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冬の塔  作者: 櫛之汲 
7/13

7話

丘の上に建っている「塔の国」、そのお城の中にある、とある小路に沿うお城の壁、そのちょうど外側は、がけです。


そちらの方は、ウルプスの街のある方向とは、反対方向でした。

ウルプスの街は、お城の建つ丘その中腹なかはらの下の方からふもとにかけて、おうぎのような形に広がっていましたが、お城の丘をすっぽりと覆うようなっかのかたちにはなっていませんでした。


ウルプスの街のある方向ほうこうとは反対はんたいの方向にも「小山のすそ」は広がっていました。

しかしそちらは、建物や街道かいどうはありません。平原もありません。

小さな獣道けものみちもありませんでした。人が通った後もなく、「お城が建つなだらかな小山」の上であるこの場所と、よく似た同じようになだらかな丘が、景色の中にいくつもありました。

丘陵地帯きゅうりょうちたいでした。

そのあたりは、どこまでも奥の方へを向けても、雪の降り積もった景色が広がっています。


小山としてお城をみれば、中腹なかはらのさらにその下には、「丘陵地帯」の「小山の裾」が広がっていました。



その壁沿かべぞいの道は、「冬の館」へと続いています。

「冬の館」の敷地しきちの外には、兵士たちの間では「前門ぜんもん」と言われている「詰所つめしょ」がありました。


山の傾いた地面の下の方、傾きがなくなって平らになっていくはしの方は、「山のふもと」と呼びます。

お城の建つ小山の麓は、城下街じょうかまち「ウルプス」と呼ばれていました。

その城下のほとんどすべてが木で造られています。そうした家々、「ウルプスの街」は,「小山の(すそ)」から平らな野原のはらに向かって広がっていました。


小路の先を見てみると、その左右に、詰所という建物が二棟ふたむねあります。

二棟の詰所から、小路の方へと張り出す出窓があり、その片方の詰所の中には、窓際まどぎわこしかけている兵士の姿すがたうかがえます。その兵士は、革鎧に上半身じょうはんしんつつんでいます。


外から来た者は「冬の館」に入る前に、あやしいものではないか調べられます。兵士から来館理由らいかんりゆうの質問をされたり、身分証明みぶんしょうめい確認かくにんを受けたり、持ち物の検査けんさをされたりします。検問けんもんを受けるのです。

ただ、冬の館は、「廓」というお城の壁の中にある館ですから、ほとんど館の関係者かんけいしゃしか、前門、表門おもてもんおとずれません。


今日、「冬の館」に訪れた者といえば、「冬の女王」様の暮らす塔に食糧を運搬うんぱんする女性の兵士が一人、訪問状を持って来ただけでした。それも、前門の兵士からすれば、その女性の兵士は、同じ「前門」の警備をする同僚どうりょうです。

どうしてわざわざ「訪問状」をもってやってきたのかと理由をたずねてから、楽しく世間話せけんばなしをはじめたほど、二人の兵士は見知みしった間柄あいだがらでした。


その後。

春の館から人が来て、たいそう「前門」の兵士はおどろきました。

ここは、丘の上にたつ堅牢けんろうな城壁に囲われたお城の中だというのに「外套がいとう」をこんだ見知みしらぬの高い中年ちゅうねんの男性が必死ひっしに走ってこちらにむかってくるのですから、無理むりもありません。


おなじお城の中にある「春の館」の使用人であり、そのまとめ役でもある「執務長しつむちょう」のロムス、彼が、「冬の館」まで走ってやってきたのです。



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