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冬の塔  作者: 櫛之汲 
6/13

6話

お城の建つ場所、その土地からは、大きなものも小なものも、ウルプスの街のさまざまな場所へ続く道々がいくつか走っていました。

そして、そのどの道にも、ゆるやかなかたきがありました。


なぜ、塔の国のお城がある場所と、そこにあるすべての道は、上下の方向へと緩やかに傾いているのでしょうか。


それは、「塔の国」のお城が、なだらかな「小山こやま」の上に、造られていたからです。

小さな山と書く「小山」という言葉は、普通の山よりも小さい「おか」を意味しています。



「塔の国」のお城が建てられている「小山」は、人の手が加えられています。ここからは、どういうふうに、人の手が加えられている「丘」であるのかお話をします。


「小山」は長い年月をかけて自然しぜんにできたものです。かつて、はるか昔に水が流れていた河であったとか、海であったとか、小さな火山であったとか、大地と大地がぶつかり合ってできたとか、山の成り立ちはさまざまですが、そうして昔からの自然の移り変わりのなかでできました。


お城の建つ「小山」の場合、他の山と比べて、比較的になだらかに傾いている地面の途中とちゅうに、人の手が加えられて平らになった土地とちが「ふたつ」あります。


坂道を上って「がけ」に行くようなものです。


仮に、あなたは、塔の国をはじめて訪れた「旅人たびびと」であったとします。

そして今、「ウルプスのまち」のなかにいたとします。


旅人であるあなたの旅の目的の場所は、丘の上にたつお城の頂上ちょうじょうであるとします。

そこを目指して、旅人のあなたは、坂道を進みます。


なだらかであるから上りやすい街の中にある坂道でしたが、その分、道の終点しゅうてんまでは、長い道のりとなりそうです

夜明け前でした。

それもお日様が東の空に上りはじめる少し前の頃でした。あたりは夜のように真っ暗ではありません。東の方は雲が多くて、その空はほんのすこし黄色の混ざる白っぽいようす。薄くて、けれどすこし青っぽさの残る空の色です。東とは反対の方角なほど空は、だんだんと濃い藍色あいいろになっているようすです。坂の上で首が俯いてしまいがちになっていて、首がちょっと疲れてしまいました。真上をあおぐと、お昼にみるような、はっきりと形のわかる白い雲が浮かんでいました。けれどその雲はほんのりかげがついたようす、東のほうは白っぽい、西のほうは藍色の星空が、昼と夜と星が混ざり合う、不思議な夜空があります。


常夜灯じょうやとう」という木製の街灯がいとうの明かりが、道の先々でいくつも松明の光を放っていました。


旅人であるあなたの進む、幅の広い坂道は、今のところは、あなたの他に人が通っていないようです。

ゆっくりと進んでいきます。

空は少しずつあかるくなりました。


ふと、坂道だった地面が平らになりました。現在の位置は小山の中腹です。

前をみると、お城の壁があります。

壁伝かべづたいに移動いどうしていきお城の壁のもんへ。兵士に許可きょかをもらって、お城の中へと入っていきます。


壁の向こうには、さまざまな建物たてものつ土地が広がっていました。


頂上めがけて進んでいくと、徐々にまた、坂道になっていきます。その先は、塔のような高さのがけです。

崖の上に城壁があります。岸伝いの坂を登り城門と同じ高さの高台の上に行きます。

崖上が頂上です。高台から城門まで架かる跳ね橋を通ると、そのなかに、平らな土地が広がっています。



その二つの平らな土地のうち、崖を挟んで上の段を「内郭ないかく区画くかく」といいました。下の段は「外郭がいかくの区画」といいました。頂上と中腹の区画には、このように名前を付けられていました。


上の段にある、「内郭の区画」には、王様の住む家があります。お城の宮殿である「王の館」です。春夏秋冬しゅんかしゅうとう四廷よんていの館もこの「内郭」のなかにありました。



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