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第10話 笑顔と思いつき

 ミア王国ジュールの部屋。

フランクから街を案内してやると言われた私は、やむを得ず騎士団の制服に着替えた。

やはりジュールは令嬢たちにモテるだけあって、ビシッとした制服がよく似合う。


「くっ……認めたくないけどカッコイイわね。それに本当に手足が長い!」


 鏡の前でくるっと一回転してジュールの姿を眺める。

ダンスのエスコートをしてくれたジュールの鉄仮面のような顔を思い出して、私は思いっきり笑ってみた。


「あはは。笑うとこんな顔なんだー! 可愛いじゃない。いつも笑顔でいればいいのに」


 誰も知らない鉄仮面の秘密を手に入れたようで、なんだか得意気な気分になる。


「おーい、ジュール。まだか?」


 部屋の外で待っているフランクは、まだ部屋から出てこないジュールが気になり声をかけた。


「すまない。今行く」


 私は、鏡でもう一度ジュールの笑顔を見てから急いで部屋の外に出た。


***


 ミア王国の街をフランクと二人並んで歩いていると、街の至る所から声をかけられた。


「団長様〜! 副団長様〜!」


「きゃあ! ジュール王子とフランク様よ!

素敵〜!」


 私は、声が聞こえるたびにお辞儀をしていたがフランクにそれを止められた。


「おい。いちいちお辞儀をするな。お前は王国騎士団の団長なんだぞ。……ったく。本当に全部忘れているんだな。いいか、俺の真似をしろ」


 フランクは、声をかけられたほうに軽く手を上げてすましている。

私もフランクの真似をして手を軽く上げてみた。


「こ、これでいいのか?」


「ちょっとぎこちないがだんだん慣れてくるだろ。堂々としていてくれよ、団長様」


「ううっ……」


 重くのしかかってくる、団長という言葉……。

自分が王国騎士団を率いていくなんて考えたくもない。

先が思いやられて暗い気持ちで歩いていた私だったが、すれ違う多くの人々が犬や猫などを連れていることに気がついた。

人々は、ペットと散歩したり、ペット同伴が出来るカフェでお茶を楽しんだりしている。


「フランク、この国はペットを飼っている人が多いんだな」


「ミア王国は昔から動物を大事にする国だからな。人口の八割くらいは動物を飼っているんじゃないか?」


「八割も? それはすごいな」


「ああ。毎月動物と触れ合える催しを開いていて、他の国からもたくさんの人が訪れているんだ」


 (他の国からも?)


 私は、フランクの話からいいことを思いついた。

シヤン王国で私に入れ替わっているジュールと、その催し物でなら会えるのではないか。

きっとジュールも、身体が入れ替わって困っているはずだ。

一度ちゃんとこのことについてジュールと話をしなくてはいけない。

それにクッキーにも会いたいし!

ほんの少しでも元の自分に戻れる希望が持てた気がして、私はそっと空を見上げた。


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