第11話 ロザリーへの手紙
フランクと街を歩いてミア王国のことをいろいろと教えてもらった私は、城に戻るとメイドのリナを部屋に呼びつけた。
リナは、私がこのミア王国の舞踏会に来た時にお世話になったメイドだ。
トントン
「ジュール様、リナです。お呼びでしょうか?」
「ああ。来てもらってすまない」
リナも私が記憶喪失だということを周りから聞いているらしく、突然の呼び出しにびっくりしているようだ。
「突然ですまないが、シヤン王国に手紙を出して欲しい」
「えっ? 私がですか?」
「シヤン王国のメイドのクララとリナが知り合いだと聞いてね。クララ宛に、俺が今から言うことを手紙に書いて送ってくれないか?」
私がそう言うと、リナはますますびっくりした顔で答えた。
「私とクララが知り合いだなんてどちらで聞かれたのですか? この城では知っている者はいないと思うのですが……」
リナが不審そうに私の顔を見て顔をしかめたので、私は慌てて言い訳をした。
「舞踏会でダンスを踊っている時にロザリー姫から聞いたんだ」
すると、リナはやっと納得したようにうなづいた。
「ああ。あの時ですね! でも、舞踏会の時のことは覚えていらっしゃるのですね」
(う〜。嘘をつくのって難しいわ)
「そ、そうなんだ。なぜか舞踏会の時のことだけは鮮明に覚えているんだ……」
「まあ! きっとロザリー様が運命のお相手なのかもしれませんね!」
(はあ? そんなわけないでしょ!)
恋愛話が好きなのか、リナは一人で嬉しそうに盛り上がっている。
私は、そのノリについていけずにしばらくリナの妄想に付き合っていた。
「それで、どのような内容の手紙を書けばよろしいのでしょうか?」
ひとしきり楽しそうに恋愛話を語った後、リナはやっと本題のことを思い出したようだ。
「それなんだが、この国では毎月動物と触れ合える催しが開かれると聞いてね。ぜひ、ロザリー姫をその催しに招待したいんだ。これも舞踏会の時に教えてもらったんだが、ロザリー姫はゴールデン・レトリバーのクッキーという名前の犬を飼っているそうでね。あんな事故の償いも兼ねて、彼女を招待したいと思っている」
私が手紙に書いて欲しい内容を説明すると、リナは感激したように私を見た。
「まあ! まあ! なんて慈悲深い! わかりました。ジュール様の思い、手紙に書かせていただきます」
リナはそう言うと、「絶対に来てもらうように書かなくては」とか「ロザリー様には可愛らしい便箋がいいかしら」などとつぶやきながらウキウキと部屋を出ていった。
「これでよし! あとはクララが私になっているジュール王子をなんとかミア王国に連れて来てくれればいいのだけど……」
「ミャ〜」
今後のことを考えている私の膝の上に、黒猫のカシスが甘えながら乗ってくる。
今では毎日の日課のようになっている。
「カシスにもクッキーを紹介するからね!」
「ミャウ!」
撫でられて気持ちよさそうにしているカシスは、まるで返事をするかのように私に向かって可愛らしく鳴いた。




