4 夢を見た。その内容は……
「わたしと寝てくれない?」なんて雑なお願いをされて、俺は素直に夢を見ることにした。
桜庭さんのために念の為訂正しておくと、あの一言は「わたしの前で睡眠をとってくれませんか」という意味でしかなかった。
そして桜庭さんは、その夢の内容を聞かせてほしいと。
で、俺らは校内で寝やすい場所と言えば――保健室じゃね? って結論になって。
向かう途中、桜庭さんといろんな話をした。
俺と友達になりたいって、ほかの友達はいいの? とか。
「今、一番興味あるのは芭空君だから。だめかな?」。
「いいけど。ていうか、俺のこと下の名前で呼ぶのはいいんだけど、勘違いされても知らないよ?」
「それはいいけど。わたしのことは唯光って呼んでくれないの?」
……勘違いされてもいいのかよ。
「え、じゃあ……呼びます。唯光って、いい名前だよな」
下の名前で呼んでいいんだっていう動揺は、多分表には出てないはず。
「えへへ、ありがとう」そんな俺の動揺も知らず、少し照れながら笑う彼女。
「芭空君、部活はどうするの?」
「あー。俺、帰宅部が良かったけど、何かしら入らないといけないんだろ?」
「そうみたい。でも、どうして帰宅部がいいの?」
「体育会系の部活に入っても、オリンピック選手になれるわけじゃないし。俺一人が人生で成せることなんてたかが知れてるなって思ったら、別のことに時間を使いたいって思わね?」
「なるほどぉ、芭空君は合理的だね」
「あー、そうかも」
「だから、予知夢なんて非科学的で合理的でもなんでもない体験をして、戸惑ってない?」
少しドキッとした。
当たっていたから。
トーストが焦げるとか予知したところで、なんの役にも立たない。メリットがない。
だから、予知夢が見られたところで周りへの賑やかし? みたいな。そういうのでいいかなと思ってる。(で、実際は自己紹介で話して自滅したけど)
「まじでもっと有益なこと予知できたらいいのにな」
「たとえば?」
「えっ? うーん。定番だけど、宝くじの当選番号とか?」
「あははっ、ベタだね!」
唯光は話しやすくて、すぐに友達も大勢できるだろうなと思った。だから、なんで俺と? っていうのは、消えなかったけど。
睡眠とか夢の話に興味があるのは本当だろうから、あんまり詮索したり、変に疑うのもやめとこうと思った。
保健室について、中に入ってみると先生もいなければベッドが空いてたので、いつでもどこでも2.5秒で眠れることが特技の(ほんとシンプルに自己紹介ではこれ言えば良かったと常々思う)俺は、いつも通り2.5秒で寝て見たが―― この時の俺は、とんでもない夢を見たんだ。




