10/58
僕は感謝した
遊び疲れて、帰り道。隣を歩く妹はまだまだ元気そうだ。
「あのさ、千夏」
「んー?」
夕陽が沈む。
「……今日はありがとう」
「…………あははっ、なぁにお兄ちゃん、急にどうしたの改まっちゃって!」
オレンジ色の暖かい光に照らされた妹が笑っていた。…………なんか、はぐらかそうとしている気がする。でも、僕はちゃんと言いたかった。
「今日、千夏が一緒にいてくれなかったら僕、多分もっとずっと凹んでた」
「!…………うん」
「千夏がいてくれたから、昨日のことを考え過ぎずにすんだし…………それに、何よりさ。今日、色々新しいことやって、わくわくしたんだ」
陽が少し隠れて、妹の表情に影が落ちる。
「…………あのさお兄ちゃん。まだ、振られた人のこと……諦めないの?」
「…………分からない、かな。でも、ちょっとは冷静になれたと思う。だから、この夏休みの間に、もっと考えてみるつもり」
「そっ、か…………うん…………うん! 私もそれがいいと思う!」
今日は父さんと母さんが家にいるみたいだ。明かりのついた、僕達の家が見えてきた。