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16,プール無重力作業

 ガタガタ、ズルズル。

「おっっっと」

 60センチの3段くらいの脚立に乗り、背中の扉を空けた宇宙服へ、足から入っていく沙織。

「足は入ったか?沙織」

 中に入る沙織を、パルテノンの時の飛行士予備生で同僚だったジョンが、飛行士補助のスタッフとして、宇宙服をつけるサポート手伝いをしてくれている。

「モッ・・・ちょっと・・・入った。踵までついた」

「なら腰ベルト外すぞ」

「オッケー」

 船外宇宙服というのは、気密性が大事なので、ヘルメット、胴体、手足がシームレス構造になって一体化している。中に入る場合、背中に背負うボックス部分が蓋になり、そこのロックを外して人間が滑るようにして中に入る構造になっている。

「沙織、まず左手から入れろ」

 左手を入れやすように肩の高さまで持ち上げてくれるジョン。

「懐かしいわね、パルテノンでは、よくジョンを手伝って着せてあげたね」

「あの時はスタッフが少なかったからな。飛行士同士、互いに助け合わないと進まなかったが、ここは充実した環境で、今度は飛行士とサポートの関係。こちらはシモベになってご提供いたします」

「頼んだわよジョン」

 沙織、右手も入れて、両手の拳を握る開くを繰り返し、指を手袋に馴染ませる。

「循環用水冷の水、入れます。・・・酸素ボンベ、取り付けます」

 他のスタッフも順調に作業をする。

「バッテリー充電、80%確認。・・・飲料チューブ設置オッケー」

 蓋の開いた背中の部分は、色々な装備を配置する場所で、宇宙服に必要な酸素ボンベ、パッテリーパック、その他をスタッフが背中のボックス部分につめていく。


 「無重力空間にての船外活動の訓練になる。・・・宇宙服は実際のものを着用してもらってプールに入り、無重力状態での作業になる」

 宇宙服を着せられている訓練生に説明しているコマンダー・スミス。

 目の前にあるモニターには、大きなプールが写っている。

「試験訓練の時に浮遊テストと遊泳体験は済ませた。今回は実践的な作業を行ってもらう」

 モニターが切り替わり、プール内のカメラ映像に変わる。

「プールの底には、多数の鉄骨が沈んでいる。宇宙服を着た君たちはプールに潜り、鉄鋼の組み立て作業を行なう」

 プールの底に、鉄柱や接続ジョイント。その他、工具やボルトなどもプール内に沈められているのがモニターでわかった。



 ジョンは前に回って、沙織が下を向くと見える『自分用』の数値モニターの調整をする。

「順調のようだな沙織」

「まあね、みんなより経験があるっていうだけ」

「体重は何キロだ?」

「61、4キログラム」

  ジョンは手にもったパッドの『沙織データー』と照し合わせて、誤差のプラスマイナスのボタンを合わせていく。

「訓練生の中では沙織が一番のスコアを出している」

「え、スコアがあるの?」

「そりゃ熟練度のレベルを確認できるシートは発表されている」

「・・・恥ずかしい」

「おいおい、誇っていいことだぜ」

「そんなのすぐに抜かれるわ。みんな各国からのエリート。すぐに覚えて、こちらを上書きしてくるわよ。現に私の成功例を一回見ただけで、こなしてくるんだから」

「速い成長だね・・・スイッチ、オッケー。全部正常に機能している。背中を閉めるぞ」

「了解、お願い」

 スタッフが背中のハッチをしめて、一瞬、宇宙服内部の空気を抜く。しっかり閉まる背中の結合部。

 沙織、宇宙服内の酸素ボンベをスイッチを押して開くと、酸素が口元に回ってくる。

 ジョン、後ろに回って密閉の確認して、ハッチの部分を隠すファスナーを閉じる。

「オッケーだ」

 久しぶりに宇宙服を着た沙織、楽しくて動いてみる。

左右に横に片足立ちして、揺れてみる。

「なんだダンスか?」

「お、わかってるねジョン。喜びの舞」

 密閉された宇宙服の中から無線を通して沙織の声が、ジョンのヘッドホンに入ってきた。


 宇宙服自体80キロ越えの重さがあり、自力で動くのは難しい。宇宙服を着た沙織を人力運搬の台車に乗せて、スタッフがプールまで運ぶ。

 プールの脇にはエレベーターがあり、台車ごとプールの中に浸水していける装置。

 プールに着いた沙織は、台車に乗せられたまま、天井に張り巡らされているスパイダー・ワーク・ワイヤーのフックを、宇宙服の両側にあるリングにつけられて、準備は完了。

 エレベーターが下って行き、プールの水の中に入っていく沙織。


「どうだ?水漏れないか?」

 プール脇のジョンから無線で話しかけられる沙織。

「ジョン、雑なやり方ね、モニタリングしてよ」

「モニターしてるけど、中の人間に聞いた方が早いだろ」

「まあ、そうだけどね」

「次に頭までつけるぞ」

「オッケー」

 宇宙服を着た沙織、底40フィート(約12メートル)の深さに沈む。

「浸水なし。完全密封確認しました」

 台車から一歩、歩いて降りる沙織。宇宙服をスパイダー・ワーク・ワイヤークレーンに吊られているおかげで、プールの中では重力が軽減されている。

 隣のエレベーターで同じように宇宙服を着たインド人・バルが、プールの中に沈んできた。



 見学している他の訓練生に、パイロット司令、コマンダー・ブラウンが説明する。

「どんなミッションも単独では行わない。必ず2人以上で行う。・・・宇宙空間にて、単独行動時に何かトラブルが起きた場合、それは死に直結してしまうからだ。そのため二人以上の集団システムで物事を進めていくのを基本とする。それが自分も、仲間の命を守るためにも大事な鉄則として守ってくれたまえ」

 当然、次の出る準備をしているレイも、ユアンとバディを組んで待機している。



「プール内は、水圧が生じるので完全な無重力の宇宙空間の再現は出来ない。だが上下左右に動くスパイダーワークワイヤーの補助のしているため、プール内では、ほぼ重力をゼロになった無重力状態での作業が出来るようになっている。・・・中に入れば宇宙空間と同じ環境。自由に泳げるぞ」

 コマンダースミスからの連絡を受け、バルが喜びの声をあげて、ジャンプする。水中に浮いたバルはゆっくりと動いていく。

「うわーすごいな。これはいい」

 水泳のように腕を動かすと、水平にゆっくりと進んでいくバル。

「宇宙に水はないぞ。あまり手で泳がないように。宇宙と同じように推進器を使って進んでくれ」

「了解」

 スミスの忠告に従い、沙織もプール底を蹴って、宇宙服の両側の腰につけられた『エアー噴出、推進器』を使い、プール中央の沈んでいる機材に近寄っていく。

「ここから沙織とバルで、プール内に沈めている金属パーツやネジやボルトを使って作業をしてくれ」

 沙織とバルのヘルメットの中に、コマンダー・スミスからの声が届く。

「了解」

 そういうとプール底の金属に触る沙織とバル。

「バル、なんだと思う?」

 双方向の無線で、切り替えなしで沙織とバルは無線で話す。

「金属の鉄骨だ。多分建物の枠組みか支柱だと思うぞ、沙織」

「縦と横の金属の組み合わせね。ボルトとナットもある」

 沈められたパーツを確認する。

「工具もある。取り付けボルトどめで固定しろということね」

 そこに司令部のスミスがその無線に入ってくる。

「オッケー、バル、沙織、推察の通りだ。宇宙での作業場のためのボックス型の枠組みだ。それを結合させていくと高さ2、5m。横2、0mの長方形のボックスを作ることができる。・・・宇宙空間での接合部は溶接になるだろうが、ここでは細かい作業を経験してもらうため、あえてボルトとナットの連結という難しいものにした」


 バルは長めの枠と思われる2、5メートルぐらいのと思われる鉄骨を一本立ててみる。

「これは他のより長い気がする」

 バル、それを丁寧に底にはわす。そして次の鉄骨を立ててみると、こっちが少し短い。

「多分こっちが横だね」

「それを各2本。・・・あれ、平面がわかったが、長さ、奥行きは?」

 他に転がっている鉄骨で、違うものを探すが、ない。

「全部で2、0が8本、2、5が4本だ。つまり、高さ2、5。幅2、0、奥行2、0の立方体だ。」

「了解。組み立て位置に配置する」

そういうと沙織は重い鉄骨を動かす。バルはそれに合わせて持っている鉄骨を直角に置く。それを沙織が連結ジョイントで鉄骨を挟み、補強材を噛ませて、ボルトとナットで連結させて固定する。

 基本的にバルの方が、腕力があるので運んだり押さえる係で、沙織がボルトやナットの工具を持ち縦と横に置い鉄骨をつなぐ係になった。

 そしてプール底に、まず2.5x2、0の四角形の面を作る。

その地面で作った4角の枠を、バルは起こして建ててみる。

沙織は立方体として立つように、底の部分に当たる鉄鋼を置き、取り付ける。

 次にバルは鉄骨を持ち上げ、上部分を付けるために鉄骨を持ち上げる。

「結構、辛いな」

 やはり鉄骨の重さがあるので、持っているのがつらくなるバル。

「高さ2、5だからよ。横にしてつけて最後に回せばよくない?」

「なるほど。オッケー」

 下部分が着いた面を横に転がすバル。

回転して床の部分に鉄骨が来る。それを結合していく沙織。

 ゴロゴロと地面で転がして結合部分を床に転がしては四隅に鉄骨をつけていく二人。


 

 沙織は動き回り、取り付け作業をしているのだが、自分の体に違和感を感じ始めた。

 鉄骨と鉄骨の継ぎ手のボルトを締めていると、作業中の体が浮き上がっていくのだった。

「あれ?上に引っ張られる?」

 体が下半身から浮いてくるので、鉄骨を掴み浮き上がる体を確保しながら作業をする沙織。

「これ、どういうこと?ワイヤーの問題?それとも何かの問題?・・・バルは?」

 質問されたバルは、自分は『問題ない』と手を振る。

「問題か?沙織」

 沙織とバルの会話を聞きつけてコマンダースミスが、会話に入ってくる。

「体が浮くの。・・・無重力ではなくなっている」

 話しを聞いて、同じ監視ルームにいるスタッフに確認するスミス。

「ワイヤーの方は?」

 しかしスタッフからは

「ワイヤーは、テンションがゼロになっています。無重力状態が継続中です」

 の返答。


「おかしいわね。・・・これ足元から浮いてくるということは、服の内部問題かしら」

 スタッフの返事を聞いた沙織、自分の胸部についているモニターをみる。

「酸素量3200?これ酸素供給量なの?・・・これ、多いわ。私にはこの量を消費できない」

 胸につけたモニターをみると、二酸化炭素の濃度が薄い。

「二酸化炭素は収納しているけど酸素量が多くて、宇宙服の中で溜まって、体が浮いてきちゃってる」

 スミス、データー管理をしているスタップに聞く。

「酸素供給は毎秒、幾つで送っている?」

「3000c cです」

 答えるスタッフ。それを聞いて沙織が反応、

「・・・その数値おかしい。私は肺活量の検査で、2850ぐらいって言われたんだけど、」

「しかしこっちのデータ3000〜3200だぞ」

 管理モニターに行き、確認したスミス、沙織のデーターが3000あたりになっているのを伝える。

「沙織、生命維持システムのゲージ出してくれ。N4の上から3番めの項目だ」

 スミスに言われるまま、モニターの表示を切り替えていく沙織。

「もう〜。指が太くて操作しづらい」

 沙織、自分のモニターを切り替えていく。

「・・・出たら、3番めにある酸素量をクリックして、排出量を呼び出して、3000の数値をマイナスボタンで落としてみてくれ」

「オッケー。実行します」

 沙織は宇宙服の酸素吸入の装置を一度、閉じて入らないようにして、溜まった酸素を消費する。そして二酸化炭素吸入装置によって水に変えて、水循環装置に回し宇宙服にたまった気体を減らしていく。

 沙織の状態が安定し、プール内に留まれるようになった。


 すると今度はバルから発言。

「こちらは息苦しくなってきた。もう少し酸素が欲しい」

 スミス、スタッフに確認にすると肺活量が3500と出ている。

「バルは?3500c cか?」

「いや検査時には3700と聞いてる」

 とバルが答える。

「わかった。こちらも変更する」

 バルも司令室から指示を受け、3700ccに変更し、足りなくなった酸素を充満させ、凹みかかっ宇宙服を正常に保つ。

 完了した二人は、その後、再開した作業は止まることなく進み、鉄骨立方体外枠ボックスが完成する。



 エレベーターでプールから上がり、スパイダーワークのワイヤーをスタッフに外してもらう沙織たち。

そして台車に乗せられたまま、隣の部屋の装着室に移動する。


 背中のファスナーを開け、ロックを外してハッチを開ける。

プシュ、と音がして、繋ぎ目についた水分が吹き飛び、ハッチが開く。

汗まみれの沙織とバルが背中から脱皮するように宇宙服から出る。

「ジョン、どう言うこと?数値が違っているじゃない」

 宇宙服はずしでサポートしているジヨンに不満を言う沙織。

「俺に言わないでくれ。データー指示はコントロールームから送られてきたものを打ち込んでいるだけだ」

「うん。・・・それもそうね。じゃデーター管理のフィリップのせいだ。文句いってやらなきゃ」

 装着室に入ってくるコマンダーブラウン。

「お疲れ様。・・・沙織は酸素過多。バルは酸素不足の症状は出ていたが?」

「はい。でも少量だったので問題ないです」

「こちらも異常なしです」

 バルも答えるが、

「一応、血中濃度を調べたほうがいいので医務室に行ってくれ」

 と、ブラウンに言われて、まだ汗だらけのままだが、隣の建物のホスピタルの建物に行き、血液検査をしてもらう沙織とバル。



 沙織はホスピタルビルを出ると、もう一つ隣のミーテング・データー管理ビルのスタッフ・フィリップを訪ねる。

「フィリップ、私の身体データーを閲覧してもいい?」

「どうした?さっきの酸素量のミスかい?」

「ちょっと気になってね」

「一応、コマンダーの了承得てからで・・・」

 スミスに電話するフィリップ。すると閲覧の許可がでて、モニターを見る沙織。

『SAORI INOUE』フォルダに指紋や虹彩それに身体検査の数値を記録した沙織のデーターが入っている。沙織、開き確認すると

「・・・やっぱり違っている。フィリップ、これはアップデートされてないということ?」

「いやそんなはずはない。アップデートは、日付の新しいものがはいったら書き換えるようになってる」

「じゃあなんで、違ってるの?」

「日付けをみてくれ」

 沙織、確認すると

「・・・確かに2日前の検査の数値が並んでいる・・・あれ、これ、パルテノンの表じゃない?」

「ああ、そうだよ。パルテノンのソフトを引き継いだから。パルテノンのシステムは、どの計器にも対応する優れものだから、助かる」

「・・・それで、これさあ、この前の遠心力負荷の訓練の時から、このパルテノンシステム、気なっているのよね。・・・これで問題ないの?」

「問題って?」

「なんせ、事故で中止凍結になって結構、経つじゃない」

「そんなの関係ないね。機械自体に故障が起きるかもしれないが、システムに問題ない。新しく発見されたバグはパッチを貼ってアップグレレードしているし」

「でも実際にこのアップグレード。おかしいじゃない」

「・・・確かに数値が変わってたりしてるな」

「そりゃあ細胞では3日で新陳代謝はしてるし、1ヶ月後には、体のほとんどは入れ替わっている。でも毎日、その度にアップグレードする必要ある?」

「しかし耐えす新しい数値も拾ってこそ、綿密なデーターになるのだ。仕方ないことである」

「でも人間の体はそんなに変化するものじゃない。もっと長いスパンで見た方が本筋が見えたりするのに。・・・でもだったらさぁ。引き継いだパルテノンの頃の私のデータって出せる?」

「パルテノン?いやそれは無理だろ。向こうのシークレット部分だと思うぞ」

「でもデモ・データーとかあるんでしょ?そこに私のデーターとかあったりするんじゃないの?・・・向こうでは女性は私一人だったりしたじゃない。ならベースデーターとして残しているわよね?」

「それを呼び出してどうする?」

「照らし合わせて変化を見る」

「まあ経年記録を出してみるのは解決につながるかもしれないが、・・・それを呼び出す権限は俺にはないぜ」

「誰に言えばいいの?」

「多分フランシスだな。」

 内線連絡でフランシスを呼ぶ沙織。



「どうしたかね?」

 テレビ電話のモニターにフランシスが現れるとフィリップが説明する。

「今、沙織のデーターを確認しているのだけど、沙織のデーターがバックアップが新しい訓練に代わるたび、非自然に変わっているではないかと疑問を持っている」

「変わっている?」

「自動記録のアップグレードだけど、自分では自覚のない変化が刻まれているみたいなの」

 沙織、本来なら数週間、数ヶ月レベルで書き換えられてもいい数値のアップグレードが、毎日の検査記録をアップされている。しかしそれが、どうも誤差あるようだと説明する。

「それでパルテノン時代のデータを使用しているなら、数か月以上保存されているだろうパルテノンデーターを呼び出したいので、許可が欲しいの」

 それに対してフランシスの返答は

「データの閲覧はOKだ。パルテノンのジェームスからは機械において解体や解析の許可も得ている。ただ機械の連動や仕組みはブラックボックスにされておりトップシークレットの類だ。向こうのNASAのメンテナンスの人間にしか触らせないというのが条件にもなっている」

 というとフランシス、NASAの関連会社のサイトを出し、ログインして宇宙服のシステムのデモページを表示してくれる。

 沙織、フォルダされているファイルから女性のデーターを開く。

「多分これは私ね。ほら体重62キロなんて小柄な人間は私しかいない・・・パルテノンの時と現在の肉体の差は体重500g、体脂肪率5%の差しかない。問題ない」

 フィリップがバックアップデーター表を開き、システム項目を確認する。

「・・・これは本当に更新のタイミングが違っているなぁ。パルテノンのバックアップは週単位。こちらには毎日になっているもんな・・・あ、パルテノンは平均値計算だったのか。こちらは最高値、最低値確認で割り出しているんだぞ」

「・・・ということは、すぐにシステムに反映されということね。そして毎日だから、いつでも『数値が打ち込める』ってことよね?」

「打ち込む?」

「・・・あ、他の人間の数値もそうだけど、私の数値、少し水増しされているように感じるんですけど」

「水増し?誰かが改竄しているということか?」

 フィリップが聞き返す。

「じゃないと、今日のデーターは説明がつかない。・・・機械は正確よ。いつも人間が間違える。・・・これはアップデートされるタイミングで誰かが改ざんでもしないと、誤差は出ないと思う」

 フランスシスに再びモニターが切り替わって現れる。

「本来、自動バックアップで、その数値がダイレクトに行くが、変わっているということは誰かが変えた可能性があるということですね」

 質問するフランシス。

「信じたくないけど、数値をいじくる奴がいなけりゃ、誤差は出ないわね」

 フィリップがフランシスに聞く。

「・・・ここハンモックは、競合相手はいますか?」

「いきなりきつい所を聞くね。フィリップ」

「言えるわけないじゃない。企業秘密よそれは」

「いや、いいんだ沙織。ここのデーターは誰もが欲しがる最前線のデーターだから、それを欲しがっている。、・・・それより、うまくいってほしくない奴もいるということでしょう」

「妨害ってこと?」

 うなづくフランシス。

「いまだに、メインには一日に数億回アタックかけられている。そして残念だが、ハンモック内部にその仲間もいると思われる・・・」

「サボタージュをかけられている?」

「あって欲しくないことなのだが、事件を起こすとお金が貰える仕事もある」

 フィリップが沙織たちの次のグループが開始しているのみて、切り替えてみる。スピーカーから流れてくる実況音。


 プールではレイとユアンの第二班の訓練が始まった。その現場からの声がスピーカーから流れる。

「おかしい。浮くわ。酸素量。こっちも誤差があるようだわ」

 すかさずレイからも発信される。

「こちらはイキ苦るしい。酸素量が足りない」

 スタッフをみるコマンダースミス。

見られたスタップたち、『よく分からない』と手を広げる。


 フランシスも自分の部屋でモニター出ししているようだ。

それを見て一瞬、悩むが話し出すフランシス。

「ハンモックはラッキーだった。パルテノンの情報を使える権利を貰った」

「それを目玉にしてフランシスは、各企業を集めたということね」

「その通りですよ沙織」

 髪の毛をかきあげて、うなづくフランシス。

「他の事業者としては、最先端を行く我々が失敗してくれることを願っている奴がいるというとです」

「怖いわね・・・敵が隠れているかもしれないのか」

 沙織、疑問を口にする。

「それだけ宇宙事業が熾烈ということです」

 フランスが微笑む。

「わかったわフランシス。出来るだけ早くサポタージュを捕まえてね」

「そう、もう事故には絶対あいたくない。こちらは何も起こらないでと願うだけだ」

 フィリップがフランシスを見つめる。

「わかった安全を優先する。それは約束する」

 モニターのフランシスは真剣に返事をした。



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