6 同級生
まったく大学へ行かず数週間が経過した。
いつもながらかなり長い時間をまどろんで過ごしていたので、もはや時間の感覚も怪しく、都市の人口は増え続けているように思えるし、建造物は空をどんどん覆い隠している気がする。もっとももはや気にしてもしかたがない。このまま学校を辞めて、猟兵に専念してもいいかもしれない。そんなことをレオナルドは考えながら、たぶん自分は最期、眠るように死んでいくんだろうなと想像した。
ある日、最寄の駅前をぶらつき、二時間ほど〈番いの猫〉像前でまどろんで、そのあとぼーっとしていると、声をかけてきた少女がいた。レオナルドもだいぶ背が低いが、それより低く、一五〇センチ強しかない。色の薄い金髪で、分厚い眼鏡をかけていて、利発そうな顔だ。
「バード君、なにをしてるの?」
「は?」
初対面なのにいきなり話しかけられてレオナルドは困惑した。シャーマン隊長よろしく沈黙して待っていると、
「あの、私を覚えてない系? 高校んときから一緒の、 ジュジュことジュリエット・ジャッジさんなんだけど」
そういえばそういう名前の同級生がいたようないないような。
「ああ」
「思い出した系統? そして今大学の同じ学部に通ってるけど、というか君は長らく来てないよね」
「そうかもしれないね。今日も学校に?」
「ううん、行こうとしたんだけど地下鉄がストライキで止まってる系統の状況なのよね。あれ、バード君、それって猟兵の制服なんでないの?」
「よく知ってるね、うん、バイトしてるんだよ」
「なんにもしなくてもお金もらえるんでしょ?」
「いや仕事してるよ」
「そうなの? まあいいや」
と言うといきなりジュジュは横を向いて、早歩きで去っていった、その速さたるや競歩選手のようだった。
その数時間後、少し離れた市場坂方面で、道に落ちてる巨大な腐った卵を踏まないように歩いていると、前からジュジュがまた早歩きでやってきた。小脇に湯たんぽを抱えている。
「バード君なにしてるの?」
「なにもしてないよ。ああここに卵が落ちてるから気をつけたほうがいいよ」
「ああ、本当だ。やくたいもない系の」
「ジュジュ、湯たんぽ買ったの?」
「うん、湯たんぽ買ったのよ」
「だけど今は初夏だよ」
すると、少女は怪訝な表情を浮かべて、
「だけど、初夏のあとには秋が来てそして冬が来て、そしたら寒くなって湯たんぽが必要になる系じゃない。まさか永久に初夏が続くとでも思ってるのかな。それは怪異だよ」
そう言うとジュジュは卵を避けながらレオナルドとすれ違い、誤って一個踏んでしまい、嫌そうな顔をしたまま、駅方面へ歩いて行った。




