甘えに対する怯え
今日は異常なほど学校に行きたくない。何もしたくない。
「うぁああ……死にたい……ああああ」
昨日、母親が癇癪を起こし、私はスマホを取り上げられた。私の態度に嫌気がしたらしい。話をすれば怒り、流せば馬鹿にしてると怒る。
「こんなものがあるから悪いんだよ!」
母親は、勝手に私のSNSのアカウントを開いた。
「なにこれ……」
そこには、私の生活の不満を沢山書いたものが表示されていた。絶望で私は崩れ落ちた。
「何一つ不自由なくしてあげてるのに、親を馬鹿にするな。何もやってないくせに。ふざけんなよお前。」
「ごめんなさい……」
過呼吸気味になりながらも、力を振り絞って声を出した。
「何悲劇のヒロインぶってんだよ。ふざけんなよ。」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
「ネットに書き込んで、なんで親が悪いみたいな内容を拡散するわけ?色々な話聞いてんだよ。回ってきて、あの子の親頭おかしいとか、流れ込んで来るんだよ。あーもう疲れた。やってらんない。」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
必死に謝るしかなかった。下手に喋れば、もっと悪化してしまう。そもそも、私は匿名でやっている。誰かに流しているわけではなく、不満の吐き溜めとして使っていた。
慈悲を与えて欲しいわけでもない。不満を撒き散らしているという感覚を得たかっただけだ。
「ごめんなさいじゃ、ねえんだよ!どうしてくれんだ!」
私の髪の毛は思いっきり引っ張られ、顔面床に叩きつけられた。
「痛いよ……」
心身共に疲れ果て、無意識に涙が出てきた。涙を流せば、もっと状況が悪化してしまうので堪えていたが、我慢出来なかった自分を責め続けた。おまけに言葉も出てしまった。
「こっちの心の方が痛んでるんだよ。おい。」
顔を叩かれ、蹴られ、私は無力な赤子の気分だった。もう何も感じたくなかった。
「うああああああああああ!!」
張り詰めた思いが出てしまい、大声で叫んでしまった。かかとをドンドンと、床に叩きつけたり、壁を蹴ったり殴ったりした。こんなことは初めてだった。親には手を出してはいけないと教わり続けていたので、身体は物に当たっていた。
「もおこんな生活いやだあああ!あああああああ!!」
狂ったように泣き叫んだ。自分は何をしているんだと頭の中では呆れていた。私は限界を感じ、すぐさま二階の自分の部屋に行き、ベットでうつ伏せになった。
親は追っては来なかったが、泣きながら「何がいけないの」と言っているのは聞こえた。
数分後、寝ているところに父親がやって来た。
「何してんのお前。」
背筋が一瞬で凍りついた。静かに目を瞑り、布団を被ったが、布団から引き離され、顔をつかまれ、
「いい加減にしろよ。なぁ!こっちも好きでこんなことしるんじゃねぇんだよ!」
また流れる涙。奥歯まで指で押されているので、叫んでもボソボソしか聞こえない。息が全くできず、ショックで目が上を向いてしまった。
「腐った人間みてぇな態度しやがって。」と言われた直後、壁に頭をぶつけさせられた。クラクラしてしまい、気持ち悪くなって吐いてしまった。ご飯は食べていなかったので、液体が大量に出てきた。これを見ると父親は、ドアを殴り、穴を開けた後、一階に降りていった。
夢だったらまだマシなのに。何度も思った。忘れたい。
いつもなら、これで明日には気分は良くなっていたが、今回は違かった。身体が動かせなかった。言葉を発することもできなかった。これで初めての不登校となる。母親が二階に上がってきて、私を睨んだ。
「休ませねぇから。」
「休んだらな、大学行けなくなるんだよ。お前みたいな馬鹿が、試験で受かると思うなよ。」
怖かった。とにかく怖かった。ベットから起き上がらせられたが、重力に引っ張られ、床にビタンと落ちるだけだった。「どうしようもないクズです。」と思ってもいないことを言うと、親は呆れて出て行った。
虚無感で一杯だった。鼻の上の辺りがツンと痛いのを感じる。新しく買った時計が時が過ぎていくのを知らせ、9時に学校から電話がきた。母親は、雑に言い訳をし電話を切った。「責任負わせんな。」と言っているのも聞こえた。
「死ね」という単語が、脳内で回っていた。これも初めてだった。
そして、私は初めて学校を休んだ。