3 明晰夢って?
続きは放課後ね! って言われて、昼休み後の時間、俺は気が気じゃなかった。
その後は学校のルールの説明だったり案内を担任から受けたけど、とりあえず、誰もが何かしらの部活に入らないといけないらしいっていうことだけ把握した。まじかよ。
まぁ、それ以外の必要な話はそのうち自然と耳にするだろうし、都度確認すればいい。
そのへんは器用にできるタイプだ。
「で、どんな夢の内容だったの?」
「え?! いやー、内容はちょっと言えませんけど」
「えぇー?」
どうやら彼女は冷やかしではなく、本当に興味があるらしい。現に、放課後真っ先にクラスでアウェーな俺の席に飛んできて、そんなことを聞くのだから。
「ちょっと場所変えない?」
俺はいたたまれなくなって、廊下に出た。「校内のお散歩しよっか」なんて可愛く言う桜庭さん、なんか俺に気でもあるのか? ってか、なんで? どうして俺なんだ?
「でも、なんでそんな気になるの? 正直、人の夢の話なんて、聞いてもメリットないじゃん?」
俺はハッキリさせたくて聞いた。
「メリットって! 芭空君面白いね。んー……。そうだな。わたし、明晰夢っていうのに興味があるんだよね?」
「めいせきむ?」
「そう。明晰夢っていうのは、夢の中で自分の行動を操れるの! 理想の夢を見られるって言ったら、イメージつくかな?」
「あぁ、なんとなく。桜庭さんは夢で何かしたいことがあるってこと?」
「んー? えへへ」
桜庭さんは少し考える素振りをして、ちょいちょいと手を小さく動かし、俺の耳を貸してという仕草をする。
俺の耳元に、桜庭さんの息遣いが伝わる。
「まだないしょだよ」
それだけでもドキッとしたのに、
「芭空君のえっち」
「へっ、えっ?! いや、そういうつもりじゃ」
続けて言われて、全身が硬くなった。緊張で。変な汗出た。 っていうか、えっc(略)って……桜庭さんこそそういうつもりなの?! (そんなわけない)
俺はどぎまぎするけど、
「そうだ、芭空くん」
そう言って、桜庭さんは足を止めたから、俺は耐えて、平然と振り返る。少し後ろで止まった桜庭さんを見ると、あれ? なんだか、頬を赤らめてもじもじと恥ずかしそうな仕草をしている。
「はい?」
「あの、その……変なこと言うんだけど」
「うん。なに?」
「わっ、わたしと寝てくれないかな? 今、ここで」
「は?」
勇気を出したって感じの言い方だった。でも、突然そんなこと言われて、思考停止して固まってしまっても、おかしくないよね?
だって俺、健全な男の子だもん。