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第30話 茶屋から出てきた男

 ジュールは、ロザリーから来た手紙の返事を険しい顔をしながら読み進めていた。

メレーヌの屋敷で見たエメラルドが、ミア王国の山の麓にある宿から盗まれた物だというのだ。

宿の主人の話やフランクから聞いた話から、それは同じエメラルドに間違いないだろうとロザリーは考えているらしい。


「ふむ。今はミア王国全体を調査中、か。宝石が高価な物かどうかは関係なく盗み、それをどこかに流しているとしたら裏に何か大きな組織があるのは間違いない。メレーヌの屋敷に出入りしている宝石商を調べる必要があるな……」


 朝食後、部屋に運んでもらった紅茶を飲みながら、ジュールはどうしたものかと考え込んだ。


「バウ! バウ!」


 そんなジュールの横で、クッキーが朝の散歩を催促するように咥えてきたリードを床に落とすと、元気に吠え始めた。


「ああ。散歩の時間か。考え込んでいるより、気分転換したほうが何か思いつくかもしれないな。行こう、クッキー」


「バウ!!!」


 ジュールは、嬉しそうに尻尾を振るクッキーを撫でると気持ちを切り替えて朝の散歩に出掛けた。



 いつものように大きな公園をのんびりと散歩した後、ジュールは先日茶屋で買った紅茶の茶葉が残り少なくなっていることを思い出した。


「帰りに茶屋に寄ってみるか……。クッキー、今日は少し寄り道をしてから帰ろう」


「バウ!」


 散歩コースから外れると、だんだんと人が多く歩く街並みが現れてきた。

見慣れない景色に、クッキーは興味津々で街中をぐいぐいと進んでいく。

しばらく歩くと、あの古びた茶屋の看板が見えたのでジュールはまだ先を行こうとするクッキーに声をかけた。


「止まれ、クッキー。目的地に到着だ」


 ジュールの言葉に素直に従い、クッキーはその場にきちんと座った。

そんなクッキーを撫でてあげていると、茶屋の中から一人の男が勢いよく飛び出し、キョロキョロと周りを気にしながら早歩きでその場を後にする様子が目に入った。


「なんなんだ、あの男。挙動不審じゃないか。怪しい」


 ジュールは嫌な予感がして、クッキーにその場にいるように言ってから慎重に茶屋の中に入った。

すると、レジカウンターの後ろのガラスのショーケースが割られ、中に飾ってあったエメラルドの指輪が無くなっている。

茶屋の老婆はその場にはおらず、老婆が留守をしているのを見計らった犯行らしい。


「あの男、エメラルドの指輪を盗んでいたのか!」


 ジュールが無惨に割られたショーケースを見て立ち尽くしていると、留守から帰ってきた老婆が店の中に入ってきた。


「あら? ロザリー様、こんなに朝早くから来ていただけたのですね……ま、まあ! なんて事でしょう! エ、エメラルドの指輪が……」


 老婆は、立ち尽くしているジュールの後ろに見える割られたショーケースと無くなっているエメラルドの指輪に気づくと、その場にへなへなと座り込んでしまった。


「私がこの店の近くに来た時、不審な男が店から出てくるのを見たんです。それで何か嫌な予感がして店の中に入ったらこの有様で」


 ジュールはそう言うと、老婆をゆっくりと立たせ、近くにあった椅子に座らせた。


「あれは母からもらった大事な指輪なのに……」


 悔しそうに俯く老婆の背を優しく撫でてあげていたジュールは、散らばったガラスの破片の中に何かが落ちているのを見つけた。

近寄ってそれを摘み上げると、それは片方しかない白い手袋だった。

きっと犯行の時に使ったものに違いない。

これは、あの男を追う手掛かりになるかもしれない。

そう思ったジュールは、老婆にそのことを伝えると男を追うために店の外に出た。

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