1 帝都猟兵社
レオナルド・バードは幼少のころから相当な時間を半覚醒の状態で過ごしていたもんだからほとんどの記憶がなく、そのせいか十八歳くらいになっても十三歳くらいの外見だった。大学に入ってからも連日、構内や公園、今にもぶっ潰れそうなくらいボロい自宅アパートで相変わらずまどろんでいた。
ある日、宅配ピザのチラシを探してポストを探っていると、アルバイト募集の紙が投函されていた。そういえば家賃が三ヶ月ほど未納だったのを思い出したレオナルドは、公衆電話から応募した。
すると低い女性の声で、「何?」と言われたので、
「あのすいませんバイト募集の紙を拝見した結果仕事につきたくかけたんですが?」
「ああ」
相手がかなり長い間沈黙したのでレオナルドは電話を切って、そのまま五時間くらい寝た。
起きると部屋は真っ暗で、見知らぬ女性が床に腰掛けていた。腰まであるひどく長い黒髪。顔面もほとんど前髪が覆い隠しているために表情は読み取れなかった。
「あなた誰ですか」まどろんだままでレオナルドは聞いた。
「うちで働きたいんでしょ?」
「え?」
「おたくが電話した帝都猟兵社のシャーマンといいますが」
「ああ、電話に出た人ですか?」
「そうだよ」
「切ってすいませんしかし、なんだか答えてくれないもので」
「うち十八歳以上しか就労できないんだけど」
「ああ僕十八歳、なってますよ」
「あ、そう」
すると再びシャーマンは沈黙した。
「仕事はなんですか?」一分くらいしたあとでレオナルドが尋ねた。
「この大都市ウェスタンゼルスにおける怪異を片付けることなんだ」
「怪異っていうと」
そしてまた、シャーマンは三十秒くらい黙ってから、
「おたくは気づいてないようだし、他の多数の愚民も気づいてないようなんだけど、すでに我が帝国にかなり怪異がはびこっていてこのままだと乳歯を侵すミュータンス菌みたいに深刻な被害をもたらすんだよね。だからそれをどうにかする民間の会社が数世紀前に作られて、人知れず継続的にやってきたんだけど誰も知らない。かつて竜を退けたのは我々なのに。私がやったわけじゃないけど」
そう言いながら彼女は床に鍵を置いて、「教会通り駅のコインロッカーん中に道具が入ってる。暇なときにでも取りに行けば。それから、働き始めたら私のことは隊長と呼ぶんだ。〈まどろみ〉のレオナルド」
「じゃあ隊長、寝たいので帰ってくれないですか」
彼女は帰った。その後、起きたら昼前。レオナルドは駅へ向かった。コインロッカーの中には、波のような紋様が刻まれた短剣、埃に塗れたツギハギの外套、見たことのない銀貨が入っていた――それには見知らぬ男の横顔と、竜が描かれている。




