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Eternal Fire  作者: 犬村犬太郎
3/4

第2話 運動会作戦会議

 『先生、ケイは大丈夫何ですか』


 『倒れた原因は疲れですよ。ただ……』


 『ただ、何ですか!』


 『ただ、精神が


 誰かが心配している。精神がどうしたと言うのか。

 あぁ……頭が痛い。


 目を覚まして最初に見えたのは、木製の天井だった。肌色の綺麗な木だ。

 見渡すと、右には大きな窓。左には病院の仕切りカーテンのような物がある。

 足音が聞こえてきた。スニーカーに似た音だ。こちらに近づいてくる。

「ケイ?」

 エブリンがカーテンの向こうから顔を出す。

「ケイ?……ケイ!起きたんだね。大丈夫?身体、だるくない?」

「気にする事ない、領域の疲れ程度だよ。それより、エブリンは大丈夫なのか」

「私は治癒薬(ちゆやく)飲んだから。後は安静にしてれば」

 それは良かった。

 でも、あれなんでだ。エブリンには自分のベッドがある。あの足音は何だったのだろうか。

「この病室、俺ら以外に誰かいるか」

「いや、いないよ」

 まあ、何もないだろう。

「いやーー!!」「止めて。止めて!!」「助けて……」

 喧騒が鳴り響く。

 一体、何が起こったのか。俺はベッドから起きようとする。起きようとしたが、その夢は断ち切れた。

 かろうじて、首だけ動く。動かすと、黒い、けれども赤く、そして紫のオーラを纏った鎖がベッドから湧き出るように足を、脚を、腕を、手を、胴を、胸を、縛り付けている。次の1本がベットから現出する。その鎖は明らかに顔を狙っていた。

「エブリン。助けてくれな……いか」

 エブリンも同じ状況にあった。

「やぁやぁ。滑稽なものだね~。反逆者が蹂躙される姿は」

 足音が聞こえる。さっきとは明らかに違う。重厚で鉄のような音。何より、水が垂れる音が混じっている。

 足音の原因が顔を出す。ちょびひげを生やし、青い目をまぶたが包んで細くしている。黒い中折れ帽を被り、黒いマントを羽織り、黒い長ズボンを穿き、刃が赤く染まった、柄の黒い刀を持っている。

「お前、誰だ」

 俺は問う。

「悲しいな~。殺し合った仲じゃないか」

「答えないならいい。それより、この鎖は何だ。外の叫び声は!」

「おいおい。もう分かってるんだろ。私が殺したんだよ。鎖は私の魔力だよ」

 そうか。なら、()るしかないな。

 俺は身体を揺らす。だが、鎖はびくともしない。しないならば、

「ギャザーファイヤー」

 火の玉をベットに接触するように出現させる。

「シュリンクキューブ」

 が、火の玉は突如、現れた立方体に包まれる。

 それと同じくして奴が喋り始める。

「ふっ……悪かったねえ~。もう、その玉、使えないよ~」

 火の玉を包むそれは、火と共に収縮していった。

「さて。皆、大人しくなったから目的を話そう。君には、記憶を取り戻して欲しいからね。じゃあ、これを見てくれ」

 奴は自分の着ていた黒いTシャツを胸から破り始めた。

 そこにあったそれは、つまりその傷はひし形に広がっていた。もうすでにふさがっているようだった。

「これはね、君が七年前に付けた傷だよ。この復讐をしに来たんだ」

 そう言うと奴は、ベッドの横に近づいて、吹っ飛んだ。これには一切の比喩がない。窓側に飛んだ。その壁は完全に破壊されていた。

「ケイを傷つけないで」

 彼女は、俺らの救世主は言った。

 誰、だろうか。

 小鳥のような声だ。自信に満ちあふれてる。

 銀髪のショートボブ、その片側に花びらが白く中心が黄色い花の髪飾りを付けている。横顔しか見えないが、蒼天のような目、少し高い鼻、細い唇、その頬は痩けてるでもなく大きくもない。青いマフラーを首に巻き、動きらしさを重視したのか少し大きいラフな格好をしている。更にその服に青と白が綺麗にマッチして清潔感を醸し出している。

「君は……あの時の」

 奴はゆっくり起き上がる。その肩には彼女の短剣が刺さっている。

「なるほど。ならば、君も彼と同じよう‥に‥に、うっ‥アアアァァァァ!!」

 奴は悲痛の声を上げる。

 奴の、胸の傷から刀が生えている。いや、後ろから貫かれている。

 そして、刀を生やした張本人は騎士ランク18。現アクセル王国公騎士団団長、ウォルター・ガルシア。彼の魔力は(えい)。自分の姿を視認させなくする。故に彼の姿は見えていない。見えているのは刀だけ。たぶん、処される恐怖を与えるため。殺されるタイミングを教えるため。

「この国には病院が少ないんだよ。意味、分かるよね」

 彼の声だけが聞こえる。澄んでいる。冷静な声だ。

陽世界(ようせかい)

 彼の一言は技名だ。

 その瞬間、そこは変貌を遂げた。光に包まれた病院。この場にいる全ての存在の視力を奪う。いや、2人は見えているようだった。ウォルター・ガルシアとこの場、唯一の敵。

 彼は奴から刀を抜き、奴の正面に立つ。

「この刃が見えるか。この刃が貴様の命日を刻む刃だ。月光斬(げっこうざん)

 病院を包む光が彼の刃に集まる。

 彼が刀を振った。

 ベッドが、カーテンが、床が、天井が、人が赤く染まる。見える。奴の体が。あばら骨が半分程、かけている。筋肉と内臓があるべき場所は穴が空いている。顔がへこんでいる。鼻は、目は、口はどこかに失われた。

 いつの間にか、身体が動くようになっていた。


 俺らは、正確には俺ケイ・アンダーソンとエブリン・ウィリアム、そしてウォルター・ガルシアの三人はガルシアの家に来ていた。

 この家も彼と同じように外見が見えなくなっていた。更に、内装すら見えない。

 俺とエブリンは透明な部屋に戸惑っていると彼が、

「あぁ……悪いね」

 と言って、指を鳴らした。

 すると、透明だった部屋は色を取り戻していく。

 部屋は何もなかった。俺達の後ろに小さな窓、窓のある壁にベットがニつあるだけ。ベッドは赤いマットだけで枕も見えない。

「彼女は、どうしたんですか」

 俺は問う。

 彼女とは俺らのもう一人の救世主。銀髪の子だ。

「彼女は僕を呼んで、病院に案内したら颯爽といなくなってしまったよ」

「そうですか。質問責めになって悪いですが、結局、あの人は……銀髪の子と私達に攻撃したのは誰だったんですが?」

 エブリンが重要なところを質問する。

「彼女の方は、騎士ランク4。不意打ちに特化した魔力を保有している。僕の妹だよ」

「「えっ!!」」

 ニ人で驚いてしまった。

「もう一人の方は分からない。でも、言動から明らかに君を、アンダーソンを狙っていたね。だから、一応大事をとって当分は家に泊まるといい。ここからなら明日の運動会作戦会議の会場に近いしな」

「作戦会議?」

 作戦会議とは何だろう。運動会に関係あるんだろうか。

「一人一人の出場種目を決めるんだよ」

「えっ?でも俺が運動会に出場するなんて言ってないと思うんですが」

 俺は確認をする。

「あぁ……いや、今のは君に言ったわけではないよ。最初の方は君に。後の方はエブリンに言ったんだ。ここにあるニつのベッド、使っていいからさ」

「は、はぁ……分かりました」

 俺はガルシアの意見を飲んだ。

 隣でエブリンも頷いている。納得しているのだろうか。同じ部屋なのに。


 翌日。

 昨日は何もなかった。俺としては巨乳好きという訳ではないから、何もなくて当然何だがただ近くに美少女が寝ていると思うと、少し本当に少しだけ欲情しないこともないかもしれなかった。何より、エブリンのベッドには接近した者に攻撃する結界が張ってあった。これも見えなかったけど。

 会場までは本当に近かった。十分か、否もっと早かった。もしかしたら、五分なんて事もあるかも知れない。

 作戦会議はすぐ終わった。一時間くらいだった。

 主な競技は100メートル走、200メートル走、1500メートル走、魔力有り騎馬戦、更にその逆。まだある、綱引き、大食い競争の七種目だけ。

 このうち俺が出るのは魔力無し騎馬戦とエキシビションマッチ。

 エキシビションマッチは優勝組の代表がアクセル王国最強と言われる存在騎士ランク18、ローラ・ホワイトと闘う、勝敗には一切関係ない闘いだ。

 エブリンの薦めでこれに出場する事になった。

 やるからには全力。

 そして今、ローラに勝つためエブリンとクエスト攻略をしている。

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