夢の幕間
黄昏時、誰そ彼時、影法師が、笑いながら、
お前は馬鹿だなあ、まだ、生きている。
と、低く、言う。
生きて居ちゃ悪いか。
そう強く答えると、
鴉たちがぎゃあぎゃあわめきだした。
どこかで死体が上がったぞ。
夢の幕間。母を殺して、血まみれになった自分の腕を眺めていた。
月夜の晩、狂人と墓守りの仕事をしている。
最近、こんな夢ばかり。彼岸からのお誘いか。
薬が増えます。独り言も増えます。
部屋の片隅に転がったビール瓶に、西日が射しこんで、美しく鈍色の光を放っている。
部屋の隅で、小鬼が嗤った。
蝉時雨、夕立、蜃気楼、陽炎、炎天下の夏には不思議なことが起こります。
宿場町の片隅で、小鬼が電柱の裏で桜の枝を片手に踊っています。
髪の長い女が、向日葵を片手に、通り過ぎてゆきます。
彼女は、遠い昔に亡くなった母親。
カーブミラーの前に靴を並んで置く遊び。
真っ赤な提灯を持った般若の面の少女が、かき氷屋さんに入っていった。
なだらかな坂、見上げると、入道雲。何処までも続く空。
子供を失った夕暮れの学校の校庭は寂しん坊。
花子さんが、トイレで花占いをしながら、鼻歌を歌っている。
誰もいない校庭に落ちているボール。
西日の差す音楽室のメトロノームの長い影。
美術室の、皆で作った粘土の『手』が、十も二十も、水を欲しそうに宙を掻いている。
お坊様が化物になって、人を呪う。
まさかとは思うが、うちのお寺も…?
古庫裏婆が取り憑いているのさ。
鬼やらいを呼べ。そう、旅の雲水さんに言われて、黒電話で電話すると、
やってきた鬼やらいが、お坊様を食べてしまった。
と、思ったら、次の日目が覚めると、いつものお坊様が、
優しそうに微笑んでいる。とっぴんぱらりのぷう。
これは、狂人の夢日記です。
読むと、狂い死にするという、「ドグラ・マグラ」
私は読んだことがないのですが、
幻のようなことが書かれているのでしょうか。
こういう危険な本は宝物にして、机の奥深くにしまっておきます。
母親に見つかったら、鬼になってしまうからね。