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プロローグ 予兆
酷い暗闇だ。
人殺しをしようとしている自分の性根の悪さと融合して、その暗闇は月明かりすらも遮っている。
暗闇の中を憎しみと家訓だけに身を任せて、森の中をさまよっている。
いくら歩いただろうか。近くから音が聞こえてくる。水を踏む音。だけど、それだけじゃない。これは水に浸かった草の音。音は足元から聞こえる。
俺は直感で理解した。「奴が近くにいる」
少しずつ歩みを速めていく。いや、恨みを込めた興奮が脚の動きを乗っ取っていた。
強くなっていく音。更に鉄の匂い、雨に濡れた鉄棒の味。
その味を、匂いを、音をたどった先にその、洋館は存在していた。