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第31話 クッキーの追跡

 茶屋の外に出たジュールは、大人しくジュールの帰りを待っていたクッキーの頭を撫でた。


「待たせたな、クッキー。悪いがこの匂いを覚えてくれ」


 ジュールは、エメラルドの指輪を盗んだ男が落としていった白い手袋をクッキーの鼻先にかざした。


 クンクン


 クッキーは、手袋の匂いを嗅ぎ終わるとすぐに地面の匂いを嗅ぐようにして歩き出した。


「いいぞクッキー、その調子だ」


「バウ!」


 ジュールに褒められて嬉しそうに尻尾を振りながら、クッキーはどんどんどこかに向かって歩いていった。


 

 茶屋を出発してからどれくらいの時間が経ったのだろう。

あれから、街中を抜けて人通りの少ない郊外を進み、クッキーはさらに森の中に入っていった。

騎士団で森の中に入ることは多々あり、これくらいのことには慣れているが、なにせ自分は今ロザリーの姿である。

散歩用に少し軽装はしているが、深い森の中を歩いたり山を登ったりするには無理がある。


「クッキー、本当にこんなところまで匂いがするのか?」


「バウ!!!」


「そうか……わかった。お前を信じるよ」


 ここで追跡を打ち切ったら、男の行方は永久にわからなくなるかもしれない。

茶屋の老婆のためにも必ず男を捕まえなければ……。

ジュールはそう心に誓い、クッキーの後をひたすらついていった。


***


 茶屋を出た中年の男は、盗んだばかりのエメラルドの指輪を隠した上着の内ポケットを気にしながら、周囲をキョロキョロと見回した。


「誰もいねーな……っと、くそ、誰か来やがった」


 男は、大型の犬を連れた女性が茶屋のほうに近づいてくるのを確認し、慌ててその場から足早に立ち去った。

向かった先は、自分が入っている盗賊団がある場所。

シヤン王国東部の、鬱蒼とした森の奥にある大きな荒屋だ。


「それにしても、あんな薄汚い茶屋にこんな宝石があるなんてな。店主も留守だったし、チョロいもんだぜ。へへ」


 最近、盗賊団と宝石商が手を組み、盗賊団が盗んできた宝石を宝石商が高価な値段で貴族に売りつけるということを始めたのだ。

盗みはシヤン王国国内だけには留まらず、隣国のミア王国まで広い範囲で行われている。

価値があるのかないのかわからないが、とにかく宝石を集めて来いという上の言いつけで、下っ端の盗賊たちはそこら中の宝石を探し回っている。

荒屋が目の前に見えてきたので、男は上着の内ポケットからエメラルドの指輪を取り出し、それをもう一度眺めた。


「ひひひ。なかなか見事な指輪なんじゃないか、これ? 親方もきっと喜んでくれるだろう」


 男は嬉しそうにニヤニヤ笑うと、浮かれたような軽い足取りで荒屋の中に入っていった。


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