南の海から
風が吹いた。
硝煙の匂いが漂う。
轟音が周囲の空気を切り裂く。
大地がゆらぎ、土が飛ぶ。
ポッカリと口を開けた穴には闇が広がる。
少女は闇に飛ぶこむ。
異様な暑さ、呻き声、そして血の匂い。
少女は目を見開いた。
広がる闇は少女を包み込み、死へと誘う。
闇が輝き出す。
少女の体が宙に舞う。
輝く闇から垣間見える地獄。
少女は祈りを捧げる。
空から降る鉄の雨が闇を照らす。
少女は走る。
時折見える地獄の間を。
波の音が聞こえる。
遠くに見慣れぬ船が見えた気がした。
頬を撫でる風を心地よく感じる。
風が背の高い林を戦ぐ。
少女は踏み出した。
世界が反転する。
闇を切り裂いた朝日が少女を照らす。
その美しさに息を呑む。
潮の香りがする。
波の音が聞こえる。
そして世界は、暗転した。