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形のカタリ  作者: ダーカズ
第1章・“ユニオン”
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言い分

“ジブラ”に門を破壊され、その修理を“ユニオン”の住人に任せている。せっせと修理をしてくれる住人も守るのが、警備兵の役目だ。

すると、坂をゆったりと上ってくる人が数名現れる。


「! お待ちください。あなた達は?」


人数は四人。“ジブラ”ではない。だが、四人とも黒いロングコートを着ており、そのコートは紅いラインが数本巻き付くように入っており、なかなかお洒落だ。


「“東方”の者です。“ユニオン”の司令官に会わせていただけないかしら」

「“東方”の…しかし、司令からは何も聞かされては…」

「てめぇらの“ユニオン”の兵が、俺たちの同志を怪我させたんだろうが!! いいから通せや!!!」

「ひっ!?」


一人は丁寧な口調で女口調、だが男で、もう一人はかなり乱暴な口調の男。


「おい、事を荒げるな」

「でもよ、こいつらから仕掛けておいて、何も聞かされてないはねぇだろ!?」

「落ち着け。何も戦争しに来たわけじゃねぇんだから」


もう一人の男が乱暴な口調の男を宥める。

すると、門のある入り口から、七月が出てくる。


「すいませ~ん、“東方”の人達ですかね~?」

「あら、可愛い子ね」

「……腰に差してる武器…太刀じゃないか?」

「あぁ? “ユニオン”に太刀使いはいねぇだろ。刀か剣じゃねぇのか」


警備兵を通り抜け、七月に連れられて司令室へ向かう。



____司令室



「こちらが司令室です」

「…てめぇも中に入れ」

「え」

「まあ、女性一人相手に男四人が文句言う図も美しくないわ。一緒に入っちゃいなさい」

「……了解です」


渋々中へ。凛として立っている天歌が部屋の中央に。七月も一緒に入って来たことに少し戸惑ったが、スッと天歌の斜め後ろに移動したことを確認し、最低限の礼儀は熟知していると判断する。


「…ようこそいらっしゃいました」

「お久しぶり、天歌ちゃん。元気にしてたかしら?」

「ええ、ご無沙汰しています」

「天歌よぉ、今回の件はちょっとめんどうだぜ?」

「はい、申し訳なく思っています」


どうやら知り合いのようだ。険悪なムードはなく、むしろ歳の違う友人同士の会話に聞こえる。


「七月、紹介するわ」

「はい?」


少し横に移動し、七月が四人を見れる状態にする。


「こちらは、“東方”の“後方騎士団”の隊長、筑前ちくぜん 三知みちさん」

「よろしくね」


オカマだが、その佇まいは隙が無く、左腰に剣、右腰に銃が差してある。


「“盾騎士団”の隊長、薩摩さつま 二獅にしさん」

「よろしくな」


背中に、タワーシールドと呼ばれる大きな盾と槍を背負っている。乱暴な口調だが、その実力は折り紙付きだ。


「“侍隊”隊長、日向ひなた 五牙いつがさん」

「…よろしく」


腰には“長刀”と呼ばれる刀身の長い刀が差してある。何もしていなくても、その姿からは威圧と威厳のオーラが醸し出しているように見える。


「…そして、“東方騎士団”の副隊長兼街管理人、龍神たつかみ 一坐いちざ…さん」

「どうも」


四人の自己紹介を終え、七月は少し固まっていた。


「………“龍神”…?」

「…ええ、私の父よ」

「!?」


龍神 一坐と龍神 天歌。二人は親子で、別々の勢力に所属しているようだ。


「い、いや、それって…」

「……とりあえず、龍神さん、筑前さん、薩摩さん、日向さん。…話し合いを始めましょう」


テーブルと椅子を用意し応接する。七月は、天歌の斜め後ろで立ち、何かあった時の為に待機する。


「まあ、あなた達“ユニオン”と“ジブラ”の抗争に関与する気はないのだけれどね。でも、その抗争に“ウシラン”が巻き込まれるのであれば、私たちだって容赦はしないわ」

「無論、両者の勢力を滅ぼすつもりでやるぜ。こっちは別に、お前ら二つの勢力が無くなったって損も困りもしないんだからよ」

「…………」


筑前と薩摩の言葉に、天歌は顔を曇らせる。


「こちら側の提案としては、そちらの物資…具体的に言えば、“資材”と“食材”を無償提供…期間は一ヶ月ってところだな」

「! 一ヶ月…!? でも、この時期は収穫が少なくて…」

「“ウシラン”に喧嘩を売ったのは“ユニオン”の兵士。つまりは、お前の監督不行届だろ」

「うっ…」


日向の言葉、そして自身の父親の言葉に反論できない。


「条件に不服があるのなら、この話し合いは無しだ。後日、この砦を落とさせてもらう」

「(……考えて…考えないと…砦を守る為に“東方”を敵に回したんじゃ意味がない…)」


自身の父親が来ると知って、少し油断していたのかもしれない。大目に見てくれるとか、そんな期待。

だが、そんなことには容赦しないというのも分かっていたはず。


「……止めに入った方の怪我の様子はどうですか?」

「殴られた右頬は腫れてるけれど、命に別状はないわ」

「……なるほど、じゃあ俺の言い分は通りそうですね」


七月がサッと天歌の前に出る。


「…七月? 何をする気なの…?」

「“ユニオン”側の言い分を主張するんですよ。何も、全て受け身になることはないですから」


ニヤリと笑う七月に、天歌は嫌な予感しかしなかった。

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