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 17,ドッキングポッド

 トレーニングルームに来た沙織は、ジム器具に備え付けられたスキャナーに個人認識カードを読み取らせ、自分の運動の計測を開始する。

 まずは20キロのバーベルの上げ下ろし。それは瞬時に運動スコアになり、計器からデーターベースに送られ収録されていく。

「どうしたの?急にデーターとり直しなんて」

 沙織の後ろで、補助を手伝っているエドナが聞いてくる。

「無重力状態で筋肉が毎日1%落ちていくから、ストレッチは宇宙飛行士には欠かせないじゃない」

「あれ?今日は代謝の促進とかのトレーニングじゃないの?」

「目標は宇宙。未来を考えて行動するのよ」

 バーベルを持ち、肩に担ぎ、スクワットをしながら答える沙織。

「呆れた。これって宇宙でのジムトレーニングのため?これだから宇宙飛行士は困るのよ。・・・私の仕事から言わせてもらうと強度筋肉質は沙織の体質にお勧めできない訓練なんですけど」

 一応、エドナ、パッドで沙織のデーターを呼び出し、身長、体重、筋肉量などの確認をする。

 沙織、データー書き換えの疑惑があるからと言いたいが、それは単なる疑惑なので口にするわけにはいかない。

「・・・エドナ、私のパルテノンのデーター覚えてる?」

「パルテノン?そんなもの覚えてるはずないじゃん・・・どうしたの?この前から、何かおかしいよ?」

「何かな?・・・なんかしっくりこないんだよね。・・・数値が違っていたり、機械が緩んでいたり・・・」

「気のせいじゃない?どこでも最初はそんなものでしょ?ハンモックはまだ新しいから雰囲気が違って感じているだけよ。小さなことは気にしない」

「・・・そうよね。でもそれで何もなく済めば、こっちも気にしないんだけど・・・」

 そこにフィリップが、パッドを持ってジムに入ってくる。

「お疲れ沙織。データーは記録されて始めているのを確認した。今日のアップデートされたのは俺も確認している」

 タブレットを見せて数値の更新を、見せる。

「ありがとうフィリップ。これでもう私のデーターは改ざんされても大丈夫ね。エドナにもバックアップとってもらってるしね」

 再びスクワットをして汗を流す沙織。

「フィリップ、ちょっと、ちょっと」

「なんだい?エドナ」

 エドナが近寄り、沙織に聞かれないように、フィリップと話すエドナ。

「沙織、どうしたの?なんかあった?」

「データーの違いが、このまえ起きてね。とりあえず取り直ししておこうって・・・うん、それにもうすぐ船内訓練に入るじゃないか。そうなれば船内とポッドのドッキング、切り放しの訓練なども始まる」

「ポット切り離し・・・あ、パルテノンの事故の訓練?。マイケルが死んだ分離の作業訓練のこと?」

 うなづくフィリップ。

「それなら少し過敏になるのも仕方ないか」

 エドナもパッドにアップデートする。




 ドームの隣の中央ビルの3階にあるミーティングルーム。そこに集合させらた飛行士訓練生たち。

 正面に座るコマンダーブラウン、スミス、総司令のフランシス。

ブラウンがみんなに向かって説明を始める。

「これからハンモック船体を実際に使用して、船内訓練のフェイズに入る。操縦訓練はシュミレータで行なって来たので問題はないと思うが、体に覚え込ませるためにはリアルな作業が一番効果的だ」

 ブラウンの後ろのモニターには、ドッキング工程、そして排出工程の図が動画で流れている。

「・・・まずは地球から送られてきた物資ポットを、船体にドッキングさせ、中身をハンモックに搬入。そののちポッドを排出する。そこまでが一連の作業行程である」

 船体とポッドのドッキングしていくムービーがシュミレーターの作業映像で流れる。

「作業自体は船体の平行のキープと、接近するポッドとの導入角度を適正に保つ。それだけのことだ。あとはオート機能システムが発動して、レーダー誘致と電磁石が稼働してくれ、船体自体が自動にドッキング作業をしてくれる」

 モニターのハンモックのドッキング入り口が、上下左右にスライドしてポッドを探す。レーザーが照射されてポッドの中心点を捉えると電磁石が働き、ポッドが吸い寄せられてくる映像。

「・・・今までのようにモニターを凝視しての中心点を合わせの手作業ドッキングとは違い、こちらはただ見守っていればいい。イージーだろ?」

 映像では、ドッキングゲートが開き、ポットの扉を開く。梱包された食糧や実験器具を、ハンモックからの牽引フックで引き出し、ハンモックに移動させる。

「中身を移動させたのち、空になったポットを地球の大気圏軌道に落下させて、燃焼させるまでが訓練内容となる」

 モニター映像では、ドッキングしているポッドが、まるで発射されたかのようの切り離されて、宇宙空間を進んでいく。


「船体とポッドと切り離しは、結合部分に酸素を注入し、圧縮された酸素による発射分離を行う」

 コマンダーブラウンが『分離』の話を始めると緊張が走る訓練生たち。これがパルテノン事故と同じ訓練と認識しており、死亡事故を起こした訓練だと知っているからだ。

特に沙織とレイは冷静そうに見えるが、普段と違う緊張感が充満している。

「切り離しのタイミングは、一連でシステムが計算しているので、システムの指示に従がって、合図とともにスイッチを押せば切り離さて飛んでいく。あとは、それが計算通りの軌道を進行しているか追跡して、消滅を見届ければ完了である」

 映像は軌道展開図に変わり、船体の位置が示されて、ポッドが離れて緩やかに地球の方に落ちていく軌道が点滅し、その線の上をポットが進んでいく。

説明が終わり、微笑んでコマンダーブラウンは座り、続いてコマンダースミスが細々な注意事項の説明を始める。

「気圧変化の確認のため、ボックス自体に気圧をかけます。船内も気圧が変化する可能性があるため、宇宙服着用が必須になります」

 スミスの話を聞きながら話し終えたブラウンが、隣にいる総司令のフランシスに話かける。

「なんか、今回はちょっと空気が違うな。やはりパルテノンで起きた事故と同じ訓練だからかな」

 フランシスも同意して頷く。




 ミッション説明が終わるとミーティングルームから、2階のロッカールームにて船内宇宙服に着替えに出る訓練生たち。

 ロッカールームには全員の宇宙服がありそれに着替え始める。

 薄いウエットスーツのような密閉性のある耐熱耐寒服に、厚手の密着性のあるゴム手袋と足元が閉まるブーツを着用する。

 そこに酸素パックが詰められたポケットが多い耐衝撃ベストをつけて、ヘルメットを持つ。

 そして隣の棟・船体があるキラキラドームに移動していく。


 歩いている沙織の隣にレイが並んでくる

「どうだ?・・・ダイジョブか?だいぶ緊張しているな」

「大丈夫よレイ。ちょっと緊張しているだけ」

「おい、だから緊張しているって言ってんじゃないか」

「あ、・・・そうね。いつもよりちょっとだけ緊張しているわ」

 苦笑いするレイ。

「その人の言葉を理解してない感じは、とんでもなく緊張してるように見える」

「え?あぁ・・・」

その隣に並んでくる沙織たちと一緒に搭乗するブラジルのケケ。

 「気にするな、単なる作業訓練だ」

沙織、背中を叩かれケケに笑われる。

「わかってるって。(微笑み)・・・もう大丈夫。緊張とれた」

首を回し、上半身を揺らして微笑む沙織。

 しかし微笑みがこわばっていて、全く緊張が取れない沙織。




 キラキラドームには、ハンモックの船体がまるまる入っている。

色々な付属計器や機械類が立ち並び連結されている。その真ん中に位置するハンモック船体前に、沙織たちが歩いてくる。

 緊張した面持ちでヘルメットを持ち、大きなハンモックを見上げる沙織。そこにフランシスが隣に来て並ぶ。

「沙織、リーダーに志願したそうだが?」

「ええ、是非ともやりたい作業なので」

「頑張ってくれたまえ。万全を期しているので大丈夫だ・・・」

「・・・・」

 返事がないので、沙織の顔色を見るフランシス。

緊張で強張っている沙織。

「・・・パルテノンでは、ポットが排出されず、注入酸素が止まらなくて起きた事故だったね・・・沙織、この訓練は無理して先にやらずに、あと組になれば・・・」

 しかしその言葉に首を振る沙織。

「これはなんとしても乗り越えなきゃいけない訓練だと思ってるから」

 緊張の中にも『決意』が目に宿っている沙織がわかるフランシス。

「OK・・・見届けているよ」

 親指を立てて『グットラック』を示してから去っていく。



 船内用簡易宇宙服に着替え、ヘルメットを持ち、今回の搭乗クルーがその前に並ぶ。

 リーダー沙織。副リーダー操縦者・レイ。船内確認ブラジル・ケケ。通信・内部計測イスラエル・ジン。

 コマンダースミスがみんなが並ぶ船内の入り口前にくる。

「これより船内訓練にはいる。(みんなを見回し)それでは始めてくれ」

 コマンダースミスに敬礼をす中に入るクルーたち。

 

 入り口の二重ハッチ扉。電動と油圧の手動のハッチを確認。

 二重ハッチには外部から内部に入る中間エリアがあり、そこに二人ずつ入れるスペースがある。先に手動で沙織とレイが外部ハッチを開き中に入り、船内の電源を入れる。続く次のクルーのケケとジンが電動で開閉されるようになった外側ドアを開き、順番に入っていく。

 4人が揃ったところで、船内の確認をしながら奥へ進む。目視とドア開閉などの簡単な動作作業の確認をしながら入っていく。

 少し長めの廊下。廊下の左右に扉があり、食品庫、寝室などで、クルーはそこを通過してを操縦室につく。


 沙織はメインモニター席に座り、各部署に指示を出していく。

「副リーダー・レイ。操縦席に。船の軌道や位置の確認をお願い。」

 レイは席に着くとメインモニターに船内地図を出し、各部署のカメラを起動させて、モニタリングを始める。

「ジン、通信計器確認。ケケは船内の計器のチェックの準備を始めて。・・・ケケ、船内移動はヘルメット、手袋、携帯酸素ボンベ着用です」

「了解です」

 ジンが座り、計器類のスイッチをオンにしていく。

ケケは、一番後部の座席にあるチェックリスト表を取り出し、操縦室から出て、船内機械の計器の目視確認を始める。


 スピーカーから司令室のコマンダーブラウンの声が聞こえてくる。

「全員、配置についたか?それではリーダー沙織。シュミレート訓練を始める」

 沙織、手順の指令書を開く。もう記憶されているが、緊張のために開かずにはいられない。

 司令部のサポートスタッフの声が、船内スピーカーから流れてくる。

「 作業、準備に入ります。船体が傾きます。乗員は対応準備」

 船外コンプレッサーが動き出し、船体を支えている油圧が動き出す。 ブザーがなり、『船体傾斜』の電気音声が連呼して、船内が動き出す振動が始まる。


サポートスタッフのアナウンス、再び。

「初期設定、斜度右20度、振り角15度の設定。船体を傾けます。船内は無重量ではないので考慮してください」

「了解」

 すると油圧の力でハンモックの船体が揺れながら傾いていく。


 船内の手すりに捕まる沙織たち。自分の体を流されないように確保する。

 司令部のスミスから

「ドッキングに対して、正常な0基点位置に戻して、ドッキング開始に入る。それでは始めてくれ」

作業開始する沙織たち。

 レイ、船体確認。ジンがポット位置確認。沙織が修正手順をいう。

船体内の機械を確認しているジン。そして作業は、順調に進んでいく。



「ケケの方はどう?」

「順調だよ。本来は機械確認が主の作業だ。俺の作業は簡単だ」

沙織の問いかけで、船内で手を振るケケ。それが操縦室のモニターに映る。

「了解。そのまま、続けて」

答える沙織。しかし、

「・・・?」

 その時ケケのモニターに、船外確認用の窓があり、そこに空気循環コンプレッサーの機械が見える。

 船外にあるそのコンプレッサーから水蒸気が上がっているのが沙織の目に止まった。

「あれ?ケケ、後ろのコンプレッサーの蓋が閉じているけど?」

「ああ、今は二酸化炭素が多くないので、開いても閉じていても問題ない状態だ」

「でも船外のコンプレッサーが勢いよく動いているということは・・・」

 沙織ふと気になる。

「コマンダーブラウン」

 スピーカーから流れるブラウンの声「なんだい?」

「突然ゴメンなさい。ちょっと気になることがあるの。コンプレッサーから出た水は何処に処理してるの?」

「貯水タンクに戻すけど」

「当然、真空にするわよね。凍結の心配はない?」

 スミスが返答する。

「こちらのモニターでは、順調に流れているが、そこに計測装置はないから確認は取れない・・・心配か?」

「ええ。外部にいる時に、経路を目視をしてなかったので」

 ブラウンの声が入ってくる

「了解。じゃあ、中断して確認してみる」

 そこに割って入ってくるジン。

「リーダー、ちょっと過敏すぎないか?司令部の方のモニター確認で問題がないんだろう?ならばこのまま進めてもいいんじゃないか?」 

 それに反応してブラウンが答える。

「ジン、この訓練は危険が伴う、慎重に進めたほうがいいと思わないかい?」

「コマンダーブラウン。パルテノンのことを言っているのか?それはわかるが、こちらは順調に行っている。いいリズムを止めたくないというのが、こちらの気持ちだ」

「そうね。ちょっと神経質になりすぎたのかもしれない。ジンの言う通り、このまま進めましょう」

 と沙織が言ったタイミングで、船内の何処かでパキッという音がする。

「?」

「船内の歪だろ。温度が上がってきてよくある現象だ」

 レイが軽い調子でいう。

しかしそこで総司令のフランシスの声が入る。

「やはり一度確認をする。確認して問題なければ30分後に再開する。いいね」

「了解」

 沙織が返事をして

「了解」

 意見を出したジンも返事をする。


 レイ、沙織の所にくる。

「気になるかい?」

「分かっている。神経が過敏になっているのも。(ジンに向かって)ジンごめんなさいね」

「気にするなリーダーは君だ。意見はするが、リーダーに従う」

 にこやかに微笑み返事をするジン。



  30分後、スピーカーからブラウンの声がくる。

「チェックオッケー。オールオッケー。作業を再開する」

 その声で、ケケはヘルメットを着用。

「これより連結に入る。乗員全てヘルメット着用」

 司令部スタッフからのアナウンスが流れる。

 操縦席の沙織たちも、ドッキング時の不慮なトラブルに備えて、ヘルメットをつけ、ヘルメットに装着されている酸素タンクの弁を開ける。

 沙織、ヘルメットと宇宙服と連結させると、密閉オッケーの緑ランプがヘルメットシールドインフォメーションに表示される。

「それではドッキング作業に入る。船体の角度をポッドの傾きに合わせる・・・」

  沙織は、各部署に命令を出し、そしてドッキング作業はスムーズに行われた。




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