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クラスメイトとご対面

「すみません、遅刻しました……」


 一人の男子が静かな教室へと足を踏み入れてきた。

 私がこの教室に入って来てからもう、三十分。そして、入学式まで十分を切った時に彼は勢いよく教室の扉を開いて担任になった身長の低い可愛らしい女教師へと頭を下げていた。妙に眠たそうな表情をした彼はどことなく普通の人とは雰囲気が違っていて、見ただけで特別に見えた。

 初めて会ったのに、なぜか彼を見ていると入学式で緊張していた気持ちが楽になる感じがした。


「ついでだから君、自己紹介しなさい。それが今回、遅刻してきた罰でいいわよ」


 身長が低い女教師(ロリと言える程)の担任が彼へと課した罰とは、この初対面の面々への自己紹介だった。この初対面といった状況下で、いきなりの自己紹介は普通の人たちなら心に堪えるだろう。彼もその一人ではあるのだけど……。


「い、いきなりか……。確かに遅刻してきた俺が悪いけど、それは何とも堪えるものがあるよな」


「それでもだめ。遅刻してきたなら、それ相応の罰を受けるのが世の中の節理よ? それでも逃げるようなら、君には私からの正義の鉄拳を受けることになるけどいいかな?」


 ロリ教師もとい、彼が来る前に自己紹介をした女教師、枢木優くるるぎゆう先生。最初、枢木先生が私たちに自己紹介をした後に言い放った言葉はあまりにも驚愕的なものだったことに今でも驚いてる。

 私達がこの教室に入って来て十分ぐらいしてから入ってきたのが、私たちなんかよりも身長が十センチも低い女の子だったのだ。まぁ、それが私たちの目の前にいる枢木先生だったわけだけど……。そんな中で、ロリ教師もとい枢木先生が言い放った言葉が……。


「私の事を幼女とかロリ教師とか呼んだ生徒は私が制裁をしてやる。いいな、私にくれぐれも幼女とか言うなよ? この学校にいる教師陣の全勢力を持って、この学園に居られなくしてやるからなっ!!」


 との事らしい。

 教室にいる生徒達は、まだ入学式を済ませていないのにも関わらず、こんなことを言われたことで相当ビビったはず。現に私も凄く驚いたし、怖かった。だって……。


 先生の顔が本気と書いてマジって見えるんだもん……。


 と、こんなことがあった直後なだけあって教室の空気が一瞬で変わったわけなのだけど、彼はそんな空気も諸ともせずに、


「わかりましたよ……初めまして、名前は櫻坂幸です。趣味は今のところ無いんですけど、今年中には趣味と言えることを探したいと思ってます」


 眠たそうな瞼にストレートの髪の毛がより一層に特別な雰囲気を醸し出していた。それは周りにいる女子たちも同じようなものを感じたみたいで、


「櫻坂君ってなんか不思議な感じするね」


「確かに不思議だよね。見てるとホッとする感じ……? そんな感じの雰囲気があるよね」


 との囁きが聞こえてきた。

 そんな話をしているのは私の右隣の女子とそんな彼女の後ろの女子。

 同じ中学から入学してきたのだろう彼女たちは櫻坂幸くんへと好意を抱いたみたいだ。その好意がどこまで進展するのか見ものだと思う私は酷いかな?


「それじゃぁ、櫻坂。お前も早く自分の席に着いて体育館に移動するまで静かにしてるんだぞ?」


「わかりました」


 小さな教師の枢木先生とそんな先生の横から自分の席へと足を動かしている櫻坂君。その光景がまるで親子に見えるのは私だけなのかな? 異様にも似合っている二人の姿に驚いている私だけど、それも私だけではなく隣の席に座っている二人組の女子も、


「親子に見えるね。凄く似合ってる……笑っちゃいそう」

「私も……もう、笑っちゃいそうでキツイんだけど……ぷぷぷ」


 笑いを堪えられなかった片方の女子が手を口に添えながら小さく笑い始めると、それを鋭敏な感覚で感じ取った枢木先生は、手に持っている白く細長い物体を勢いよく投げつけては、


「そこの女子っ!! 今、私で笑ったでしょっ!? 学校に居られなくしてあげてもいいんだよ?」


「すっ、すみませんでしたーっ!!」


 と、起立をした後に先生へと頭を下げて着席した。

 そんな様子を見ていた私たちクラス一同は一瞬で悟った。

 この先生には逆らえない、と……。

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