37 ばらまき屋
ある日大通りをぶらぶらしているととんでもなくでかい影が見えた。
そいつは身長五十メートル、あるいはもっとある巨人で、本当に影がそのまま直立したように黒く、実体がなかった。
レオナルドはぼんやりとそいつを見ていた。ごくゆっくりとした動きで、どうやら通りの向こうを進んでいるようだ。
「レオナルド、おたくが試されるときが来たね。しかしながらおたくはまだひよっこであるからして」シャーマン隊長が後ろから話しかけてくる。「あの〈歩むもの(ウォーカー)〉の倒し方は分からないでしょ。こういうとき真価が発揮されるんだよね」
「真価もなにも、あれは上級猟兵を呼ばないとどうにもならないんじゃないですか」
「無知とは恐ろしい。すごく恐ろしい。やつを倒すためだけにあの詩人の小娘を呼ぶなんて、おお恐ろし」
隊長の隣にいたチャーリーは露骨に苛立ちの表情を浮かべて、「隊長、早いとこあれの倒し方をレオナルドに教えたら」と言った。
「もちろん、この恐怖を終わらせるために私はそうする。いいかレオナルド、あれは〈歩むもの〉の本体から投影された影に過ぎないんだ。本体は二メートル位の人形で、それが動きたいという願望があの影に投影されてるわけ」
「人形ってどういう」
「カカシみたいな」チャーリーが言った。「もっともあいつを放っておいても害はないが、とりあえず駆除するほうがいいだろ」
「歩道のカカシを探すんだ、レオナルド。私が先に見つけて消したらごめんな。きっとそうなるはず……」隊長はそう言って早々と歩いて行った。チャーリーは近くの植え込みをじろじろ見ながら、〈歩むもの〉と同じようにのろのろと歩いている。
レオナルドはカカシを探そうとしたが、その途中でジグソーパズルのピースをばらまきながら歩いている不審な人物を発見、良く見るとそいつの頭は狼だ。隊長に〈歩むもの〉は任せて人狼を追うことにした。そいつは早足で歩いていくが、レオナルドはそれを上回る早足で追いつき、背中を雑種刃で突き刺した。人狼は寝言みたいなむにゃむにゃした鳴き声を発し、残りのパズルをぶちまけて灰になった。レオナルドは一仕事終えた気分になって帰宅した。
翌日家を出ると、まだ巨人の影がいた。隊長が仕事を投げ出して帰ったのだろうか。とはいえ今更退治する気にはならず、それからさらに四日くらい経過してジョセフがカカシを倒すまで、チャーリーじみた牛歩でそいつは町を歩いていた。




