12 健康診断
健康診断の日がやってきた。
体育館は、生徒たちのざわめきで溢れかえっていた。両隅に、健康診断のための仮設ブースが男女別に設けられている。
男子生徒たちは列に並び、次々と健康診断の受付を済ませていった。
その中に、俺と桐生。
「俺、健康診断って好きなんだよな」
桐生が呟いた。
「え? なんで?」
「なんでって。健康は資産だろ? 将来のリスクチェックができるわけだからな」
「さすが桐生。意識たか……」
俺は身長伸びたかなー程度しか気にしてなかったぞ。
さて、桐生と一緒に列に並んでいると、パーテーションで区切られた奥には女子生徒たちが集まっている。
パーテーション越しでもわかる。
じゅのの声が目立つのなんのって。
友達とワイワイ騒いでいるのが聞こえる。
「やばっ。ブラつけてきちゃった」
「うそ? あれほど先生脱いで体操服だけって言ってたのに」
「金属のワイヤーないからいいと思ってた。今外していいかな?」
「いいけど、外したの手で持つしかないよね?」
「まぁ…… こうやって、外したのは服の中に入れて。っと」
「あ、いけてる! それならバレないよ!」
「検査の時だけさっと外出せばいいもんね。てか昨日食べすぎて少しお腹ぽっこりしてるわ!……ふんっ。これでどう? 凹んだ?」
「んー。ギリかな?」
聞いちゃ悪いとは思いつつも、聞こえてきてしまうじゅののよく通る声。
なんちゅう会話してんだよ、と俺は心の中で突っ込む。
***
その頃、女子サイドでは、みもが待機列に並んでいた。その前には、唯光。
(緊張するなぁ)
「みも、大丈夫?」
唯光から声をかけられて、みもは小さく頷きながらも、緊張した笑顔を浮かべていた。
「う、うん、大丈夫。ちょっと緊張してるだけ……先生、男の人かなぁ」
唯光は優しくみもの隣に立った。
「大丈夫。私たちみんな一緒だから」
「うん……っ!」
「次の方ー」
「あ、ごめん先呼ばれた。みも、あとで合流しようね!」
「うん!」
***
先にじゅのがパーテーションで区切った検査エリアから出てきた。
すぐに続けて出てきた唯光を見て、「唯光ー!」と駆け寄った。
「おつかれさま。どうだった?」
「身長1センチ伸びてた!」
「すごい! 私も身長ちょっとだけ伸びてたよ。でも体重も一緒に増えちゃった」
「それって成長してるってことでしょ? いいことじゃない」
「そうかな? でも唯光のスタイルって理想的だよね。羨ましい」
「そんなことないよ。じゅののほうが健康的で素敵だと思う」
その後、健康診断の結果表を手にした唯光とじゅのは、体育館の入り口付近でみもを待ちつつ、それぞれの結果を眺めていた。
「唯光、みてみて。私の身長と体重。ここ変えたいんだよねぇ」
「えっ? そんなに気にしなくてもいいんじゃない? 私はね、こんな感じ」
「ひょー」
じゅのは眉を寄せて、真剣に唯光の結果を見ている。
「てかさ、みものスタイル見ると、ちょっと羨ましいんだよね。二次元体型っていうか」
「わかる。本人がどう思ってるかわからないし、褒めてるつもりでも嫌な気持ちさせたらって思うと言えないけど、造形美感じるよね」
唯光もじゅのも、うんうんと頷きあった。
その頃みもは、唯光とじゅのからまさかそんな話をされてるとは思わず。
まだ別の検査の列にビクビクしながら並んでいるのだった。




