5 寝て、世界救うの!
舞台は日本。でも、すごく荒廃してる。
街路には壊れた建物が崩れ落ち、その残骸が街を覆い尽くしていた。かつて賑やかだっただろう通りは、今や静寂と荒涼とした風景に変わっていた。瓦礫の山が道路を塞ぎ、街灯は無残にも傾いて鈍い光を放っている。
彼の足元には、傷ついた人々が座り込み、無力感と絶望の表情を浮かべていた。違法ドラッグでもしてんのか? その目には、過去の悲劇と未来への不安がにじみ出ていた。
彼らは助けを求めるように俺に手を差し伸べていたけど、どうすることもできなかった。
空には灰色の雲が広がり、その下には暗く重い雰囲気が漂っていた。
風が吹くたびに、荒野のような風景が揺れ動いて――
続きなんて見たくなかった。
相当うなされていたようで、唯光に起こされた。
夢の内容を告げると、唯光は真剣そうな顔で俺に迫った。
どうやら、本当に俺を茶化してるってわけじゃなさそうだ。
「それで、夢見た後はどうするの?」
「え? どうするって――これが本当に起こるとしたらこわいけど、今回のは予知夢じゃなくてただ普通の夢かもしれないし、別に何するとかはないかな……」
「わたしは、いつかある未来を見たんじゃないかなって思う」
「まぁ、たしかにリアルっちゃリアルだったな……。現実で起こるなんて、想像もしたくないけど」
「ただ、予知夢の時って、なんか見た時の感覚が微妙にほかの夢と違ってるんだよな。解像度が高いというか……。今回の夢もそうだった」
唯光は興味深そうに頷きながら聞いている。
「ねぇ、芭空君、言ってたよね? 体育会系の部活に入っても、あんまりなーって」
「え? うん。体育会系の部活選ぶやつは素直に尊敬するよ? 体力も気持ちも鍛えられるだろうし。絶対いい経験になる」
「うん、わたしもそう思う」
「ただ、俺としては違うのかなって。中学の時は文化部と運動部を兼部してた時期もあったけど、それが自分にとっていい時間だったかっていうと、いまいちピンときてないんだよな。俺は運動の能力も人並みだし」
「能力……? それだよ!」
「え?」
「いいこと思いついた! わたしたち、寝て、世界救うの!」
「いやいや、はっ?」
何をいってるのか、正直よくわからない。
「予知夢を見られることって、間違いなく芭空君の能力なんだよ! その力で、さっき見たこわーい世界を救うの。夢で世界救っちゃう部活をつくるの!」
「えーと? 待って、これ部活の話?」
唯光、興奮して突っ走ってるけど。待って、一回、頭を整理したい。
「うん。わたしね、思うんだけど、人って一人じゃなかなか大きなことをできないと思うの。でも、部活なら最低5人だっけ? みんなで協力すれば芭空君の能力ももっと活かせるようになるんじゃないかな? 」
「予知夢が俺の、能力……。って、いやいや、ちょっと待って。勝手に進めてるけど。ついていけてない。俺、冷めてんのかな」
「冷めてない。でもわかって。芭空くんは、なにか成したいって思ってるってことだよ?」
「俺が、なにか成したい?」
何か、心に響いた感じがした。
「うん。だって、そう思ってるから、成せないのがわかってる運動の部活を避けてるんでしょ」
「まぁ確かに……。潜在的にはそうなのかもな」
「うん! 決まり! これで芭空君は面倒な部活探しをしなくていいし、興味もてない部活に加入して無駄な時間を奪われる必要もなし。はいっ、これ、芭空君の好きな”合理的な”時間の使い方! わたしも気になってる明晰夢の研究ができるし! いいアイデアだと思わない?」
「……確かに?」
「へへんっ。もっと褒めてくれてもいーんだよっ?」
ぐうの音も出ない。てか、唯光はディベート部とかとか入ったほうがいいんじゃない?
「ってことで、芭空君、夢を見る係。そして私が、その分析する係だとして、あと3人必要だね!」
俺はもう、唯光のペースに任せることにした。
彼女はあまりにも可愛く楽しそうに話すし、なんだか俺自身、彼女といれば面白い高校生活になる気がしたからだ。
予知夢をなにかに活かせないかなって思ってたのは事実だし。
高校生活は一回きりだからさ。俺は一番になれないことに挑戦するくらいなら、もっと確実に結果が出ることをしたいかなって。唯光と一緒に、”俺だからできる何か”を成せるんじゃないかなって思ったんだ。
――それが世界平和だなんてスケールでかいことだとは、この時は思いもしなかったんだけど。




