地下街
「じゃあ、“ユニオン”の傘下に入るってことでいい?」
「まあ、他にやることもないですし」
「うん、ありがとう。心強いわ」
嬉しそうに書類を次々と出す天歌。それを見た七月はウッ…とたじろぐ。
「大丈夫、これは私の仕事よ。お客さんが来るのに、机の上に書類だらけじゃ格好つかないでしょ?」
「あ、あぁ…そういうこと…」
「ついでだから、この“ユニオン”のことを教えておこうと思うけれど…大丈夫かしら?」
「…そうですね、この砦が何を守っているのかも気になるところですし…何かあるんですか?」
七月の言葉を聞いて、サッと立ち上がる天歌。
「見てもらった方が早いわ。ついてきて」
「うん?」
司令室を出て、そのまま階段を下りて行く。
「地下?」
「ええ。そこに守っているものがあるの」
階段を下り、大きな扉を開ける。
「!」
扉の先には、大きな空間。そこには、多くの人たちが賑やかに道を歩いている。
「これは…」
「賑やかな場所は、“商人区画”。つまり、この“ユニオン”の市場みたいなもの。当然、売り手や買い手が集まるから賑やかになるわね」
「区画ってことは…他にもあるんですか」
「ええ。この“ユニオン”には、上の砦と、地下街が存在するの。その地下街は、“貴族区画”“住宅区画”“職人区画”“商人区画”の四つがあるわ」
七月と天歌が居る場所は、その四つの区画が一望に見渡せる場所で、確かに良く見ると、物静かな区画が三つある。今賑やかなのは、“商人区画”のようだ。
「なるほど、これが守っているもの…」
「私たちの仕事は、この人達を守ることと…商人達の手伝いをすること、そして、外部からの脅威を退けること、他にも様々あるけれど…纏めて、守るって言ってるわ」
「商人の手伝いっていうのは?」
「砦の外の森には、多くの化け物がいるんだけど…」
七月が最初に戦った、大きな黒い蜘蛛のことも含まれるだろう。
「あいつらを倒すと、“資源”を落とすの」
「“資源”?」
「ええ。色々なものに改良できる“資源”。これを手に入れて、商人と交換する」
「お金の概念が無い世界…?」
「ご明察。この世界は“物々交換”が主流。職人に必要な“資源”や鍛冶場を提供すれば、色々な便利なものを作ってくれたり、ね。もちろん、商人と交換すれば、その商人が地下街で暮らす人達とまた交換する。そうやって成り立ってるの」
食料は、地下街の人達が農作や色々な方法で取得し、その食料と取ってきた“資源”を交換などして、地上で戦う人達も生きていけるそうだ。
「まあ、ここで生きていけば、“職人区画”と“商人区画”には何度もお世話になると思うわ」
「仲良くしておいて損は無いってことですね」
この“ユニオン”では、“資源”の回収と、外部からの脅威を退けること。この二つが、大まかな目的となりそうだ。