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四朗  作者: やっことっぽ
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とびますとびます!

1554年(天文23年)我らが主君信長は斉藤道三の協力を得て、着々と領土を伸ばしつつあった。最大の敵である織田信友を滅ぼさんと、家中は腰を落ち着ける暇もない。

勿論、我らが前田家もそれにならい、荒子城は人の出入りが日に日に増しつつあった。

その荒子城主である


“前田利久”


彼は史実で不遇の扱いを受けている。前田家の当主として荒子城2000石を領するが、元々病弱で子供を授からなかった。その為、滝川益氏の妾だった女を妻とした時、その連れ子である慶次を養子としたのだ。

しかし、利久には他に兄弟が5人いてその一人、利家にのち家督を譲ることになる。

信長との確執とも言われるが、実際血の繋がらない慶次に前田家を継がせるよりは、器量良しの利家にと考えるのは道理かもしれない。


ともかく、俺は幸か不幸か利久の養子となったのだ。将来大変な目に合うからと言って彼を軽視するような行動はとりたくない。大恩ある養父が少しでもいい目を見れるように努力すべきだろう。


では俺に出来ることは何だろうか?


内政に専念して石高を増やす?それとも何かしら現代的な軍政を取り入れて兵を強くするか?たとえそれらが成功したとしても、結局は利家が引き継ぐことになるのだから業腹でもある。


では何ができるか?


最近は慶次と遊びながら、そんなことばかり考えるようになってしまった。考えても考えても何も思いつかないのは、俺が凡人だからだ。現代知識があるといってもただの一般人にすぎなかったのだから当然だろう。

こんな時はなにも考えずに遊んでいる慶次の姿が小憎こにくたらしくもあり、またそんなことを考える自分に嫌気が差してしまう。堂々巡りだ…


まあなんにしても、ここ数カ月毎日慶次に手を引かれて遊んでいたため、多少は体力がついたように思える。

弟の遊び場は荒子領全体と言っていいほど広く、田んぼや野を駆け回ることもあれば、川遊びのため2時間かけて領境まで歩いていくこともある。

彼は元々身分差がないかのように農民と接し、貧民や富農であろうと分け隔てなく接するので、現代人としての感覚を引き摺っている俺としては大変付き合いやすい相手だ。彼の周りはいつだって明るい。


「のこったのこった!」


「くぅ~!」


「おりゃ~~!!」


今日も今日とて、村の子供たちとふんどし一つで相撲をとっている。俺も童心に帰って泥だらけになりながら遊んでいて、最初はどうしてこんな子供の遊びをと思っていたが、やってみるとなかなかに楽しいもので、やっぱり男はいつまで経っても子供なんだなぁと思えてしまう。


今は三月ぐらいだろうか?春一番が砂を巻き上げて埃っぽいが、温かい気温が続いている。

農民は田植えの季節を迎え、荒子郷でも楽しげな田楽踊りにのって、青々とした苗を植えているのだ。

伊勢と比べてだが、尾張は水田面積が大きいと思う。灌漑が整っていることもあるが、平地が多く気候も適してるのだろう。

他領に比べて農民は非常に豊かで、それとともに商業も賑わっている。食が足りれば人は衣服を求め、更には趣向品にと手が伸びるものだ。


俺達も白米の握り飯を昼ごはんにと持たせてもらっていて、遊び疲れた俺は握り飯片手に慶次と五作の勝負を観戦していた。


そんな中、俺は後ろからの突然の怒声で握り飯をとりこぼしてしまった。もったいない…


「こわっぱども邪魔だ!どけ!!」


泥にまみれた握り飯に後ろ髪を引かれながら後ろを振り向くと、そこには偉丈夫が馬上から俺達を見下ろしていた。


「…なんじゃ、慶次もおったのか。毎日毎日遊んでばかりおって……ふん!どかんか邪魔じゃ!!」


男は慶次を見つけて、あからさまな態度を改めるが、すぐに五作を向いて怒鳴りつける。そして慶次だけを避けるようにして馬を進める。俺が道のど真ん中に居ようとお構いなしだ。


「あっ!?」


馬は主人に似たのか?平気な顔をして俺の握り飯を踏んでいく。まだ中は食えたはずなのに~。

慌てた子供たちは足を滑らして田んぼに転がっていく。

俺はとっさに避けて助かったが、他の子たちは泥だらけで見れたもんじゃあない。


「ちっくしょ~!犬め~~。穀つぶしのくせしやがって!!」


泥まみれになった五作達は罵声を飛ばす。慶次も遠ざかりつつあった男を睨み付けていた。どうやら皆知っている奴らしい。

誰?と聞くと。


「そういえば兄上は会うの初めてだね。あいつは僕たちの叔父の犬千代だよ…時々こうやって父上に金の無心に来るんだ。村人には乱暴だし…嫌なやつだよ」


え?犬千代?


「…犬千代って利家?」


「え~と、確かそうだったはずだよ。前田利家。まあ信長様も犬って言ってるから犬でいいでしょ」


まじで?あれが前田利家なわけ?加賀百万石の礎を築くはずの人物……

あれに将来俺達親子は世話になるの?やだわ~ありえね~わ~。そりゃぁ~史実の慶次も反発して出奔するはずだわ~。


時間は早いが、場が白けてしまったので今日の遊びは終わりだ。五作達は服を汚して帰るので、その後ろ姿はすすけて見えた。

解散後、慶次と俺は屋敷へと早足で帰宅する。奴がどれだけ嫌な奴か見せてくれるらしい。

誰からも気付かれないように庭へ入り込み、縁側に昇って利久の部屋に聞き耳を立てる。



……

………


「そら。これでよいか?……それにしても今年に入ってもう3回目じゃぞ。お主は信長様から知行を貰っとるはずじゃ、それでやりくり出来んのか?」


「へへっ、すまね~な兄者。儂も色々と付き合いがあるし、全然足りんのですわ~」


「…はぁ~、聞いておるぞ。お主、信長様の小姓であることをいいことに、町の者に対して大分居丈高らしいじゃないか?しかも分不相応に飲む歩いて女遊びもしているとも聞いた。そなたは前田家の恥じゃ!!」


「がははは!誰から聞いたかしらんが濡れ衣というやつよ。それにもしそうだとしても、俺は誰かさんと違って立派に戦働きしておるからの~。それぐらいは許されるというやつよ!がははは!」


「何じゃと!誰に向かってそのような口を叩く!!」


「おっと!なにも兄者のことを言ったわけではないんだがな~誰かさん言ったのよ、誰かさんと……それとも何か?まさかと思うが、そんな自覚が?」


利家の暴言に身を乗り出すが、彼は両手を上げ、いやみったらしい態度でのたまう。


「…くっ、ようもぬけぬけと!もうよい、行け!!」


「あいよ。また頼むぜ?あ・に・じゃ……ふん!!」


利家は別れの挨拶をして立ち上がると、何を思ったか障子を蹴破る。“バキッ”という鈍い音をたてて障子は俺達の横を通って庭に転がった。


「「……」」


逃げるのも忘れて呆けていると、利家は部屋から出て蔑んだ目で俺達を見据えた。


「おっと!すまん、すまん。曲者かと思ったが勘違いか~~がははは!どこの種かもわからん小僧が忍び込んでいるとも限らんしの~~がっはっはっは!!」


ずかずかと板敷きを蹴破る勢いで歩き去る利家。俺はあまりのことに呆然とする利久と慶次を尻目に思考する。


絶対にこいつを当主にしちゃだめだ…それが無理だとしても将来こいつの世話にならないようにしなくちゃ…絶対だ!!


利家が大分嫌な奴になってしまいました。利家ファンにはごめんなさい。

※17名のブックマーク有難うございます!!

追記→あまりにも利家が無礼すぎる(信長も庇いきれない)と感想を頂いたので、利家のセリフを多少嫌味ったらしく書き直しました。こんなもんでしょうか?

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