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第22話 メレーヌのお茶会

 シヤン王国、グロンダン公爵家、中庭。

ジュールは、メレーヌからお茶会に招待されていた。

かつての学友を集めて、思い出話などを語ろうという会らしい。

この時ジュールは何も知らなかったが、ジュール以外の招待客はかつてのメレーヌの取り巻きの令嬢たちである。

先日ミア王国で行われた『犬の祭典』で、ロザリーの愛犬クッキーが特別賞を受賞したが、メレーヌの愛犬レイラは何も賞を取ることが出来なかった。

その腹いせに、ロザリーに恥をかかせようとメレーヌはこのお茶会を仕組んだのだ。

当然、取り巻きたちもこのことを理解している。

中庭で優雅に始まったお茶会だが、ずっとメレーヌの自慢話とそれを称賛する取り巻きたちの声が飛び交うだけのつまらないお茶会であった。

ジュールは、早くこのお茶会が終わればいいと思いながら、出された紅茶を静かに飲んでいた。

すると、次にメレーヌは紅茶の自慢話を始めた。


「今、皆さんに提供している紅茶。こちらはミア王国で長年愛されている伝統的な紅茶ですの。先日、私がミア王国へ行った際に執事に購入させたのですけど、王宮御用達なのですって」


 メレーヌが得意気にそう言うと、取り巻きたちから次々に声があがった。


「まあ! それは素晴らしいですわね。さすがメレーヌ様。お目が高い!」


「上品な香りだと思っていましたの! ミア王国王宮御用達の紅茶を頂けるなんて光栄ですわ!」


 次々あがる称賛の声に、メレーヌは気分を良くして満面の笑みを浮かべている。

その顔を見ながら、ジュールはこの紅茶がミア王国王宮御用達の紅茶ではないことに気がついていた。


 (これが王宮御用達の紅茶だと? 笑わせる。匂いも風味も全くの別物だ。しかし、観光客に嘘の情報を流して物を売るとは……。元の身体に戻ったら、少し調べてみる必要があるな)


 カップに入った紅茶を見つめながらジュールが考え事をしていると、メレーヌがロザリーの名前を呼んだ。


「あら? ロザリー様はこの紅茶がお気に召さなかったかしら? あ、そういえば、学園時代にもこんなやり取りがありましたわね」


「ん?」


 ジュールが不審そうな顔をすると、メレーヌは扇子で口を隠しながら話し始めた。


「私のお父様に近隣の国から贈られた最高級の紅茶を、ロザリー様は美味しくないとおっしゃられて。なんでも、街中の小さな茶屋の紅茶がお気に入りなのでしたわよね? ほほほ。ミア王国王宮御用達の紅茶がお口に合わないのは当然でしたのに、配慮が足りず申し訳ございませんでした」


 メレーヌがいかにも楽しそうにそう言うと、周りの取り巻きたちも扇子で口を隠しながら笑っている。

そんな様子を、ジュールは呆れながら観察した後、静かな口調で語り始めた。


「ミア王国王宮御用達の紅茶には、三百年の歴史がある。そして、その茶葉は一般には流通していない。専属の農園で温度や湿度、さらには土にもこだわり栽培している。こうして収穫された茶葉の選別、焙煎、ブレンドなどは目利きの茶師によって行われ、王宮に献上される。よって、今ここで提供されている紅茶は王宮御用達の紅茶ではない」


 ジュールが滑らかな口調で王宮御用達の紅茶の説明をする中、メレーヌとその取り巻きたちはポカンと口を開けたままジュールを見つめていた。


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