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第28話 騎士の勘

「この宝石は、うちに出入りしている宝石商のところにミア王国から入ってきた一点物のエメラルドなんですの。それはもう貴重な宝石ということで、お父様にとってもお高いお買い物だったんですのよ」


 ジュールがエメラルドを選んでしまったことで、メレーヌは作戦を変更してエメラルドの自慢を始めた。


「さすがグロンダン公爵ですわ!」


「メレーヌ様の目利きとグロンダン公爵の財力。素晴らしいですわね」

 

 メレーヌの自慢が始まると、周りの取り巻きたちが一斉にメレーヌを持ち上げる。

ジュールは、そんな事には全く動じずエメラルドを見つめていた。

なんだかとても既視感がある。

石のカットの仕方が星形になっており、前にどこかで見たような気がしてならない。


 (茶屋の老婆の持っているエメラルドとは明らかにカットの仕方が違う。これは独特なものだ……。たぶん、ミア王国のみで作られた宝石……)


 顎に手を当て、エメラルドを見ながら考え込んでいたジュールは、はっとして顔を上げた。


「思い出した。これと同じ宝石がミア王国中で配られたと聞いたことがある。国から功労者へ贈られた記念品です。今から五十年ほど前の話ですが」


「えええ! き、記念品、ですって!?」


「ええ」


「そんなの出鱈目よ!!! そ、そもそも、なんでロザリー様がそんなことを知ってらっしゃるの?」


 高額で購入した宝石が、実は記念品で配られた物だと聞き、メレーヌは食いつくような剣幕でジュールを睨みつけた。


「祖父からその経緯を聞いたことがあるんです。嘘だとお思いでしたら、ミア王国の宝石商に問い合わせてみるといいですよ。よろしければ私の知り合いの宝石商を紹介いたしましょうか?」


 メレーヌが睨んでいるのも気にせず、ジュールは冷静な態度を崩さない。

メレーヌは、周りの取り巻きたちがじっと自分を見ていることに気づくと、慌てて作り笑いをした。


「ほほほ。ご心配には及びませんわ。ミア王国の宝石商とも取引がありますので」


「それは良かった。しかし、こちらに出入りしているという宝石商。安い宝石を高額で売りつけるとは、もう手を切ったほうがよいかと思いますよ」


「ぐっ、ぐぐ……」


 メレーヌは、悔しさのあまり唇を噛み締めた。

その後、不穏な空気の中行われたお茶会は、メレーヌの体調不良を原因に早々に解散となったのだった。


 (それにしても、どうして今こんな物が出回っているんだ……。 何か嫌な予感がする……)


 帰りの馬車の中、ジュールは騎士の勘のようなざわざわとした気持ちが湧き上がるのを感じていた。

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