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形のカタリ  作者: ダーカズ
第1章・“ユニオン”
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七月の強さ


「…えっと、お祭りか何かですか?」

「違う! 敵襲だ!!」

「司令! 敵が攻撃してきた!! 恐らく、“ジブラ”の奴らかと…!」


警備兵二人が慌てて無線機を取り出し、司令とやらに報告している。


「“ジブラ”…? 組織か何かの…」


と、後ろを振り返ると…


「……おっと」


10名ほどの黒い服装の人間がこちらに向かって走ってきていた。手には銃、剣、その他各種の武器。その内の一人に、大きな筒のようなものを持っている者がいる。砦の門を攻撃したのはあの人物で間違いないようだ。


冷静に人数を数え、武器を確認していると、壊された門から大声が聞こえてきた。


「次は何…?」


恐らく、警備兵が呼んだ他の兵士達。彼らもまた銃や剣を持ち、黒ずくめの敵に対抗しようとしている。


「おいおい…! 待ってって!! 危ないから!」


この状況、警備兵二人は増援と共に戦うとして、七月は戦いの中心で巻き込まれそうになっている。なんとか縄を解こうとするが、なかなか解けない。


「撃て!!」

「こちらも撃て!!」


ほぼ同時の発砲。そして、近接武器を持つ者同士の戦いも勃発。


「貴様ら、性懲りもなく!!」

「今日こそいただくぞ!! てめぇらの砦をよぉ!!」

「いやいや、すごく暑苦しいんだけど…!!」


戦いが少し経過。どうやら砦の防衛側が劣勢のようだ。黒ずくめの一人一人が強く、警備兵だけでは足止めしかできていない。


とにかく逃げる為に体を転がしながらその場から離れる。

だが、一人の黒ずくめに止められる。


「てめぇは?」

「なぜか捕まった関係性皆無の人間です」

「何で捕まったんだ」

「変質者として捕まったみたいです。ほら、上半身裸だし」


ヘラヘラと笑っていると、それをカチンと来たのか黒ずくめが剣を抜く。


「へっ?」

「まあ、運がなかったと思え。どうせそのまま逃げ出したとしても、手足を縛られたままじゃ化け物どもに食われるだろ」

「いや、できれば解放して逃がしてほしいんですけど…」

「捕まった自分を呪え」


勢いよく振り下ろされた刃は一直線に七月の首もとへ。


「っ!!」

「ぐっ!?」


七月は離れるのではなく、思いっきり体当たりを仕掛けた。見事に相手の不意を突くことができ、難を逃れる。


「てめぇ!!」

「よっと」

「!?」


スルリと両手の縄がほどけ、すぐに靴の側面から隠しナイフを取り出し、両足の縄を切る。


「どうやって今の間で縄を…」

「それは内緒で。それで、俺の武器は…」


キョロキョロと周りを見渡すと、先ほどの警備兵が七月の武器を持っている。


「ちょっと…何で回収してんのさ」

「余裕ぶっこいてんなよ!!!」


黒ずくめがもう一度大振りで七月を狙う。


「遅い」

「!」


ゴッと七月の正拳突きが黒ずくめの胸に決まる。


「ぐぉっ……」

「大人しく寝てなさい」


言葉を発するが、黒ずくめに目もくれず剣を奪い、ついでに上着も奪って警備兵の元へ走っていく。


「くそ、このままでは…!」

「ちょっと! 俺の武器返してよ!」

「!? 貴様、どうやって縄を!?」

「いいから! 返せ!!」


先ほど奪い取った剣を警備兵に押しつけ、自分の武器を奪い返す。


「貴様、今逃げようとしても…」

「ああはいはい、いいからそんなの」

「なに?」


スラリと抜刀。


「先に攻撃してきたのはそっちだからな、黒ずくめ」


そして器用に奪った黒の上着を着て、警備兵達と戦う黒ずくめ達に切っ先を向ける。


「あの武器…太刀か!?」

「“銀色”と同じ武器か…!」


黒ずくめの何人かは七月の武器に気づき、警戒する。


「残り9人…一人2秒。妥協して20秒で終わらせる」

「なめんな!!!」


剣を装備した黒ずくめが突進してくる。


「蝶ノ型……」


スゥ…と重心を低くし、太刀を腰より低く降ろし、構える。


「! 迂闊に近づくな!! 太刀を持ってんだぞ!?」

「知るか!! ぽっと出の野郎なんかに負けっかよ!」

「それ、フラグなんですけど」

「!?」


仲間の言葉に怒声で応えた瞬間、目の前から声が聞こえ驚愕する。既に七月の太刀は動きだし、黒ずくめを狙う。


「くっ!?」

「無駄だよ」


咄嗟に防御に出した剣。しかし、信じられないことが起きる。


「っ!!」


太刀が、剣をすり抜けた。


「はぁ!!」


太刀を振り抜く。剣をすり抜け、無防備になった体に太刀は食い込み…そのまま黒ずくめの体を前へと吹き飛ばす。


「ぐぁぁ!!」

「!? 峰打ちか…!」

「自分の心配すること! 肋骨折れるよ!」

「なっ!?」


目の前には七月が。先ほどまで、まだ少し距離があったはず…


「せいっ!」

「ぐあっ!!」


またしても峰打ちで、吹き飛ばす。

同じような形で黒ずくめ達を吹き飛ばし、防御しようと自身の武器を回しても、最初と同じように太刀がすり抜ける。

いきなり現れ、防御してもすり抜ける攻撃に、余裕を持って宣言通り20秒で、9人の黒ずくめを前方へと吹き飛ばし終えた。


「はい、君も」

「ぐっ…」


最初に正拳突きで倒した黒ずくめも、倒れている9人の黒ずくめ達の元へ置く。


「まぁ、俺に攻撃してきた時点で、君たちの負けは決まってるから。とりあえずは、帰りなよ。じゃないと…」


太刀を持ち替え、刃を見せる。


「…次は、斬るよ?」


ヘラッと笑いながら言う七月。それを見た黒ずくめ達は、黙って撤退を始めた。


「……ふぅ、とりあえず…終わりで」

「おい! 貴様!!」

「…まだめんどくさい事が残ってた…」


めんどくさそうに振り返り、もう捕まらないように下がりながら警備兵に大して正面を向く。

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