15 一群
普段の生活では忘れがちだがリンダリア帝国ウェスタンゼルスは銃社会であり今日も犯罪が多発。
テレビで、銃撃戦がありギャングと警官七十名が死んだとアナウンサーが告げ、レオナルドは合わせて七十名なのかそれぞれ七十名なのか気になった。するとそれに答えるように死んだ魚の目のアナウンサーが、「それぞれ七十名ですのでつまり百四十人が死にました」と言った。
多めだな、と思っているとその現場の中継が入り、どうやらアパートから近い場所のようで、たまには野次馬根性を丸出しにしてみよう、とばかりにレオナルドは雑種刃を腰に下げ、家を出た。
現場は打ち捨てられた屋敷の庭で、未だ銃撃戦が続いているにもかかわらず、早くも死亡した警官の葬儀が行われていた。
死体の山が庭の中央に積み上げられている。赤黒い血で汚れた屍のうち、何体かは復活したのかまだ生きているのか分からないが呻き、もがいている。草生した屋敷からギャングが発砲し、司祭がそれを浴びて吹っ飛んだが、立ち上がり、完全に怪異に憑かれたゾンビ状態で祈りの言葉を唱えている。
「遠く、アズルヘルムの地におわす教皇聖下もまたゴボゴボゴボ、超ハッピーかつマーベラスな憧憬でありましょう」
「やつらは異端者だ!」参列者の一人が叫んだ。「これが神だ」といきなり拳銃を発砲し司祭にさらなる手傷を負わすが、まるで堪えた様子がない。それどころか司祭はやにわにアイスピックを取り出し参列者に飛び掛った。片っ端から彼らの前頭葉に突き刺し始めたのだからもうパニック、葬式どころではない。ギャングたちも恐怖を覚えて司祭に集中砲火。「燃やせ。悪魔を燃やせ」と一同叫び、異端審問会の様相を呈した。
レオナルドは踵を返し帰ろうとすると、テレビクルーがマイクとカメラを向けてきた。
「どうですか、あの惨劇を目の当たりにして」
「エキサイティング」
「ありがとうございました。以上、現場からお伝えしました」
家に着いてまどろむかまどろまないかってところにまたサンドラがやって来た。この人本当に遠慮しないな、と思ったレオナルドは言う、
「姉さん、悪いけど十分後にもう一度来てくれない?」
「十分後? ああ、いいわよ、それまでそこらぶらついて来んね」
もちろん十分後には来なかった。
邪魔者を追い払い寝ようとしたレオナルドだが、付けっぱなしのテレビから猫の鳴き声が異様にたくさん聞こえてきたので見ると、今度はこの地区に多量の猫が湧いたというニュースだ。住宅街に中継が繋がり、道中を埋め尽くす灰色の猫、原因は不明だということだった。玄関から外を覗いて見ると、すでにここまで猫が来ている。家の前の通りだけで数十匹いて、やたらに鳴く。こういう無数にものが発生する怪異に対しては面倒でなにもする気にならない。サイラスが言っていたようにここで放置するからさらに増えるのだろうが、面倒なのでしかたがない。
寝て、起きて、寝て、起きて、それくらい繰り返した辺りで、どうも外が騒がしい。また玄関を開けてみると、そこには取材班が数十組いて、道行く人を捕まえては、何事かを尋ねていた。それがどうも聞いた覚えのない言語で、帝国公用語、ラプタニア土着語、アズルヘルム語、そのどれとも違い、蟲の羽音みたいだったので、気味が悪く、再び寝た。
サンドラは二日後くらいに「待たせたわね!」とやって来た――三分後だろうと三秒後だろうと待ち合わせてしまえば彼女は必ずこうなるようだった。




