第13話 かつての学友
「あら。ロザリー様ではありませんか。ご機嫌よう……ああ、記憶喪失なのでしたわね。ふふふ」
ジュールがその声に後ろを振り向くと、そこにはレースをふんだんに使った日傘をさし、豪華なドレスを身にまとった女性が立っていた。
「君は誰だ?」
その女性の傲慢な態度が引っかかり、ジュールが女性にそう尋ねるとその女性はさらに語気を強めてジュールに言った。
「まあ、嫌だわ。その男性のような話し方。それにしても、本当に私のことも覚えていないだなんて……。私よりも先にミア王国のジュール様とダンスを踊ったりするからこんなことになるのよ。滑稽だわ、ふふふ」
(なんなんだ、この無礼な女は。これが一国の姫に対する態度か?)
一方的にロザリーのことを馬鹿にしたような態度を取る女性に、ジュールはますます不信感を募らせた。
じぃっとジュールがその女性を睨みつけると、女性は少し焦った様子で早口で話し始めた。
「しょうがないわね。教えてさしあげるわ。私は、メレーヌ・グロンダン。グロンダン公爵家の可憐な令嬢。そしてロザリー様とはかつてのご学友ですわ」
(学友? その割に態度が大きいな)
「自己紹介どうも。ところで、貴方はなぜここにいるんだ?」
「飼い犬のレイラのお散歩をするために執事にここまで連れて来てもらったのですわ。レイラは見た目も美しいドーベルマン。私の自慢の子ですわ」
「なんだって? あのドーベルマンは貴方の犬なのか? はっ! クッキーとマフィンが!」
ジュールがクッキーとマフィンのほうを慌てて見ると、そこにはマリーと一緒に遊んでいる三匹の犬たちがいた。
激しく吠えていたドーベルマンのレイラも、すっかりマリーに懐いている。
「ほう。確かにいい護衛だ」
ジュールがマリーと三匹の犬たちに近づくと、マリーの投げるボールを追いかける犬たちの元気な姿があった。
「まあ! 下品な! レイラ、帰るわよ、こちらにいらっしゃい!」
ジュールの後ろからこちらにやって来たメレーヌは、ボール投げで遊んでいるレイラを見ると途端に嫌な顔をした。
「楽しく遊んでいるじゃないか。もう少し遊ばせてやったらどうなんだ?」
「冗談じゃありませんわ! レイラは来月ミア王国で開かれる催しに出なくてはいけないのに。変な遊びを教えないでちょうだい」
(何? ミア王国だと?)
「今、ミア王国と言ったか?」
「ええ。ミア王国で開かれる犬の祭典に出場しますの。美しさを競うのですけど……。ふふふ、ロザリー様の愛犬も出場いたしますか? あー、そうだわ。招待状がないと出られないのだったわ。残念ですわね、おほほ」
(くっ、招待状が欲しいのか。ミア王国に行く口実になると思ったのに……)
勝ち誇ったようなメレーヌの言葉に、ジュールは悔しそうに唇を噛んだ。




