個性豊かな花達との出会い
「え?あの、ちょっと言われてる意味がわからないんですけど……」
赤い髪の男が言った【異界から来たりし花巫女】って何?
どういう事?しかも会いたかった?!
何度目かのパニックに陥ってしまい、目がぐるぐると回りそうだ……。
米神に手を当て、俯く燐。
「落ち着いて。別に君に何か危害を加えようって訳じゃない。ただいくつか質問したいんだ。なに、簡単な事だ!」
明らかに不安そうな表情になった燐を見て、赤い髪の男は笑顔でそう言った。
「そうだなぁ……よし!!まずは自己紹介から始めようか。俺の名前はレア、29。赤の花頭だ。後ろにいるのが、俺の花従のルイだ」
「よろしく」
「レア、さん……と、ルイさん」
「そうだ。よろしくな!!ロイに何か聞いているか?」
赤い髪の男はレアという名前らしい。
見た目はスポーツ万能そうで、身長が高く、嘘がつけなさそうな真っ直ぐな印象。
後ろに立っているレアと同じ赤い髪の男はルイというのか。
レアと同じぐらいの身長だけど、少し細身で切れ長い目。
ここにいるって事は聞いてた通り、花頭もしくは花従だとは思っていたけど…やっぱりそうなんや。
にしても、赤のって何……?
あと、一番気になるのが。
「あの……、ロイさん?というのはどなたの事ですか?」
レアに質問すると、少し困ったように笑いながら答えてくれた。
「ああ……、此処に君を連れてきた灰色の髪の男がロイだ。…なんだ、名前も教えてなかったのか?ロイ」
「申し訳ありません」
呆れた表情でレアはロイに問いかけるが、等の本人であるロイは真顔で謝るだけだった。
「まあまあいいじゃん、そんな事♪話を続けよー!」
レアの右隣に座っている、オレンジ色の髪の男の子が満面の笑顔で話を促した。
そんな彼の後に続くように白い髪?の男が眉間にシワを寄せ、ため息を吐く。
「全く……緊張感のない奴だ…。ロイ、此処に来るまでにこの女性に何を説明した?」
「はっ。この国の事を少し、それから花頭と花従の存在はお伝えしております」
「なるほど」
そう言って両肘をつき、白い髪の男はジロッと燐を見る。
「(あぁ〰️……なんやねんなぁもう!!居心地の悪さMAXレベルやぁ……)」
蛇に睨まれた蛙の様にオドオドしてしまう。
何も悪いことはしてないのに……。
その時に。
「はい、そこまで。さっきも言ったが、自己紹介から!!俺達はもう言ったぜ。さて、次は誰の番だ?」
仕切り直しと言わんばかりに、パンパンッと手を叩き、この場の空気を変えたレア。
「あー……じゃあ、次はオレンジの花頭に頼もうか」
辺りを見回してニヤリと笑い、右隣の男に声をかけた。
「はいはーい!僕はアラン、23歳でオレンジの花頭だよ♪で、こっちが花従のデューク。よろしくね♪」
「めんどくさいけど、よろしく」
「はぁ…」
どちらかというと幼い印象を受ける。
元気でニコニコと笑顔のアランは、男!っていうよりかは男の子って感じで……。
歳もここにいる人達の中じゃ若そうやけど、花頭って地位にいるって事はかなりのやり手なんかな?
花従であるデュークさんはアランより年上みたいだけど、なんというか……。
もう全身から気だるそうな雰囲気が醸し出されている。
自己紹介も「めんどくさいけど……」って前置きがあったな。
「じゃあ次は僕ですね。僕はフラン。そこにいるアランと同じ23歳で、青の花頭です。そして、こちらが僕の花従のテオです。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします!!」
続いてご丁寧にペコリと頭を下げて挨拶してくれたフランは、線の細い、美少年と言っても過言ではないアランと同い年ぐらいの男の子。
ニコリと微笑む顔は、思わず母性愛を擽られるッッ……!!
……今、ほんまに少しだけ……すこーしだけ!
…ショタコンの気持ちがわかったような気がする。
あの笑顔はグッとくるものがあるわ……。
そう燐は内心思った。
そして、フランの後ろにいるテオに目をやる。
見るからに眼鏡が似合うTHE美人系お兄さん!!って感じで、フランと二人並ぶと絵になるなぁ。と考えていた時、ふいにフランとアランが気になった。
歳が同じだからそう思うのか、なんだか似ている気がする……。
性格は真逆そうだし、顔もあまり似ていないけど、雰囲気?というかなんというか……何かが気になる。
燐が頭の上に?を飛ばしながら二人を交互に見ていると、アランが笑いながら言った。
「ははっ!!お姉さん、そんなに見られると僕達、穴が空いちゃいそうだよ♪」
「え?!あ、ご、ごめんなさい」
「謝らなくていいよー♪僕とフランが気になるの?」
「いや、その、なんか似てる気がして、つい不躾に見てました……。ごめんなさい」
流石に失礼な事をしたと思い、謝る。
チラリとフランを見ると、彼は相変わらず綺麗に微笑んでいる。
「似てる、かぁー……。まあ、似てるのは当たり前だよ!僕とフランは双子だからね♪」
「あ、やっぱり?どうりで……って、えええぇぇぇぇ!!ふ、双子?!」
似てるとは思ったけど…、まさかの双子!!
キョロキョロと確かめるように、二人の顔を交互に見る。
「双子と言っても僕達は二卵性なので、あまり気づかれた事はないんです。だから初見で気づかれた事に驚きました」
「いや、あの、気づいたと言いますか、何となくあれ?って思っただけで……」
ワタワタと手を動かし、説明しようとする燐。
「ほんとに凄いねー、お姉さん♪まあ、なにはともあれよろしくねー!!」
「改めまして、よろしくお願いします」
「こっ、こちらこそ!」
年下のはずなのに、何故か安心してしまう空気。
やっぱり国の偉い立場にいるから、そう感じてしまうのか?
顎に手をあて、不思議がいっぱいだな……と1人納得していた。
「次はこちらの番だな。俺は白の花頭、エルド。あなたを連れてきたのが俺の花従でロイ。以上」
「は、はい…」
「…」
ロイがペコッと頭を下げ、エルドがそう言った後に、シーンと静かになった。
「……」
「……」
「……」
エルドがジーっと燐を見ている。
いや、見ている……というよりは、睨んでいる?
「(私は何で睨まれてるん…?!)」
たじろぎつつも、燐は負けじとエルドを睨み返す。
先に目を離した方が負けだと言わんばかりに、お互い睨んでいる。
ジー。
その内に火花がバチバチとしそうな視線の応酬。
「おいおい。お互いに見つめ合うのはそれくらいにしておけよ?話が進まねぇし、そうゆう事は後にしろ」
「「見つめ合ってない!!」」
それに終止符を打ったのはエルドの隣に座っている涙黒子に艶のある黒髪の男だった。
「(この人……、なんちゅう色気やっ……!!)」
ようやくエルドから視線を外す事ができ、声の主を見る。
……此処にいる人達に言える事だけど、どうしてこんなに美形ばかり集まるんだろうか。
正に類は友を呼ぶ。
イケメンパラダイスか。
イケメン過ぎて怖い。
燐の心中など知らない彼らはさっさと話を続ける。
「俺はガイア。黒の花頭で、こっちは花従のジルだ。よろしく」
「よろしく~♪何かあればいつでも相談してねぇ~♪こーんな数の男達に囲まれて心細いでしょ!!」
ウィンクをパチッとひとつ。
それも絵になるな……。
「よろしくお願いします。ジルさんは、男性ですよね……?めっちゃ綺麗なんで、つい……」
見た目も綺麗だけど、雰囲気がどこか女性的な感じがしたので、失礼かと思いつつ確認した。
ガイアもジルも二人は艶のある黒髪だが、ジルは胸下まである長い髪のせいかより女性に見える。
ロイはジルよりも更に長い髪だが、ジルの様に女性的な雰囲気はない。
燐の言葉を聞いたジルは眼をキラキラと輝かせ、満面の笑顔で頬に手をあてる。
……満更でもなさそうだ。
「あらやだぁ~、綺麗だなんて♪ありがとうねぇ~♪性別は男だけど、ジル姉さんって呼んでちょうだい?可愛い女の子は大歓迎よ!!」
「あ、はい。え、と、……ジル姉さん?」
「キャーー!!ねえ、ちょっと今の聞いたぁ?!ガイア!!この子、すっごく素直で可愛いわぁ~♪」
「ああ、聞いたよ。良かったな」
ジルはガイアの首に抱きついてユラユラと揺れているが、当の本人は嫌がる事もなくジルの好きにさせている。
遠目で見るとただのバカップルにしか見えないが、二人共性別は男。
……綺麗だから絵になるけど。
ジル達の隣にいたロイがボソッと一言。
「ただのオカマだ……(ぼそっ)」
ピキリ!!
空気が凍る音がした。
「はぁん?!今何て言った?!」
さっきまで綺麗に笑っていたジルは、眉間に皺を寄せ般若のような顔でロイに詰め寄る。
「オカマにオカマと言って何が悪い?事実だ」
「あのねぇ!!オカマじゃなくて、オネエなの!!」
「同じだ」
「ムキーーッッ!!可愛くない!可愛くないわよアンタ!!」
淡々と言い返す美形なロイと感情のままに喚く美人なジルが喧嘩をしている様は、とても迫力があり、なんというか……見ていて引く。
「えぇ……ちょっと、誰か…止めないんですか……?」
何とかして欲しいという願いを込めてキョロキョロと周りを見るが、彼らの花頭であるガイアもエルドも好きにさせておけ状態。
「えー………まさかの放置……?」
それなら他の花頭は?!っと見るが、ほとんど我関せず。
どうしよ、止めるべきなんか……?
オロオロしながらそう思っていた時。
ダンッ!
「お前達!!じゃれあいはそこまでだ!!静かにしろ!!」
机に手を着き、レアは二人を一喝した。
「レア様…、ですがっ!先に喧嘩をふっかけてきたのはコイツです!!」
「売ってない。事実を述べたまで」
「あんたねぇー…ッッ!!」
「もういい。その続きがしたければ退席しろ!!」
「「も、申し訳ありません……」」
「ガイア、エルド!お前達も自分の花従はしっかり教育しておけ。いいな?」
「……ふん」
「はいはい」
黒と白の花頭のやれやれと言わんばかりの態度に、レアは頭を抱えたくなった。
「ふぅ……すまない、騒がしかっただろう。コイツ達も悪いヤツではないんだ。許してやって欲しい」
「いやっ、何にも気にしてないんでッッ!謝らんで下さい!!」
頭を下げるレアを慌てて止める。
彼自身は何もしていないしむしろ騒ぎを止めてくれたから、感謝するのは私の方だ。
チラリと騒ぎの原因であるジルを見るとプンプン!!と効果音がつきそうなぐらい頬を膨らましてそっぽ向いている。
反対にロイは何事もなかったように顔色一つ変えずにただ立っている。
「ほんまに大丈夫なんで!!」
「ありがとう」
頭を上げてくれと言うと、レアはホッとしたような表情でお礼を言われた。
「さて、話に戻ろう。俺達は一通り自己紹介は終わったから、次は君の事を教えて欲しいんだ。【異界から来たりし花巫女】」
「………っ、はい」
レアにそう言われ、私は悩んだ。
本当の事を話すべきなのかを……。