジュール、少しいいか?」


「どうした、フランク?」


 屯所を離れられない私に代わって、国内の調査の指揮をとってくれているフランクが、足早に団長室に入ってきた。


「各所での聞き込みからの情報だ。国内至る所で宝石が盗まれているが、その多くの場所で同一人物と見られる男が目撃されているんだ」


「同一人物?」


「ああ。まだ確証はないが、目撃されている男の特徴が共通している。白髪まじりの短髪で細身の中年の男。そして、シヤン王国寄りの訛りが混じった話し方をしていたらしい」


 (シヤン王国で訛りがあるっていったら東部付近の山間部かしら……)


 シヤン王国の名前が出たことで、ミア王国だけでなくシヤン王国にも同じような被害が出ていないか心配になってしまう。


「それと、もう少し細かく調べてみたんだが、この男の特徴に当てはまる怪しい男がいるんだ。コロンブというシヤン王国出身の男で、何年か前にミア王国に出稼ぎに来ていたらしいんだが今は行方不明になっている」


「その男の行方も調べたほうがよさそうだな。今後も調査を頼む、フランク」


「はいよ。なあ、最近の俺、真面目すぎないか? はぁ、早くこの件を片付けてパーっと派手に遊びたいわ」


 フランクは、わざと大袈裟に大きなため息をつくと、片手を上にあげてひらひらと振りながら団長室を出ていった。


「根はすごく真面目なくせに」


 私は、出ていったフランクに聞こえないように小さな声でそう言って笑った。

真面目なところは、従兄弟だけあってやっぱりジュールに似ている。


「元気かなぁ、ジュール王子……」


 椅子から立ち上がり、窓からシヤン王国の方向を眺める。

いつになったら元の身体に戻れるんだろう。

いつになったらシヤン王国に帰れるんだろう。

故郷やジュールのことを考えると、少し感傷的になってしまった。


「今は騎士団の仕事に集中しないと!」


 私は自分にそう言い聞かせると、再び机に向かい書類整理を始めた。


***


 数日後。

相変わらず忙しく書類整理をしている私の元に、再びフランクがやってきた。


「ジュール。コロンブという男のことが少しわかったぞ。コロンブはミア王国で働くことをやめた後、シヤン王国へ帰ったらしい」


「そうなのか?」


「コロンブはシヤン王国へ戻ると、ある盗賊団に入ったようなんだ。その盗賊団はシヤン王国を拠点にしているらしいんだが、実際その盗賊団の拠点場所を知っている者はいない。コロンブとその盗賊団の行方を追いたいが、俺たちミア王国の人間が勝手にシヤン王国でそれを調べることは出来ないだろう」


「そうなると、シヤン王国に協力を求めるしかないな」


 (お父様に頼めばいいのかしら? またジュール王子に手紙を書こうかな)


 私がどうしたものかと考えていると、団長室をノックする音と団員の声が聞こえた。


「団長、シヤン王国より使いの者が見えております」


「えっ?」


 (シヤン王国から?)


 ちょうどシヤン王国に協力してもらおうと考えていたところにやってきた、シヤン王国からの使者。

何事かと、私とフランクは顔を見合わすのだった。

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