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第32話 盗賊団のアジト

 エメラルドの指輪を盗んだ男を追って、深い森の奥を進んでいくジュールとクッキー。

だんだんと道が細くなり、生い茂る草木を掻き分けながらけもの道を歩いていく。


「くっ、歩きづらくなってきたな」


 森の木々の隙間から見える太陽の光が、心なしか薄くなっているように感じる。

このまま日が落ちてしまうのはまずい。

ジュールがそう思いながら道無き道を行くと、突然草木が綺麗に切り取られたような広い場所が目の前に現れた。

そして、ジュールの目線の先には大きな荒屋のような建物が見える。

ジュールは、少し警戒をして草木の影からそれを見守ることにした。


「ここは……」


 こんな深い森の奥に不自然に立っている怪しい建物。

もしかしたら、ここは盗賊たちのアジトかもしれない。


「よくやったクッキー。えらいぞ」


 ジュールの隣に静かに座っているクッキーを撫でると、クッキーは嬉しそうに目を細めた。

ジュールは再び荒屋のような建物に目を移すと、その周りに人影がないかを確認した。

建物の周りは、特に人が見張っている気配はない。


「よし、中を調べてみるか」


 ジュールは、小さくつぶやきながら足を一歩踏み出したが、その足を思わず止めた。

不審な建物に潜入するには、今着ているスカートが少し長いと感じたのだ。

動きを良くするためにも、スカートの裾を少し短くしたほうがいいだろう。

乱暴なやり方だが、ジュールはスカートの裾をビリビリと破り始めた。


「これくらいでいいか」


 ジュールは、破ったスカートの切れ端を拾うとそれをクッキーの首に巻いてリボンのように結んだ。


「いいかクッキー、よく聞いてくれ。今から俺はあの建物を調べてくる。もしも俺が夜になっても戻らなかったら城に戻って誰かを連れてきてくれ」


「クゥ〜ン」


「大丈夫だ。じゃあ行ってくる」


 クッキーの顔を両手で挟んで優しく撫でると、ジュールは怪しい荒屋を調べるため静かにその場を離れた。



 ジュールは、物音を立てないように静かに荒屋に近づくと、入り口にある門から中を慎重に覗き込んだ。

すると、遠目に見ると石が崩れたようなボロボロの建物に見えた荒屋だが、近くで見ると貴族の屋敷のような立派な造りをしている。

周囲を見回し、人がいないことを確認するとジュールは門をくぐり、ゆっくりと建物の中に入っていった。


 (なんだ、この煌びやかな空間は……)


 建物の中に足を踏み入れたジュールは、目の前に現れた数々の宝石が飾られた空間に目を奪われた。

こんなに多くの宝石が、森の奥深くにあるのは異様な光景だった。


 (やはり、ここは盗賊団のアジトだったか)


 そう確信したジュールは、その空間を通り過ぎ、さらに奥の部屋へ続く廊下を慎重に進んでいった。

いくつかの空き部屋を通り過ぎると、どこからかボソボソという人の声が聞こえた気がして、ジュールは警戒をしてそちらに向かった。

人の声がはっきりとわかるくらいに聞こえてくると、ジュールはその会話に耳をすませた。


「親方、街中の古びた茶屋で年代物のエメラルドの指輪を盗んできました」


「ほう……なかなか立派な指輪じゃねーか。でかしたぞコロンブ。この調子で次も頼むぜ」


 (古びた茶屋、年代物のエメラルドの指輪、だと? あの時の男か!)


 茶屋の老婆の指輪を盗んだ男は、コロンブという名前らしい。

ジュールは、親方と呼ばれたこの盗賊団のリーダーと思われる男とコロンブの会話をさらに聞こうと息を潜めていた。

しかし、そんなジュールの後ろから誰かの手が静かに伸びていることに、ジュールは気づいていなかった。

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