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第3話 鉄仮面とダンス

 集まっていた令嬢たちの中にいた男性。

短髪でサラサラの黒髪にどこか色気のある目元、スーッと通った鼻筋と形の良い唇。

綺麗に整えられた眉がより一層その男性の美しい顔を引き立てている。

上品で落ち着いた色合いの宮廷服に身を包んだ男性は、私を見ると優雅な足取りでこちらに向かって歩いてきた。

そして私の前で立ち止まると、その場に跪き私の手を取った。


「お待ちしておりました、ロザリー姫。初めてお目にかかります。私、ミア王国第二王子のジュールと申します」


 (!!!)


 舞踏会に来たのも初めてだけど、こんなふうに男性に跪かれて手を握られるなんて……。

緊張して少し震えてしまっているのが伝わっているかもしれない。

でもここで無礼な振る舞いをして後から笑い物にされるのだけはごめんだ。

私はそっと胸に手を当てて気持ちを落ち着かせ、それからドレスを少しつまんで軽くお辞儀をした。


「ロザリーと申します。ジュール様、今日はお招きいただきありがとうございます」


 日頃からマナーの勉強をしていて良かった〜。

この時ばかりは、口うるさいマナーの先生に感謝したい気分だった。

しかし、ジュールはそんな私の振る舞いには興味がないような無表情な顔で立ち上がり、事務的に言った。


「では、あちらに参りましょうか」


「はい……」


 (あ、あれ? 緊張してたから気づかなかったけど、なんかあまり歓迎されてない? この人、私のほうを全く見ないし……)


 鉄の鎧の人形のように無表情な顔で先を歩くジュールの後ろ姿を見ながら、私はとんでもない所に来てしまった気がしていた。



 ジュールにリードされ、そつがなくダンスは続いている。

ステップ、ステップ、ターン。

ステップ、ステップ、ターン……。

機械的に踊らされてる感じがして、私は何度もジュールのほうを見たけれど、ジュールは一度も私の顔を見なかった。

そこで私はまた気づいてしまった。


 (あー、きっと私がジュール王子のことを好きにならないように素っ気ない態度を取っているに違いないわ。ジュール王子、モテそうだもの)


 見渡す会場の至る所から、令嬢たちの熱い視線を感じる。

きっとジュールに見惚れているか、私に嫉妬しているかどちらかだろう。

でも、少しくらい愛想良くしてくれてもいいのに……。

私が鉄仮面のようなジュールの横顔から目を逸らすと、ちょうどダンスが終わった。

その途端、会場のあちらこちらから拍手が響き渡った。

ジュールはそれに応えるように胸に手を当ててお辞儀をするので、私も慌ててお辞儀をした。


「ロザリー姫、この後はメイドのリナがご案内しますので私はこれで」


「あ、は、はい」


 私の耳元でジュールは低音な小声でそう言うと、私に少しお辞儀をしてその場を去っていった。

すると、ジュールに入れ替わるようにリナが私の元にすぐにやってきた。


「ロザリー様、少し休憩なさいますか? 飲み物をお持ちいたしましょうか?」


「ううん、いいわ。私、もう国に帰るわ」


 (なんかすごく疲れちゃった……)


 私の言葉にリナはあたふたしているようだけれど、歓迎されていないのにいつまでもここにいるのはキツい。

私は、リナに部屋の入り口まで送ってもらい舞踏会の会場から退出したのだった。


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