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6,試験2日目

 翌日、指定された時間に沙織は大学に行く。

大学奥のハンモック施設のゲートは施錠されており、高い壁と共に人を拒む。

 入り口ゲートにあるモニター前に、昨日、一緒にパイロット試験を受けていた受験者の女性が、正面にあるUSBの差し口に、自分のUSBを挿して、入場しようとしている。

 彼女がUSBを挿すと目の前のモニターに「アテンション」表示が出て、続いてモニターにインフォメーションが表示され、不合格者の番号が表示される。

そこに彼女の番号があるようで、当然、扉が開かない。

 彼女は自分の番号のあるモニターを怒りながら見つめ、

「門前払い?事前に連絡くれればいいのに。たった50人程度なんだから、わざわざ時間指定して呼び出して通達するなんて、悪趣味すぎる」

 と毒づき、立ち去っていく。

確かにそうだ。なんの意味があるのだろうと沙織も思った。


 そして沙織の番。恐る恐る入り口にあるモニター下にUSB差し口に自分のUSBステックを差す。

 画面に自分の顔と名前が表示されて、正面にあるカメラが自分の顔を映し、目の網膜検査が始まる。

「なるほど。改めてセキュリティチェックのアップグレードのためか」

 そしてモニターにOKの文字が表示されて、ゲートが開く。

「審査合格。通過・・・よっしゃー」

 ハラハラドキドキ感で、喜びは増す事はわかった。

去った不合格の彼女には悪いけど、嬉しくなり小さくガッツポーズをする沙織。



 中に入るとキラキラドーム(ハンモックメインドーム)の脇にある建物に行けと、案内がメールで送られてきた。

「キラキラドームの隣・・・病院?」

 併設されているのは、白い四角いビル。入り口を入るとやはり病院のような構造で、表示板に各ラボの名前が据付けられている。

そして迎えに出てきたスタッフに案内されて更衣室へ。

 女性用の更衣室のロッカーには『沙織 井上』の名前が貼り付けられ、そこに入っている検査患者用の服に着替える。

「本日は精密な肉体検査をします。人間ドックのようなものです」

と着替えた沙織をスタッフは別室に案内する。

 その部屋はもう、昨日の一緒に試験を受けて合格した飛行士訓練生試験の女性たちがいた。

 沙織を入れて5人。アジア3名(日本、中国、韓国)他に、白人2名(イギリス、ロシアだろうと思われる)

「5人の方が揃いましたので、検査室の方にお進みください」

 沙織の横に並ぶアジア人、背が高い。障害物サーキットで抜いた時、睨みつけてきた女性だ。多分、中国人だろう。

「日本人か?」

「そうです」

「日本人は猿だな」

 多分、自分が抜かれた登坂障害の素早さを言っているのだとわかる。

沙織も何か言い返そうかと思ったが、相手が怒気を含んでいる事がわかったので、まだテストの最中。ゆえに言い争うと余計な厄介ごとが起きそうなので、 ここは軽く微笑んで、無視した。


 今日は身体の内部も含む、血液検査、心電図、全体スキャンと人間ドック同様の精密検査。

「すごいな。徹底的に調べて選別する気なのか?」

 肺活量、歯科、骨格のデーター取りも含まれた検査であるようだ。

「あらゆることが、調査される。なんかモルモットにされる前の準備みたい」


 午前中いっぱい検査されて、沙織たちはロッカーに戻る。

ロッカーにはベージュのツナギのハンモック制服(半袖のツナギ)があり、それに着替える。

胸にワッペンが貼られ、下に英語で名前が書いてある

「これが制服か・・・そしてこれがハンモックの宇宙マークなのね」

 ユニホームにつけるワッペンは、どこの国でも作る。宇宙局のワッペンにはどこも必ず宇宙と関係しているデザインを入れる。みんなそのワッペンに誇りにして貼るのだ。

 ここのハンモック・ワッペンは月と地球にハンモックが掛かっているデザインだ。パンフレットにあった表紙の写真をデフォルメしてコンパクトにしてある図柄である。

 そしてワッペンには赤のフチどりがある。多分、これはパイロットの色だろう。




 着替えるとスタッフに案内されて、ブリーフィングルームに連れて行かれる。ブリーフィングルームには、男性合格者たちが到着しており、男子が15人いる。女性が5人なので、合格者が20人であったことがわかった。

「お、レイがいる。やはり残ったか。」

 一瞬、隣に行こうかなと思ったが、もうライバルだ。馴れ合いはいけない。自分に厳しくしなけりゃいけない。

 レイも一瞥したが挨拶もないから、そういう気持ちなんだろう。

「これからブリーフィングになります」

 と、スタップに言われ、近くの左右3人がけの4列あるうちの2列目右デスクにつき、座る沙織。

 するとその横の席にラテン系の男がすわり、話しかけてくる。

「日本人か?」

「ええそうです。

「ケケ・パウロ 、ブラジルだ。よろしく頼む」

 大きい体格をした、陽気に微笑むケケという男性と握手をする沙織。


 初対面の場合、まず最初に相手の国籍を知りたがる。ステレオタイプは正確ではないが、その国にある習慣、文化などで、おおよそのイメージを掴みたいからである。

「ブラジルには日本人がいっぱいいる。日本人を助けろと言われている。何かあったら、任せろ。なんでも言ってくれ」

 結構多いヒーロータイプか?どうも小柄な日本人の沙織には『守ろう』とするヒーロータイプが近寄ってくる気がする。

「それで今日は何か用事あるか?デートしないか?」

 結局それ?

さすが、ブラジル。ラテン系。カリオカ。


 ブリーフィングルームにフランシスが入ってくる。お辞儀をして話し出す。 

「合格おめでとうございます。ここまで進んで頂いて、ありがとうございます。いい人材を選出できたと喜んでおります。皆様には、これから数日かけて適性検査を行いますので、もうしばらくお付き合いください」

 すると椅子の沙織の後ろに座った男性が手を挙げて質問する

「どうぞ、ジン・クライン」

 175cmぐらいの白人。苗字がクラインというとイスラエル系か?

「我々は残った。この人数で、予備も含めて、もうこれで合格と考えていいのだろうか?」

「いえ、まだ続きます。最終日を終えるまで、毎日の検査や試験で、こちらの求めるもの達しなければ、不合格とします。・・・たとえそれが全員不合格となっても続けられ、そうなった場合は、また募集を開始します。・・・我々はボランティアではないので、基準に満たない者を育成するつもりはありません。最高のポテンシャルを持った者に、最高のカリキュラムで育成する。それが我が社の宇宙ビジネスです。」

 話を聞いて、いや、ゼロはないだろうけど、20人ではまだ多いということか。これから実践的な訓練を受けさせて、肉体、精神、感性などを調べて選ぶ算段と見ていい。と判断した。

 と、いうことは、他の宇宙機関と同じように、10人程度で訓練をしていくのが効率がいい。訓練しながら、あと半分程度を削るつもりということだろう。と沙織は認識した。

 フランシスの説明は続く。


「宇宙ビジネスに、民間企業が参入している時代です。技術の進歩と共に宇宙開発も活発化していくと思われます。その中で最重要なのはパイロット。宇宙飛行士育成等には莫大なコストをかけて、育成していく事が大事になります。しかしその経費と育成時間のことを考えると宇宙飛行士の大量の採用は難しい状況です。過去の宇宙飛行士選抜試験を見ると、1回の採用者は多くて10名。それ以上になると、個々の訓練時間の確保が難しくなるからです」

 ここでフランシスが合図をすると、上から薄い80インチぐらいあるモニターが降りて来る。

「たった10人ですが、そこに毎回3000人以上が集まります。倍率でいうと100倍超えは当たり前の状態です。みなんさんもご存知のように宇宙飛行士はとても人気のある仕事なのです。ちなみに今回の宇宙飛行士の採用募集状況でいうと、応募総数4万件。膨大な数でした。そこから3ヶ月かけて調査し選別し、昨日、選ばれた300人にお集まりいただきました。・・・そして本日20人にきていただき、この選ばれた20人で、厳選なる訓練と審査を行なっていきます。今日は個別に身体調査がおもでしたが、明日より訓練を開始させていただいます」

 フランシスは見回し 説明を続ける。

「他に質問の方?・・・では、続きを始めます」


 沙織は「ビジネスか・・・当然と言えば当然なんだけど・・・やはり、こいつの言い方がどうも気に食わない。私たちは命をかけて挑戦する気持ちが第一優先なのだが、彼からリスペクトを感じない。何か違うもので動いているのはわかるが、なぜ、わざとこう言う言い方をする作為的な物を感じる」

 とフランシスの説明を聞きながら何かモヤモヤしたものを感じる。




 降りきったモニターに『ハンモック・プロジェクト』の文字が出てくる。

「今までの宇宙開発というのは、経験者を主軸に、その人間を基準でプロジェクトを組み、作成していました。主にアメリカとロシアの経験者が、『どう言う結果で成功とする』のかを設定し、実行するのが今までのプロジェクトのやり方です。・・・しかしCPUやAIの進歩などで未来が変わっていく。速い勢いで、出来ることが増えていく時代です。今、やっていることが数時間後には時代遅れになる可能性があるのです。それならば新しいシステムを取り込み、更新していける柔軟なプロジェクトが必要だという事。絶えず最先端を取り入れ、次にできることを模索して変化するシンキングツリー的なプロジェクトが理想になります。・・・しかし無選別にあれもこれも拡張した場合、把握する限界が存在するので、収拾がつかなくならないように枠組みを決めました」


 モニターに映る宇宙生活。モニターに映しられた動画は、宇宙に浮かぶ球体の船体。

 球体の中は、居住地区。10家族程度の集合住宅。

各家が立ち並び、居住する家族の1日をピックアップした映像が流される。

「我々が目指すハンモック計画とは『コロニー作るための計画』ということです・・・宇宙開発に伴う、巨大建造物や工場、限られた地球上の土地ではなくなく、限りない空間に増殖している生活環境。それを際限なく連結し、コロニーとして形成できる集合住宅&施設。並びに工場や農場までを一体化する巨大な町を作り上げる構想です」

 画面に映る住居からカメラが引いていくと、宇宙に浮かぶ要塞都市のような映像になる。


「コロニーにとって何が大事か?人が住むのはもちろんですが、人がそのコロニーに訪れることが一番大事なことなんです。・・・コロニーへの訪問。我々は集客と考えています。人が訪れてくれるのは、その町が独自の文化や産業を持っていることが条件と考えています」

 モニターが面に、イベントが開かれ、スポーツ、ライブなどの観客動員した映像が流れる。

「これが出来るからそこに住みたい。これがあるから味わってみたい体験したい。それらを求める人たちが憧れて宇宙にくる。これがコロニーの魅力になって行くのです。・・・宇宙に住めれば、それで素晴らしいことですが、数年も経てば宇宙に住めてあたりまえになる。その時、魅力になる物を持たぬコロニーは人口の増加はなしえません。・・・初期段階はどこのコロニーも宇宙観光で楽しめる。だがそこの場所が発展するには、特色が必要になって来るのです」

 なかなかフランシスの説明は、魅了ある話し方で上手い。専門用語を使わず、誰が聞いても理解しやすい。


「・・・目標はわかってもらえたと思います。ではまず第一にやららなくてはならないこと。地球であっても宇宙であっても、まず動力が必要です。それを生み出すエネルギー機械。発電システムの建設。これが真っ先に取り掛かる作業になります」

 モニターの映像が変わる。

映像は建設地区を映す。宇宙区間では宇宙服着た作業員が働く。無酸素溶接機で建物の土台を溶接していく。

 組み上がると、太陽を向き発電が始まった映像が流れる。

「・・・まずは太陽光発電。ソーラーパネルの建設。続いて地球ではまだ実用されてない気体を封印したカプセルに電極をつけ、熱いと冷たいの寒暖差、移動型発電システムが稼働させる」

 映像画面は、さっきと逆のコロニーの入り口の方に進み、宇宙空間から別の入り口に入る。中に入ると広大に立ち並ぶビル群が現れる。


 映像はその一つのビルの中入る。そこは一面、緑に覆われた農業プラントが広がっており、タネ植え、促進、受粉、果実という流れを行なう映像になる。「コロニーを豊かにするのは何か?それは食です。宇宙空間での自給地区。ハンモックが快適に宇宙宿泊できるためには、その時に供給できる食の豊かさになってきます。地球から持ってくるにはコストがかかり、種類の品目数に限りがあります。ならば宇宙で作り提供できたら?第一次産業ができるコロニー建築を同時に開始します」

 モニター画面に『食べる主食、米、小麦粉、とうもろこし・・・』他が円グラフで表示される。

「必要条件で、水、太陽、土地。これを人工的につくります。水はH2O、太陽はLED、土地は農業ブラントビル。これらは地上でも作られている作成方法なので技術的なノウハウはもう持ってます」

 画面に理学部、工学部、医学部、歯学部、薬学部、農学部等の自然科学系の協賛する専門家の顔写真が出てくる。

「お」っと座っている試験生の数人が反応する。

「ここに各専門家に顧問になってももらい、リモート作成を開始すます」

 専門家の名前をみんな知っているようだが、沙織は知らなかった。

「そういえば訓練中は外部と連絡を取ってなく、訓練に没頭していたので世間知らずの日々だった」

と思い出す。

 周りを見回す沙織。熱心に聞いている試験生を見て、

「本当に宇宙が人気なんだな。ただいくだけじゃなく未来に進む場所として考えているのね」

 ちょっと自分と認識が違っていることもわかった。


 その後もフランシスの説明は続き、映像は、

『工業地区。太陽エネルギーから受けた、電気によって、新しいソーラーパネルの建設。その他に、小型宇宙船や宇宙船同士をパイプで移動できる小型ビークルの作成もイメージビデオが流れる』

『後々になるが、第二、第三コロニー建設において、医療、新薬の製造』

『娯楽地区 新しいスポーツ施設の特化したコロニー』

巨大モニターに繰り返し流されている

フランシスが語っているが、どうもそれは数年後の話だろう。

「なるほど。宇宙に住むという目的が、パルテノンと根本から違うんだ。これが民間のビジネスというものか」と思った沙織。

 そしてフランシスは話を占める。

「産業はコロニーを豊かにします。豊かなところに人は来ます。人が来ることによって必要なものが増え、それを作る、加工する仕事が増えて、新たなる雇用が増えます。新たなる産業を生み出して提供する。これこそ宇宙ビジネスなのです」


しつこいくらいにハンモックの意義と計画予定を聞かされたブリーフィングは終わり、昼食ブレイク。

午後からは施設案内と説明を受けた。


宇宙適正検査試験は明日以後『宇宙基礎訓練作業』養成と一緒に試験実行になるようだ。






 ルームを出て、病院のような建物からも出ると、至る所にハンモック計画のプロモショーンビデオが大きな画面によって映し出せされているのに気がついた。

「昨日はあまり気にしてなかったけど、目につく所に大量の映像の流し込み。やはり民間は宣伝が派手だ」

 他の部署も昼食タイムのようで、施設内に人がごったがえしている。

その中で他の多くの人間が出入りしている建物に着く。

 中にスーパーマーケットが入り、軽食ができるレストランもある建物。沙織は中に入り、アーケードになった構内にて飲み物を買う。

 アーケードに、スタッフ関係の受験者がたくさん集まっており、入ってきた沙織を見つけたエドナがくる。

「お、来た。ここにいるということは?いうことは昨日の一次は通過したのね」

「合格よエドナ」

 その他のパルテノンの仲間たちも沙織たちを見つけ合流してくる。

「さすが沙織。やはりすごい」

「パイロット試験、すごい噂になってるのよ。300人近くいたのが、20人なったんだって?そうなの?」

「パイロットは人気があって、買い手市場のレッドオーシャン」

 沙織がそれに答えると

「ノックアウト方式か?俺が行ってたら間違いなく落ちてるな」

 と元・飛行士養成生のフィリップが笑った。

「しかしそんなやり方じゃ、ライトスタッフは作れないぜ」

 と、ジョンがこんなやり方が気に食わないようで、吐き捨てる。

自分もちょっと強引な試験だと思ったが、根本的にもう違う世界だと沙織は認識した。

 そこにレイも合流してくる。

「レイ合格。おめでとう。さすがレイだな」

 フィリップがねぎらうが

「当たり前だろ、こんなのは想定内だ」

 相変わらず、自信過剰の嫌な言い方。

「そっちはどう?」

沙織が他の部署も知りたくなり、エドナに聞く。

「なかなかハードね。一応、健康衛生管理士っていう部署に合格にはなったけど、3ヶ月後に業績確認だって。・・・何もしない奴はサヨナラっていうこと」

「パイロットは決まったんだろ?」

 ジョンに聞かれて

「いえ、これからも調査を続けて、数ヶ月後発表かな」

「合格じゃないのか?」

 みんなに驚かれる。

「いやいやまだね。検査が半端じゃないの。もうナノレベル。解剖でもされるんじゃないかという勢い」

「解剖?」

「本当に、ちょっと変わっていて、口の粘膜から細胞を取られ、『宇宙実験のための体の一部、少量の組織をいただきたいのですが、よろしいでしょうか?こちらの書類をお読みいただき、オッケーの方はサインをして、奥へお入りください』って細胞採取同意書も書かされた。検査が済んだものから無菌室のようなラボに通され、培養されるみたい」

「へえー。なんに使うんだろう?」

 とフィリップに聞かれ、

「宇宙にて培養使用を本人の任期中のみ許可。終了時は必ず全て処分すると書いてあったから多分、宇宙空間で実験に使用するんだと思う」

「宇宙無菌バイオの開始か」

「後のPS細胞などの外科医療にも手を広げるようね」

「これは何か、企業だけの範疇に収まってないな」

「フィリップどういうこと?」

「IPS細胞だけじゃなくクローンとかそういうことも入ってくるんじゃないか?」

「だったら国家レベルじゃない。民間で収まりきらない。・・・大きなバックもいるということなの?」

「ストップだ沙織」

「・・・」

 レイに止められる沙織。

そう、何故かみんな、こちらのことを必要以上に聞いてくる気がしていた。

「中途半端で誤魔化すなよレイ。レイも何か感じているんだろ?」

 フィリップが、こづいて何か喋ろそうとするが、もう何もいわないレイ。

「・・・フィリップってこんなだったけな?」

 ここに来て、何か前の仲間だった人間にも、違和感を感じる沙織だった。



 赤枠のついたワッペンをしてる者たちが歩いている

「彼らがパイロット候補生か?」

ジョンが指差す方向に、ブラジル人のケケ。イスラエル人のジン。インド人・バル、中国人・ユアン。が歩いており、パイロット候補ライバルたちも、ここに昼食に来たようだ。

「これは、世界選手権?オリンピック?多国籍軍て感じだなアメリカ万歳」

 フィリップが笑う。

「アジア、女性3人もいるの?枠がきついわね」

 エドナがいう。

「そんな枠、あるの?」

「当たり前でしょ民間がやってるんのよ。広く、アピールできように満遍なく入れてくるでしょ」

 自分と同じアジア人。中国人のユアンがじっと見ている。

「うん。日本人じゃなさそう。中国人ね。・・・同じアジア圏では、ライバルか。睨んでる。こわー」

 エドナもユアンの敵意を感じとっていた。

「奪い合う枠。だから中国人が睨んでくるのか」

 やっと敵視の意味がわかった沙織。

「錚々たるメンバーたちだ。沙織も厳しいライバルたちだな。・・・ただ、中国人、ブラジル人、インド人。奴らは残るな」

 ジョンがいう。

「どうしてよ。ジョン?」

「経済発展をしている所、金が動く」

「援助目的。民間企業は金に厳しいのだよ」

 フィリップもうなづく。

「なるほど企業推薦の金のある奴らだからね。頑張りな沙織」

 エドナも沙織の肩を叩く。

「別に気にしないわ。優れたものが勝ち残る」

「大きく出たな。それぐらいの意気込みだ」

 笑うジョン。 そして仲間たちが励ます。

「沙織、まだ2日だ」

「最後まで残ってくれよ」

 声援を受けて微笑う沙織。


「パルテノン・プロジェクトの方々ですか?」

 そこにイケメンのフランシスが近寄ってくる。

「ハンモック計画の総指揮を執りますフランシスといいます。皆さんの経験を生かしていきたいと考えていますので、よろしくお願いします」

「よろしく」と順番に握手をして

「ジョンさん、フィリップさん、ずば抜けていい成績でした」

 記憶力のいいフランシスは相手の名前を言って、驚かせる。

「フランシス。宣言通り合格しましたわよ」

 握手しながら微笑むエドナ。

「それはおめでとうございます。これからもよろしくお願いします」

 両手で握り返すフランシス。

エドナ、チャンスと引き寄せるが、微笑むフランシスは優しく手を引き、隣に移る。

「皆さんと働けることを楽しみにしてます」

 そして最後にそういうと去っていくフランシス。

「チッ、逃がしたか。まだチャンスはある」

 というエドナを笑う沙織。



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